NPB版の簡易oWARっぽいのを作る
あえて今oWARを作る意味があるかは不明ですがやってみます。
oWARって?
Baseball Referenceなどで公開されている打撃(wOBA)と球場補正とリプレイスメント補正と守備位置補正だけがされたWAR(代替可能選手と比べた勝利貢献)です。守備でどんなパフォーマンスをしたか(UZRやDRS、TZR)は含みません。
簡易oWARって?
oWARをさらに簡易にしたものです。球場補正を含みません。本当に簡易的な打撃とポジションだけを考慮したoWARです。
算出方法
ここでは1994年のイチロー選手を例に説明します。
まず各年度・各リーグの投手の打席を除いたStandard wOBAを算出します。
wOBAの係数は厳密に言えば毎年代わりますが、面倒なのでStandard wOBAで統一。係数は以下のリンクのDELTAが算出したものを使用。
リーグ平均wOBA
1994年のパ・リーグのwOBAは0.330です。
ここからリーグのリプレイスメントレベルのwOBAを設定します。
リーグ平均wOBAの選手が600打席立った場合、リプレイスメントレベルのwOBAの打者より+20得点(2勝)できるぐらいの値になるよう、リプレイスメントレベルwOBAを設定します。だいたいリーグ平均wOBAより-41ポイントです。
リーグリプレイスメントwOBA
1994年のパ・リーグのリーグ平均wOBA(0.330) - 0.041 = 0.289
そしてポジション補正です。
面倒なのでDELTAの補正値をそのまんま用います。
600打席通して1年間立った場合、それぞれの補正値になるようにリーグリプレイスメントwOBAに守備位置ごとに値を足したり引いたりします。
リプレイスメントレベルwOBAから足し引きする値
捕手: -.037
一塁:+.029
二塁:-.007
三塁:+.009
遊撃:-.022
左翼:+.025
中堅:-.009
右翼:-.010
指名:+.031
1994年のイチローのメインポジションは中堅手なので補正値は-.009です。
ポジション別リプレイスメントwOBA
パ・リーグ平均リプレイスメントwOBA(.289) + センター守備位置補正(-.009)
= .280
1994年のパ・リーグのセンターのリプレイスメントwOBAは.280です。
リプレイスメントレベルを設定したら後はRAR(代替選手と比べた得点貢献値)を出しRPW(1勝当たりに必要な得点数≒10)で割ってWARの形にします。
oWAR = (当該選手のwOBA - 守備位置リプレイスメントwOBA)÷wOBAscale(1.24)*打席数/RPW(10)
厳密に言えばRPWは年度ごとに変わりますが面倒なので10で固定します。(だいたい10前後なので大きなズレはないはず)
さて、イチロー選手にあてはめます。この年のイチローのStandard wOBAは.429、打席数は616なので
(0.429 - 0.280)÷1.24×616 ÷ 10 = 7.4
ということでWARは7.4です。WAR7はMVP級の値です。イチロー選手の場合は守備の貢献も期待できる選手なので守備を測る方法があればもっと高そうですが攻撃と守備位置補正だけでこれだけ、という感じです。
注意点
当然ですが守備は守備位置分しか考慮してません。同じ守備位置でもUZRでいえば+20と-20の選手が守ったら本来WARでは+4.0程度の差は出ますがこのoWARには反映されません。なので源田壮亮選手や安達了一選手のような守備でWARを稼ぐ名手は不利になります。
またあくまで簡易的なのでPFも考慮してません。神宮球場でプレーしてる選手は有利になりますし、ナゴヤドームでプレーしてる選手は不利になります。
なんでわざわざ作ったの?
1965年度のドラフト1年目からのデータベースをTableau Publicで作ろうかなと思ってどうせならWARが欲しいなと思いましたが、NPB STATSは2022年で更新が現在停止しましたし、DELTAのWARは有料で最近の分しかないので簡易的なWARでいいから作ろうかなーって思った感じです。
そのうち公開するかもしれないですし飽きてやめるかもしれません。