フォーシームで空振りを奪う要素

 まずフォーシームについて重要な要素とは何かを重回帰分析で算出を試みた。対象はMLBで各球種300球以上投げた選手318人。

 説明変数とするのはその投手の平均球速(km/h)、横変化量(cm)、縦変化量(cm)、投球コースの高さ(cm)、リリースの高さ(cm)、エクステンション(cm)(プレートからどこまで離れてボールを離しているかの値)だ。

 目的変数はWhiff%(空振り/スイング、スイングを試みた打者相手にどれだけ空振りを奪ったか)だ。

 フォーシームのWhiff%について重回帰分析するとp値が0.05を下回るのは球速、縦変化、投球高さ、リリース高さとなっている。これらの要素がどれだけ空振りを奪う、得点を防ぐうえで有効かを検証する。

クロス集計し各要素が影響しているかを調べる

 MLB2017-2021で投じられたフォーシームを対象に速球は4km/hに刻み、縦変化量は7.5cmに刻み、リリース高さは10cm、ゾーン高さは15cmに刻みクロス集計をした。各要素について表にしてMLB平均値を中間値として白、投手にとって良い値は赤、悪い値は青にカラースケールしている。指標算出の対象はWhiff%とxwOBAcon(打球の推定失点リスク)、xPV/100(推定される100球あたりの失点抑止)とする。(xPV/100についてはこちらを参考)

リリース高さとゾーン高さの関係

 まずはMLBの平均的な質のフォーシーム(MLB平均が約150km/hなことから球速は148-152km/h、縦変化は約40cmなことから37.5-45.0cmとした)をリリース高さとゾーン高さでクロス集計をした。

 集計結果から以下のことがわかる。
・同じリリース高さなら投球コースは高いほうが空振りが取れる。
・同じリリース高さなら投球コースは85-100cm(ストライクゾーンの上部)が最も投手にとって価値が高い。
・平均以下のリリース位置からなら、高めのアウトゾーン(100-115cm)に投げても得点抑止を期待できる。一方で、リリース位置が高いと失点リスクが高まる。
・同じゾーン高さならリリース高さが低いほうが空振りを取れる。
・同じゾーン高さならリリース高さが低いほうが投手にとって価値が高い。
・高めに投げた場合打球のリスク(xwOBAcon)は低くなる。

 基本的にフォーシームは他の条件が同じならリリースの高さは低いほうが、ゾーンはストライクゾーン高めを狙うことが最も良いようだ。

縦変化量の効果

 球速は148-152km/hで固定したうえで縦変化量だけを変更した場合にどれだけ指標に差があるかを見ていく。

 Whiff%は圧倒的に縦変化が平均(37.5-45.0cm)より大きいグループ(45.0-52.5cm)が高い。たとえ高いリリース位置から投げても、低めギリギリにさえ投げ込まなければ高い得点抑止力を期待できるなど万能だ。

 一方で平均より沈むグループはxwOBAconこそ低く抑えられているものの、Whiff%が低い。このグループのフォーシームで失点を抑えたいならば平均より低いリリース位置から高めに投げ込むことでライズの小ささをカバーする必要がある。

球速の効果

 縦変化量を37.5-45.0cmに固定したうえで球速だけ変更した場合はどれだけ指標に差があるだろうか。

 Whiff%は平均(148-152km/h)より速いグループ(152-156km/h)が全体的に高い。それに伴いxPV/100でも優れた値となっている。

 平均より遅いグループ(144-148km/h)では基本的にWhiff%が低くなる。低いリリース位置からゾーン上部に正確にコントロールする必要がある。

速くて沈むFF vs 遅いが浮くFF

 速いフォーシーム、浮くフォーシームはWhiff%が高くなりやすく失点抑止しやすい傾向にある。では速くて沈むフォーシームと遅いが浮くフォーシームではどちらのが優れているか。

 両者を比較するとxwOBAcon、Whiff%共に遅いがライズするフォーシームのが投手優位になる傾向がある。フォーシーム単体で見たら価値があるのは遅くともライズするフォーシームのようです。速くて沈むフォーシームは低いリリース位置から高めに請求しないと効果がないようです。

 ただ、これはフォーシーム単体の価値の話です。沈んでも速いフォーシームを投げることには意味があります。速い速球を投げる投手は変化球のWhiff%が高くなりやすく、変化球の価値を高めることができます。

まとめ

フォーシームで空振りを奪う、価値を高めるには
・低いリリース位置から投球する
・高めのコースに投げる
・縦変化量はライズさせる
・球速は速くする

ことが重要なようです。特に沈むフォーシームや遅いストレートでも価値を高められることから低いリリース位置と投球コースは重要なようです。

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