前田コーチが考える練習改革論【後編】
こんにちは、練習改革by Mizunoです。
今回は前田コーチが考える「練習のあるべき姿」について、さらに深堀させてもらいました。
まだ前編を読まれていない方は、こちらのリンクを確認してください!
仕組みの理解や伝え方
ミズノ:私たち練習改革by Mizuno は、計測・分析・実践の3つを反復する、繰り返すことを重要視しています。そして、このサイクルを回すことが大事ですが、繰り返せていないことが多いと考えてます。
今の野球界において前田コーチは、フリーバッティングやブルペンでの課題の確認(計測)に時間を割き過ぎて、分析が曖昧なため、フリーバッティングなどが適切な課題解決の手段になっていないとお考えでしょうか?
前田コーチ :多くの場合はそう思います。だから、慣れで解決しようとすることが多いですよね。
たくさん打ち、たくさん投げることによる反復から何かを得られるだろうという練習が多い。今起こっている問題点がなぜ起こっているか原因分析して、原因を改善するアプローチがあまり明確じゃないから適切な練習が実施できないんですよね。
その動作での問題点はわかるけれど、なぜ起こっているかの原因がわからないままの練習や指導が多いと思います。
例えば、「体が開いているから○○しろ」という指摘だけで終わっていますね。その中で、ただフリーバッティングを行ったり、意識をしながら投げたり打ったりしてるだけでは明確に、原因に対して改善していく手立てがないため、どうしても慣れに頼る練習の仕方にならざるを得ないですね。
ミズノ:プロ野球選手だと、フリーバッティングやブルペンで投げていながら、いろんな専門のコーチがいるため原因分析ができているのかなと思います。また、トレーナーがいるから、体の状況が悪いという原因分析もできると思います。しかしながら、お金が満足にないアマチュアのチームだと、サポートスタッフが足りないため、もっと選手自身が課題や原因分析を考えてやる必要がありますか?
むしろ、やらないと逆に伸びないのでしょうか?
前田コーチ :そうですね。明らかに伸びないですね。高校生の場合は基本的なことができない場合が多いので、特に公立高校だったら育成しないと勝負にならない。きちんと育成しないと勝負にならないけれど、実は育成に勝機があります。
プロも然り野球界全体に言えますが、感覚的にできている選手はやはり感覚を大事にしてプレーしています。仕組みや原因をあまり考えなくてもそこそこ体が動くため、大体できてしまいます。だからこそ、日々フリーバッティングをやって、”良かった”、”悪かった”と慣れていく範囲の中でも、それでもレベルアップしていきます。
ミズノ:公立高校では、その部分をどう落とし込めばいいでしょうか?
前田コーチ:公立高校の選手は、本当にきちんと基本の仕組みを理解して作り上げていく。意図して作り上げれば、追いつき追い越すことが可能になっていくんですよ。だから、曖昧だったり、旧来通りの感覚で練習しているところに対して、情報を駆使して明確に仕組みを理解したうえで、課題解決しているチームは勝っていけるように成長すると思います。言い換えると、適切な努力ですかね。適切な努力をしたチーム、選手に対してちゃんと努力が報われる時代になってきていますよね。
ミズノ:実際、強豪校に勝つケースは増えていると思われますか?
前田コーチ:進学校が強豪私立に対してジャイアントキリングすることも増えていると思います。その要因は情報の取捨選択を上手くできているからではないでしょうか。野球界自体が発展・成熟し、いろいろなことがわかってきているからだと思います。ただ、進学校というよりも指導者がどう伝えているかだと思います。理解しづらい細かいところも、順を追って伝えれば理解できます。それは小学生でもきちっと伝えれば理解できるんで。
ミズノ:その伝えることを、どれだけ根気強くやるかということでしょうか?
前田コーチ:そうです。だから、指導者が曖昧な捉え方をしていると、選手には曖昧にしか伝わらないので、指導者の理解の深さがそのまま選手の理解に反映しているはずです。
ミズノ:ということは、仕組みをただしく理解できている人と曖昧に理解している人では、試合の反省をする際の原因の深掘りに大きな差が生まれそうですね。戦術のスキルアップも当然変わってくると感じますが、いかがですか?
前田コーチ:そう思いますよ。突き詰める度合いは指導者によって違う。もちろん選手によっても違う。指導者の突き詰める度合いがそのまま選手に現れると思います。どこまで深く突き詰めて明確にしているのかですよね。それがあやふやで「なんとなくこんな感じ」と選手に伝えていると結局練習に反映できないので。
ミズノ:試合の反省が練習に活かされていないパターンもあると思いました。
前田コーチ:はい、それでは改善できないですね。反省として「体が開いてるからだ」で終わっていたら、それは改善できていないので。
どんなフォームが開きで、それがなぜ起こっているのかがわからないと、改善の手立てを作れないです。
「開いてるから我慢せい。」みたいなのでは変わらないということですね。
データ活用
ミズノ:指導者と選手で、データや情報を活用できている人の特徴はありますか?
前田コーチ:僕の思いも含めてお伝えすると、活用するためには、まず自分自身がきちっと考え抜いた信念を持ってなければ、活用できないと思います。
ミズノ:考えや信念がゼロの状態だと何も活用できないということでしょうか?
前田コーチ:そうです。自分が”これ”だと考え抜いている考えがあって、それと新たな情報やデータと照らし合わせた時に、それが合っている、もしくは今まで考えていたものが間違ってたことに気づくと思います。それはデータだけではないですね。
新しい何かに触れたときに、ちゃんと判断ができるんですよ。そうじゃない人は全て鵜呑みにして、表面的なことだけをどんどん取り入れていくと思います。そうすると活かせないんですよね。だから、日頃からどんなことに対しても自分で考え抜いて、意見を持っている。特に野球に関することについては、それが確実にできている。その前提があった上で、データに触れることがないと活用できないだろうなと思います。
ミズノ:選手としては、プレーに必要なことをちゃんと突き詰める姿勢があるのかどうかがポイントだと思いました。
前田コーチ:そうですね、データを見た時にボールの回転に関しても回転数なのか回転軸なのかとか、それでボールがいろいろ変化していくことがわかったときに、自分の球質というものがどうやってできあがっているのか。仕組みとしてわかってくると、回転のかけ方と実際の変化との関連性について考えるなど、どんどんそうやって数字の意味を捉えて、自分でそこから新しいことに挑戦するのではないでしょうか。
ミズノ:言い換えると、そこに興味や探求心があるかないかでしょうか?
前田コーチ :そうですね。
興味関心の持たせ方
ミズノ:興味関心を持たせるために、外部の指導者を入れてみて、そして、興味関心の重要性を伝えるのは一つの手段なのでしょうか?
前田コーチ :そうですね。野球のことが一番興味があるはずです。興味があることから考え、触れていくことで、様々なことがわかってきて、その結果上達する。このような成功体験を積むことが大事だと思います。そこから他のことに派生して全体が出来上がっていくと思うんですよ。
例えば、考え方の勉強から始まっていくと、すごく膨大な勉強になってしまいます。野球の動作の仕組みを理解しましょう。と言った時に、まず解剖学から勉強しましょう。みたいなことをやったら、とんでもなく時間がかかるわけですよ。
ミズノ:時間がかかると学びを敬遠しそうですね。
前田コーチ:そんな必要はなくて、野球の動作の基本から、今のフォームに対して、自分の体や動きの分析や理解をしておけば、興味あることに対してわかってくるはずなんですよね。それで、そこからだんだん範囲を広げていって、深くなったり、広がってきますよね。
ミズノ:例えば、ボールの回転のデータから、体の回転と腕の関係がどうなっているかを深堀し、自分のボールがシュートする原因がわかる。それを改善するために肩甲骨がどう動かないといけないのか、そのためのストレッチを何をすればいいのか?というように広がりますね。
前田コーチ:物事の広がり方って多分そうですね。
怪我する前にコンディショニングへの意識が高かったらいいですけど、コンディションを探求するのは怪我してからの選手が大抵多いです。
ミズノ:そういう興味の順序もあるんですね。ありがとうございます。
ここまででBCS前田コーチが考える、仕組みの理解や伝え方、データ活用、興味関心について聞かせていただきました。
引き続きよろしくお願いいたします。
まとめ
・戦うための戦略として個の力を高めることが重要であり、その中でもフィジカルと技術の両面が課題であると語ってもらいました。
・特にフリーバッティングやシートノックなど全体での練習時間に対する疑問を提言してもらいました。
選手1人1人に課題を意識させ、個々の練習時間の中で課題を改善させるため、練習の取り組み方を変える必要性があると思います。
・それにあたって、具体的な分析に基づいた目標設定や原因分析を行い、それに基づいて改善アプローチを行う重要性が説明されました。また、指導者や選手に求められる深い理解やその具体的な表現は、結果へ大きな影響を与えると指摘してもらいました。