外国人選手の成績予測(先発投手)

 毎年のようにプロ野球では外国人選手獲得のために投資が行われる。そこで行った投資の回収は必ずしも成功するわけではないのが現状だ。どうすれば成功の確率を上げられるのか、外国人選手成功の基準を探る。

調査対象

・NPB入団3年前にMLBで100打者以上投げた選手
・NPBで200打者以上投げた選手

目的変数:GBkwERA-

 目的変数としてはGBkwERAの傑出値を使う。まずGBkwERAについて説明する。セイバーメトリクスでは投手は打球をアウトにできるかどうかにほとんど関与できないことが知られている。そのため打者と投手の間のみで完結する結果、三振、四死球、本塁打で評価を行うことが多い。ただ、このうち本塁打は投手の責任ではあるものの、投手のスキルを表すものとしては疑問が残る。投手は打たれた打球のフライ率こそ関与できるものの、打たれたフライが本塁打になるかどうかについては、ほとんど関与できないからだ。そのため三振、四球、打たせたゴロ率によって評価を行う。

 ゴロ率については統計的にkwERA(三振と四球から算出した疑似防御率)と実際の防御率の比を見ると、kwERAに対して実際の防御率が低い場合にはゴロ率が高い傾向があることがわかっている。それに加えゴロ率もある一定の範囲を超えると高いほうが良くなる傾向にあることもわかっている。(下の近似曲線を見てもややしなった形になっている)これはゴロ率が極端に低いと弱いフライを打たせることによる失点抑止効果を期待できるからだ。GBkwERAは三振と四球に加えゴロ率が極端に高い、もしくは低い選手を評価することが可能になる。(例えばクリス・ジョンソンやザック・ニールのような極端なグラウンドボーラーはkwERAでは過小評価されるが、GBkwERAではゴロ率の多さを加味して評価可能)

 また数字は傑出値になおしている。例えば防御率3.00でも統一球時代とそうでない時代では評価が異なる。そのためその年のリーグ平均防御率に対して何%の防御率かという形に直している。

(例えばリーグ平均防御率4.00に対しある選手のGBkwERAが3.00なら
3.00 ÷ 4.00 × 100 = 75 
となり、リーグ平均と比較して75%のGBkwERAとなる。数字は低いほど優秀)

 長くなったが以下に実際の式を記述する。なお、NPB用に係数を一部変えたため、MLB版と係数が異なっていることに注意。

GBkwERA =
(補正値 - 12×((奪三振 - 四球)/打者数)×(-4.38*GB%^2+3.41*GB%+0.372)
※補正値 = リーグ平均防御率 +(12×(奪三振 - 四球)/打者数)

GBkwERA- = GBkwERA / リーグ平均防御率 × 100

説明変数

有効Zone%


 まずZone%とは文字通りゾーン内に投げ込んだ率を表すものだ。この指標は実際ストライクが増えたかには関係なく、ゾーン内に投げ込みさえすれば、打球結果が発生しようとZone%は上がる。つまり、相手がスイングを仕掛けたときに空振りさせられるかどうかといった球威に関係なく、単純にゾーンに投げ込める能力を見るための指標だ。ストライクカウントを増やせたかを表す指標としては、他にCountUp%があるがあえてこれは使わない。理由としては同じ球威でもMLBの打者相手ではゾーン内に投げても打ち返されてしまいカウントアップができないが、NPBの打者相手ならゾーン内に投げ込んでも打ち返されずにカウントアップできる可能性があるからだ。四球を出さない、三振をとるためのストライクを稼ぐ能力と言い換えてもいいかもしれない。

 ただしどのカウントでもZoneに投げ込むことが有効なわけではない。たとえば0B2Sや1B2Sではゾーン内に投げ込むとRV/100(100球あたりの得点価値)は正の値(つまり失点のリスクがある)をとる。集計対象はゾーンに投げ込むことが有効でないこの2つのカウントを除いたものとする。(ゾーンに投げ込むことが有効なカウントのみでのZone%だから有効Zone%)

ゴロ率補正値

 NPBでもゴロ率が極端に高い・または低い選手は失点しにくい傾向が確認されている。

 これを考慮するためMLB時代のゴロ率によって補正を行う。補正値を出すための式は以下になる。

ゴロ率補正値 = (-4.38*GB%^2+3.41*GB%+0.372)

重回帰分析

 以上の目的変数と説明変数を用いて重回帰分析を行う。結果は以下となる。

 補正R2は0.329となった。観測数が22というサンプルの少なさはあるがそこそこ、当てはまりが良いと言えるのではないか。

 予測式は以下になる。

予測GBkwERA- = -151 - 362.8×有効Zone% + 429.5×ゴロ率補正値

 予測式の結果と実際のGBkwERA-を比較したのが以下の図だ。

 一部当てはまる選手もいるがそうでない選手もいる。まだまだ改良の余地はありそうだ。

今季の新外国人成績予測

 最後に今季の新外国人の成績予測をして終わりたい。予測はあくまで予測なのであてはまらないパターンも多いことが推測される。(補正R2が0.329程度の式であるということを忘れないように)


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