無題 短編
何も考えず、ただ指の赴くままに。
「お前、いつもここで飯食っとるけどなんでなん?」
私の唯一のオアシスをタバコを咥えただらしない男に荒らされた。
ここは私が1ヶ月前ぐらいに偶然見つけたオアシス。
多分小学生の秘密基地だったんだと思う。
学校が嫌すぎて、苦しすぎて登校拒否になった私。家いても親の落胆や何かしら感じる圧で潰れてしまいそうだった。
どこか私だけの。一人でいれる場所が欲しい。
そうして暇な時間を使って、勇気を出して外に出て、基本的に街や人がいる場所を避けていった結果いつの間にか山道を歩いていた。
そして見つけた私のオアシス。
ようやく見つけたのに…。
「なんじゃあ!!」
男が急に大声出すから驚いて作ってきた弁当を落としてしまった。派手な音と共に弁当箱から食物が躍り出る。
せっかく親が仕事に行ったことを確認して、出来るだけ物音を立てないように、痕跡を残さないように配慮しながら苦労して作ったのに…。
「なんで落とすんじゃ!!」
弁当からこぼれた食物達の残骸を指差しながら男はまた大声をあげた。
私はギュッと目を瞑ってどっかに行けと願った。
「お前頭の中で文章作ってない?」
男は私を見つめながら、腕組みながら短く尋ねた。
「いや、見てもないし腕も組んでないから。」
…。
見ていたし、組んでいたことにする。
その男は土足でオアシスに踏み込ー。
「お前も土足やないか。あと、頭の中の文章でちょっと気取ってダッシュとか使うな。」
…。
え…?
「なんやぁ!!」
…。
え。コレ聞こえてんの?
「女は驚きながら俺の方を振り向いた。鼻毛が出ていた。」
いや、やめろや。出てないし。なんやねん。
「お前こそ普通に喋れや。」
なんで会話できてんの?怖いねんけど?
「お前こそいつまで脳文で乗り切ろうとしてんねん。」
変な言葉を生むなよ。
「お前のその卵焼き、甘いタイプ?」
…。
「甘くない。甘いの嫌いやもん。」
あ。
「あ。」