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【どうする家康】ラストの東京タワーの意味。最終回でも輝いた松潤の演技のスゴみとは。最終回「神の君へ」雑感

NHK大河ドラマ『どうする家康』最終回の雑感です。

前回の感想はこちら↓

※こちらは、筆者がX(旧Twitter)にてつぶやいた内容を一部加筆・修正したものとなっております。そのため構成や文体など、過去の記事と不統一なところがございます。ご了承ください。

(※以下、ネタバレ注意)


●第45回の氏真の台詞を回収!ついに呪いから解き放たれた家康

第45回で家康に「本当のおぬしに戻れる日もきっと来る」と語っていた氏真。

思えばこの物語で、家康に「呪いの言葉」をかけて散っていく者が多かった気がするが、氏真のこの言葉は祈りであり、最終回への伏線でもあると感じていた。

そして実際、病床で信康の祝言を思い出しながら、かつての家康に戻っていく。

そこには、過去を回想しながら、信長の鯉殺しの責めを負って自らの首を差し出そうとした老いた家臣の一人(鳥居忠吉)も斬れぬ泣き虫弱虫の家康の姿が描かれていた。

これは資料にもある逸話だが、最後にこのエピソードを持ってきたか!と、見事だと思わずにはいられない。

徳川家康が岡崎城に在った頃、勝手に鷹場で鳥を取った者や城の堀で魚を取った者たちが家康の怒りを買い、牢に閉じ込められてしまった。これを聞いた鈴木久三郎は、勅使に馳走するための鯉や織田信長からもらった酒を、家康から拝領したものとして勝手に持ち出し、皆に振舞ってしまった。家康は烈火の如く怒り、薙刀を手にして、久三郎を呼びつけた。すると久三郎は、「魚や鳥を人に替えて、天下が取れるか」と吠えた。これに家康は心を打たれ、久三郎や捕らえていた者たちを赦したという(岩淵夜話別集)。 

鈴木久三郎|Wikipedia

●ファンタジーでもあり回想でもある。どちらの視聴者の満足度も満たす画期的な展開と、それを実現させた主演の演技力に感服

また、このときの松本潤さんの演技もすさまじい。

回想シーンでは当時の泣き虫弱虫のままの家康を演じながら、最終回の老いたシーンに戻る間際には、老人のような口調と重なっていく。「過去回想」と「ファンタジー」を織り交ぜたような演出にただただ震える。

リアルな物語を求める視聴者には、ファンタジーのシーンが出てくると興覚めなのだ。しかし、見ようによっては今際の家康が見た幻のようにも見えるし、「ファンタジーでもいいから家臣がみんな元気だった場面を最後に見たい」という視聴者の期待にも同時に応えたように思う。

●ラストの東京タワーの意味とは。現代人への問題提起にもゾクリ

そしてラスト、家康たちが向ける視線の先に東京タワーなど現代の日本の姿が広がっている光景は、やはり僕らがドラマで彼らを見ていたのではなく、彼ら自身が過去から現代の僕らを見ていたというような、ドラマが現実世界に飛び出すような演出にも見えてある意味ゾクッとなった。

無論、家康が江戸幕府をつくり、そこから現代まで平和な世が日本でずっと続いているわけではない。

幕府は明治維新でなくなっているし、そこから大正・昭和にかけて日本は戦国時代よりももっと恐ろしい世界大戦へと巻き込まれていくことになる。戦を求める者たちの魂が消えることはなかった。

でも、だからこそ。紆余曲折あって、少なくとも現時点では平和を享受している我々。下手するとまた大戦へ突っ込みかねない我々がこれからの世を生き抜くために、何を選択すべきかが問われているように感じた。

「どうする家康」の続きはまさに、「どうする現代人」なのだ。

●ドラマを楽しんでいた者も「反省会勢」も、両者が反省すべきこととは。「乱世の亡霊」に憑りつかれるな

例えばこのドラマの感想ひとつとっても、毎回「面白かった」「面白くなかった」「反省会だ」なんだとバラバラなSNS。

別に意見が分かれるのは良いことだし、その度ケンカ腰になるのもまあ人間なんだしと理解はできる。ただ、それらの騒動もこの最終回をもって完結とさせたいろころだ。

今回限りで大河を観るのを辞めてもいい。来年もまた見たいでも来年こそ楽しみたいでもいい。ただ、つまんない視聴者同士の意見の食い違いから生じた遺恨のようなものは今年限りで捨ててしまえ。そんなネガティブな感情に年を越させるな。

乱世の亡霊は油断するとすぐ現れる。誰の心にも憑りつく。このドラマを楽しんでいた人こそ逆に憑りつかれているような気がして不安でならない。僕自身も一時期憑りつかれていた。

どうか、大河が好きな者同士、心穏やかで、また来年を迎えられると良いですね。

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