親も教師も大人は「コーチ」になろう!
1. 子どもを思っての言葉。しかし、、、
子どもと日々接していると、次のようなことが起きませんか?
「勉強しなさい!」
という親や教師が子どもを思って伝えるこの言葉。
しかし、データで見るとその効果が低いことが示されています。
上記のグラフを見ると、ただ指示するだけでは効果が低いことが分かると思います。
最悪の場合、伝えたことに対して反発をされて、マイナスの結果になってしまう場合もあります。
このような原因のひとつとして「心理的リアクタンス」が考えられます。
なので、大人は「心理的リアクタンス」に気をつけながら
(指示・命令)ではないコミュニケーション方法を模索するといいと思います。
大人と同様に子供もひとりの人間です。
会話するときは言葉を選びましょう。
話を聴く姿勢を見せましょう。
2. コーチングとは?
この「コーチング」という言葉。
皆さんもなんとなく意味は分かっていると思いますが、、、
実は調べると様々な意味が出てくるのです。
コーチングの種類は多岐にわたり、その意味も様々です。
なので、今回の記事を説明するにあたって
私なりのコーチングの定義を示したいと思います。
この定義を基準とした、私が学んだコーチングの方法を以下にまとめていきたいと思います。
もちろん勉強した目的は子ども達の幸せのためです。
少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
3. コーチングの方法
(1) 安心させる
会話のはじめには、まず安心感をもたせましょう。
子どもは大人と話すとき、多少の緊張感をもっているからです。
特に大人の男性は体も大きく声も低いので
女の子に対しては強く威圧感を与えてしまいます。
大人の男性ほど「安心感」を伝えるのは大切です。
大人がいきなり話の本題や正論を言ってしまうと
両者の間に壁ができてしまいます。
そうなると、会話がスムーズに展開しません。
会話の初めは緊張をほぐすために「アイスブレイク」というコーチングスキルを用いるといいと思います。
例えば、、、
「今日は暑かったね~」
「ここからだと富士山が見えるんだよ~。」
など、見えているものや、答えやすい質問を会話のはじめにすると良いでしょう。
共通の話題を話すのもいいかもしれません。
以下にアイスブレイクを用いた会話の例を紹介します。
「子どもがみるみる変わるコーチング」の書籍から引用しました。
(2) 話を聴く姿勢
子どもたちが、、、
「この人は自分の話を聴いてくれている!」
と、思うような大人の姿勢が大切です。
「私はあなたの話をきちんと聴いているよ」
というメッセージを伝えるためには
次の二つを守りましょう。
(1) ノンバーバル(非言語コミュニケーション)
・話をするときに手を止める
・体を相手に向ける
・目線を合わせる
・話をさえぎらずに最後まで聞く
(2) バーバル(言語コミュニケーション)
・相づち、うなずきを入れる
・繰り返し、促しなどを入れる
この二つを同時に行うことで
「私はきちんと聴いているよ」というメッセージになります。
このとき、話の途中で
「それって〇〇のことだよね」
「こうすればいいよ」
など評価や決めつけをしないように気をつけましょう。
相手の話を聴くことに全集中してください。
ついつい話の答えを出そうと、思考の先回りしがちです。
以前の私もそうでした、、、
思考のギアを落としてください!
先ほどと同様に会話の例を紹介します。
ここでは、まずサトシが話しかけてきたら、すぐに話を聞く態勢を作っています。
また、サトシが話しやすいように、職員室ではなく会議室へと場所を変えました。
そして、「あいづち」や「うなずき」を入れて
しっかりとサトシの話を聴こうとする姿勢を示しました。
このように、会社で上司が部下の相談を真剣に聴きくように
子どもと話すときも話を聴く姿勢が大切です。
(3) 子どもを認めよう
コーチと子どもは対等な立場です。
教師と子ども。
親と子ども。
基本的に対等な関係です。
教えるものと教えられるものという立場ではありますが
両者に人間的な上下関係はありません。
そのため、コーチングでは、「ほめる」が過剰になることは控えます。
ほめることで、上下関係をつくってしまう可能性があるからです
その代わりに具体的な行動について「承認」で伝えます。
・努力 「〇〇を頑張ったんだね」
・感謝 「△△をしてくれてありがとう」
このような声がけを積み重ねていくと
相手との心理的距離が縮まっていきます。
子どもたちは良好な関係の中で
自分の成長を認識できます。
コーチングの成否を決める大きな要因は信頼関係です。
信頼関係をしっかり築くためには
普段から積極的に声をかけて子どもたちを「承認」しましょう。
この「承認」はいくつか種類があります。
その一部を紹介します。
「存在の承認」
→相手の存在を肯定的に認める言動。
「あなたの存在をわかっていますよ」というメッセージを投げかける。
・挨拶
・返事
・名前を呼ぶ
・顔を見る
「事実の承認」
→行動や習慣などの変化に対して、その事実を伝える。
基本的に事実を見たまま伝える。
・「靴を買った」「カバンが新しくなった」
・「髪を切った」
・「大きな声であいさつが出来うようになった」
・「くつを脱ぐときに揃えられた」
では、会話の例を紹介します。
教師は「部活をした後、帰ってから自主学習している」
と事実を確認しています。
ですが、部活と勉強の両立について
「すごいね」「えらいね」とは、ほめていません。
もし、ほめたりすると、それが評価になってしまいます。
アキコはその評価を意識して勉強をすることになるかもしれません。
「部活と勉強の両立をしている」
という事実を教師が認める言葉をかけることで
アキコにとっては「先生が見てくれている」と感じてくれます。
また、 授業でも、生徒の説明に対して
「イクミの説明の仕方、わかりやすくなったね。
この前より、とってもいいよ!」
と言うと、ほめることになり、評価につながります。
この場合は
「イクミは、まず結論を先に言ってから、その理由を三つ説明していたね」
と、「結論を先に言う」「理由を三つ説明」と事実を伝えることで
自分ができていることを具体的に確認することができます。
ほめられて気持ちをよくさせるのではなく
明確な学びを確認することで、次につなげることが大事です。
承認は、相手の具体的な変化や事実を言葉にして伝えるだけですが
相手の心にはすっと入ります。
さらにそれが
自分自身ではまだ気づいていないことであれば
うれしさや学びは大きくなります!!
たくさん子ども達の頑張りや変化に
気づいてあげてください。
4. 人生のコーチング
子どもの人生は主人公は誰でしょうか?
それは子ども自身です。
ですが、子どものためと言いながら
親が子供をコントロールしたり
子どもの人生を決めつけたり
人生の選択権を奪っていないでしょうか?
冒頭でもお伝えしましたが
選択の自由を奪われると人は反発します。
(心理的リアクタンス)
とくに、進路を決める時期になると
次ような親の言葉に毎年出会います。
「この子にはムリだ」
「お金がかかるから」
「とりあえず公立学校へ」
などという、軽率な言葉を子供の前で口にして
大人が子どもの人生を簡単に決めつけてしまいます。
その結果、子どもがやりたいことができず
大人が勝手に決めたという反発が起こり
退学や部活を辞めてしまう子どもをたびたび見かけます。
大人が子どもにしてしまった
・軽率な言葉
・軽率な思い込み
・軽率な決めつけ
・軽率な先走り
これで子どもの人生が狂わされたなら
その責任は大人にあると思います。
少し話はそれますが、、、
私にはひとつ年下の妹がいます。
彼女は幼い時に白血病になりました。
約6年間入院していました。
両親は妹につきっきりです。
治療費はかなりの額だったと思います。
ですが両親は
私立高校、私立大学と私が選択したことを
諦めさせることはしませんでした。
本当に感謝しています。
あの時、自分の本当にやりたい事が否定されていたら
今の私は教員とバスケのコーチにはなれていなかったと思います。
長野県にも来ることはなかったでしょう。
もしかすると、親や家族を恨んでしまったかもしれません。
自分で選択した責任と成長は一生ものです。
その経験は何事にも、代えることはできません。
もう一度お伝えします。
大人が子どもから人生の選択権を奪ってはいけません。
大人は子どもを信じてあげましょう。
子どもの選択を信じてあげましょう。
そして、大人も成長し続けましょう。
大人は子どもの
「人生のコーチ」なのです。