フォークボール(スプリット)と縫い目の向き
Tread AthleticsのTurner GivensとAlex Kachlerのツイートをまとめた感じのもの。
縫い目の向きがボールの変化量に与える影響
まず前提として飛翔中のジャイロの向きとボールの縫い目の向きはボールの変化量に影響を与えます。
例えばBaseball Savantのボールの回転軸ページにはSpin Based(実際の回転軸)とObserved(変化方向から推測した回転軸)が併記されています。
澤村投手を例にあげて説明すると、澤村投手のスプリッターの実際の回転軸(Spin Based)は1:15ですが変化方向から推測した回転軸(Observed)は2:30となっています。
これは実際の回転軸よりもボールがドロップし、アームサイド(シュート方向)に動いていることを意味します。
なぜ回転軸が変化しているのかというと縫い目の影響が考えられます。ボールの動きは回転軸、回転数といったマグヌス効果によるものの他にボールの縫い目も影響を与えます。(これをSeam Shifted Wake(SSW)と言います)
SSWは飛翔中のボールの縫い目の向きとジャイロの向きに影響されます。
右投手のスプリッターの場合は角度の偏差が時計回りになることで、より大きな落差を生みます。
握りで縫い目の向きを調整して落差を増やす
こちらのスプリッターはどちらも実際の回転軸・回転数はほぼ同じです。しかし落差に大きな差が生まれています。
(左がホップ量15cmに対し右は5cmと10cmの差)
これは飛翔中の縫い目の向きに影響するものです。
日本語で詳しく説明を試みてみます。
まず元のスプリッターのグリップはこちらです。
握り自体は至って普通の2シームグリップです。このまま投げれば一見、縫い目の向きは2シームになりそうです。しかし、実際はリリースされるときに指が引っかかり、ボールの軸が横にズレて縫い目の向きが4シームになってリリースされています。
ジャイロの向きが時計回りの場合、縫い目の向きが4シームの時はSpin Basedと比較してObservedが反時計回りに傾きます。これにより実際の回転軸より落差が小さくなります。
コーチが落差を増やすために行ったことはグリップの改良です。
グリップを90度上の方向にシフトしています。このグリップの変更により飛翔中の縫い目の向きが2シーム方向になっています。
ジャイロの向きが時計回りの場合、縫い目の向きが2シームの場合はSpin Basedと比較してObservedが時計回りに傾きます。これにより実際の回転軸より落差が大きくなります。
結果として握りを変更することで、縫い目の向きを変え、軸のシフトを今までと逆側に働かせ落差を大きくできました。
カメラのスロー再生で確認する
今のスプリットの縫い目の向きが落差を生む上で適切か確認する方法としてはカメラで動画を撮ってスローで再生して直接確認する方法があります。右投手のスプリッターの場合、時計回りのジャイロなのに縫い目の向きが4シームになっていたら2シームに矯正すれば落差を増やせると思われます。
(直し方としては上記の例のように握りをシフトする方法が考えられます)(シームの向き=握りではない点に注意が必要です。)
(上記の例のように握りがツーシームでも、リリース時に指で引っ掻いて飛翔中のシームの向きが4シームになってるケースがあるからです)