まっスラする選手はツーシーマーになるべき?

ツーシームにとってSSWは重要

 ツーシーム(MLBではシンカーとも呼称されるボール)で失点を抑えるうえではシーム・シフテッド・ウェイクが重要になります。シーム・シフテッド・ウェイクとはボールの縫い目に空気がぶつかることによって気流の乱れを発生させボールを変化させる事象のことです。(物理素人なのでこの説明が間違っていたらすいません)

 このシーム・シフテッド・ウェイクを測る方法としては観測された回転軸と変化量から推測された回転軸を測定してその差をとるという方法があります。(実際のボールの回転軸と実際の変化量から推定した回転軸が異なる=SSWが発生した、という具合です。SSWが大きく発生した場合は両者の軸の差が大きくなります。)

 この方法を用いてSSWと失点抑止の関係を見てみます。

 上記の画像は軸の偏差についてRV/100(100球あたりの得点価値、低いほど失点を抑止できている)を集計したものです。画像の通り軸の偏差が大きいほど値が低くなります。ツーシームで失点を抑止するには回転軸の偏差は30度以上必要になるようです。

 ツーシームにおいてSSWは非常に重要であることをここまで説明しました。ではどんな選手がSSWを投げやすいのでしょうか。

SSWはジャイロと関連がある?

 Since Smith claims more gyro gives more SSW effect (to a point), it is plausible that 1) more axis shift requires more gyro and 2) The SSW effect on two-seam sinkers can mitigate the Magnus force lost with gyro while the four-seam cannot. This is evident in the flat region of movement vs axis shift in the sinker plot from -20º to 20º.

https://www.baseballprospectus.com/news/article/62912/not-just-about-magnus-anymore/ 引用

Smithはジャイロを増やすと(ある程度)SSW効果が得られると主張しているので、1)軸のずれを大きくするにはジャイロを増やす必要がある、2)ツーシームシンカーのSSW効果はジャイロで失われるマグナス力を緩和できるが、フォーシームは緩和できない、というのはもっともな話である。これは、-20°から20°までのシンカープロットにおいて、動きと軸のずれが平坦な領域であることからも明らかである。

DeepL翻訳

 ツーシームの軸のズレを大きくする(SSWを大きく発生させる)にはあるジャイロを増やす必要があるそうです。ここでひとつ思いつきます。フォーシームをジャイロ成分多め(=回転効率低め)で投げている選手はツーシームの軸の偏差も大きくなるのでは?

 Baseball Savantのデータを使い観測された同選手のフォーシームの回転効率と軸の偏差を比較した散布図がこちらです。

 決定係数は0.47と強めの相関があります。つまり、回転効率が低い(ジャイロする、まっスラする)フォーシームを投げる選手はツーシームを投げるとSSWを発生させやすい傾向にある、ということが言えそうです。

回転効率が低いフォーシームは失点を抑止できない

 「回転効率が低いフォーシームは平均的な軌道に比べて沈むから打ちにくい」と思うかもしれません。しかし実際に得点価値(RV/100)で見てみると負の値(投手にとって失点を抑止できる)のは回転効率が90%を超えた速球のみであり、後は値が下がれば下がるほど失点しやすくなることがわかります。(これはホップしない速球であるため、空振りが取れないことが関連していると思われます)

回転効率が低いフォーシームを投げる選手はツーシーマーになるべき?

ここまでの話をまとめると以下のようになります。

・ツーシームはSSWが重要です。
・フォーシームの回転効率が低い選手はツーシームを投げたときにSSWを発生させやすい傾向にあります。
・フォーシームは回転効率が低いと空振りを奪えず失点しやすい傾向にあります。

 これらについてまとめると、「フォーシームの回転効率が低い選手は、失点しやすいフォーシームより、失点しにくいツーシームを投げるべき」という案が思いつきます。

 実際は快適に投げられるかどうか、コマンドができるか、という点などいろいろ問題はあると思います。ですが、フォーシームがジャイロしてしまう選手は試す価値もあるのではと個人的には思うところです。

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