DHが若手育成・選手寿命にもたらす効果
こうした現実からも分かる通り、DHはいまや打撃専門の外国人やベテランの指定席ではなくなっている。長丁場を戦い抜くため、主力の「止まり木」として使われる傾向が強まってきたのだ。
上記はDHは現在、打撃専門の外国人選手やベテラン選手が座るポジションではなく主力選手の休養ポジションとして使われておりそれにより若手育成が促されている、という趣旨の記事だ。今回は実際に主力の休養がどの程度行われているのか、代替の選手にどのような選手が起用されているかを検証する。
DHの代替選手は休養選手より2.4歳若い
主力選手の定義は2020年シーズンでチーム試合数の半分以上先発出場していてかつDHが最多出場でない選手とした。その主力選手の最多先発守備位置をメイン守備位置とし主力選手がDHで起用されたときにメイン守備位置に入った選手を代替選手とした。
まず主力の休養としてDHがどれだけ使われているかを見ていく。
DHの40%以上が主力選手の休養として使われていた。DHを休養起用に使う球団は思っているより多いようだ。
続いては休養選手と代替選手の年齢を見ていく。
休養選手の平均年齢30.1歳に対し代替選手の平均年齢は27.7歳となり代替選手の方が2.4歳若いという結果になった。休養選手の代替には若い選手が使われているようだ。
休養選手がDHで起用されたときに空いたポジションに若手が起用される率は41%となっている。主力選手をDHで休養した時に若手選手はある程度出場機会を得られるようだ。
以上の結果から見ると現在ではDHは主力の休養として使う球団が少なくなくその代替として使われる選手は休養選手より若い選手が多い傾向にあるようだ。若手に機会を与えるという意味でDHが機能しているという可能性がありそうだ。
球団別にDHをどう活用しているかを見る
ここからは2020年のパ・リーグ球団別でDH制をどう活用しているかを見ていく。
ソフトバンク
ソフトバンクは主力の休養としてDHを49試合使用した。また今季ブレイクした若手の栗原を6試合、今回の若手の定義からは外れるが柳田の代替として上林(25)に12試合を与えるなど若手に出場機会を与えていた。
ロッテ
ロッテはDHを主力の休養という形ではあまり使わず多くの選手に共有させる形で起用していた。DHの内訳で見ると佐藤(22)、安田(21)、菅野(27)といった規定未到達だった選手たちに多くの出場機会を与えている。DHに直接若手選手を起用する形でDHを若手育成に活かしていた。
西武
西武は主力選手の休養に48試合ほどDHを使っていた。山川とメヒアに1BとDHをそれぞれ担当させ負担を分散させる狙いがありそうだ。長いシーズンで選手に負担を与えない形で戦う手段としてDHを活用させていた。
楽天
楽天は49試合主力の休養としてDHを使用した。代替選手を見ると新人の小深田ら若手に多くの出場機会を与えており若手起用率は81.6%という驚異的な若手抜擢率を記録した。若手育成と言う面から見ると今季最もDHの恩恵を受けた球団と言えるかもしれない。
日本ハム
日本ハムは103試合、主力の休養としてDHを起用した。主力を休養させて負担をかけないように使えたという意味では楽天とは違った形でDHの恩恵を最大限に受けた球団と言えるかもしれない。代替選手で見えてみると特に清宮が多くの出場機会を得ており若手に実戦の機会を与えるという意味でも活用できていたようだ。
オリックス
オリックスは48試合、主力の休養としてDHを使用していた。吉田正尚は27歳とまだ若い選手だが故障を抱えており通年通して守備に就かせることが難しい選手だ。吉田がセ・リーグの選手だったら無理に起用して選手寿命を縮めるか休養のために出場を減らしてしまっていた可能性を考えるとオリックスと吉田個人どちらもDHによる恩恵を受けていたと言える。
まとめ
・2020年のパ・リーグでは主力選手の休養としてDHが40%近く使われていた。
・休養選手の代替選手は休養選手より2.4歳ほど若くDHが若手に出場機会を与えるのに役立つ可能性を示唆している。
・パ・リーグ各球団は主力の休養、若手の育成等それぞれの形でDHの恩恵を受けている。
セ・リーグとパ・リーグの差としてDHが挙げられそれに対する賛否は分かれている。実際のところ私もDHを使用すればすぐにでも差が縮まるものではないと思っている。しかしDHによってパ・リーグの各球団が選手寿命の延長や主力の休養、若手への出場機会といった恩恵を受けているところはあるだろう。
現在のパ・リーグではDHはDH専門の外国人選手やベテラン選手1人が座るポジションではなくなってきている。そのことを改めて認識したうえでセ・リーグへのDH導入は議論されるべきではないかと思うところだ。