【どうする家康】阿月は小豆の擬人化?家康が信長に言い放った2回の「あほたわけ」、実は前後で意味が違う説。第14回「金ヶ崎でどうする!」雑感
NHK大河ドラマ『どうする家康』(以下、『どう康』)第14回の雑想です。
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前回の感想はこちら↓
(※以下、ネタバレ注意)
(※本記事のセリフの引用箇所は一部ノベライズに準拠しており、ドラマのセリフとは異なる場合がございます)
●小豆の擬人化?お市の侍女が大活躍の『いだてん』回!
まさかモブキャラだと思っていた、お市の侍女に泣かされる回だったとは……。
今回は阿月(演:伊東蒼)がフィーチャーされました。彼女が金ヶ崎へ向かって走る様子は前回の予告にもチラッと出ていましたけど。まさか、アバンで幼少期のエピソードから何から出しての作り込みをしてくるとは。驚くどころか、もうガッツリ引き込まれてしまいましたね。
結果、めちゃめちゃ王道展開ですやん、今回……。『リーガル・ハイ』やら『コンフィデンスマンJP』やらで邪道を極めた(?)古沢良太さんの脚本でこんな風に王道物を見せられると、逆に泣いちゃう。やっぱり「ベタ」って大事なんだなと思わされます。
そもそも、そのものずばりの「阿月(あづき)」って名前。てっきり「小豆(あずき)の擬人化か?ちょっと露骨すぎない……?」って思っていたんですよ、正直なところ。なので前回のレビューでは、あえて阿月については何も触れないでいたんですけれどもw
ただ、お市の方が陣中見舞いとして信長に送ったとされる、「両端が縛られた小豆袋」。これが後世の創作だということで、ドラマでは使いたくなかったと。そういうお話が、時代考証の小和田哲男先生の動画でも補足説明されていました。
まぁ、ぶっちゃけ「両端が縛られた小豆袋」なんて渡されて、「これは……両方から挟み撃ち?まさか、長政が裏切ったのか!」なんて推理できるかよ、と思いますもんね……最初から長政に謀反の疑いがなければ無理です。まして信長にとっては、自分の妹を嫁に送ったくらいの愛すべき義弟なわけなんですから。
そう考えると、「送られた小豆袋を見て謀反を悟った」とするより、「お市の方の侍女が命がけで走って謀反を知らせた」とした方が、ドラマ的にも物凄く説得力が出てきます。そして小豆袋自体も、一応出てきてはいます。「小豆袋ファン」の皆様も落ち込まないでw
しかし中に手紙が仕込まれお手玉となった小豆袋、忍びに渡していましたけれど、忍びは長政の家臣らによってアッサリ捕えられていました。逆に言うと、それだけ浅井家臣団の警戒心も高かったんですよね。お市をはじめとして、浅井領内にいる織田方の人間を徹底的に監視していたんでしょう。
●「マラソンの語源」になぞらえるように迎えるラスト。哀しくも重要な描き方だった
阿月自身も「私なら、怪しまれずにここを抜け出せます」なんて言うんですけど。結果、怪しまれて追い詰められてました。ここ、ドラマを見返すとカメラが阿月の足元を映してますね。どうやら履いていたのが、ちょっと近所を出歩く用の草履(ぞうり)ではなく、長旅に使う用の草鞋(わらじ)だったので目を付けられたっぽいんですけど……ここ、時代考証がエグくない?
しかも阿月、一度は崖から突き落とされて「死んだか?」とも思われるシーンまで。それでも約40キロの距離を駆け抜け、伝え知らせることができました。Googleマップで見ると、この距離ですよ……↓(※もちろん、当時は今ほど舗装された道もありません)
これ、第6回で、今川館から東岡崎まで瀬名らが歩かされた距離に比べたらだいぶ短い感じはしますけれども、ほとんど険しい山の中のかき分けていかねばならない地獄のクロスカントリーです。
しかも浅井軍にバレちゃいけない。そして追い越さねばならず、途中休憩もなくずっと全力で走り続けたことを考えると、そりゃ最後は力尽きますって。
個人的には、「えーっ、死んじゃうの⁉」っていうショックはありましたよ。人の命が軽く描かれる戦国時代においても、やっぱりバックボーン含めて丁寧に描かれたキャラが亡くなることは、どんな物語でも辛いものです。
ただ、やっぱり「命懸けで伝えた」というところで物語としての説得力が生まれるところもあるし、「この金ヶ崎で迎え撃ち、信長殿の逃げる時を稼ぐ!」と家康に言わしめるだけの展開にもつながっていくわけなので、辛いけど、必要な場面だったんですよね。
ちなみに「約40キロ」という距離がわざわざ画面に出されたことからもわかるように、この阿月のエピソードは、「マラソンの語源」となったエピソードにもなぞらえているような印象を受けます。
●浅井長政の裏切りは朝倉との関係性にあらず?大局を見据えた武将はさらに高みを目指したのか
そして浅井長政の裏切りの理由についてなんですけれども……僕、前回「大河初心者の方には、ぜひ朝倉と浅井の関係にも注目していただきたいところ」なんて書いてたじゃないですか。
これ、「浅井様と朝倉はそのような間柄ではござらぬ」なんて柴田勝家も言っていましたけど……アレーッ、また僕、読み間違えちゃったのwwおかしいなぁ……。
一応、通説では浅井長政、朝倉と織田の両方に属していたため、「どちらか一方を選べとなれば、織田よりも長く仕えていた朝倉を裏切るなどできません!」みたいな感じで織田を裏切ったとされていたんですけれども。
けれども、最近の研究ではそれも諸説あるうちのひとつにすぎず、タイミング的にも謎が多いことから、今なお議論が続く歴史ミステリーの一つになっているとのことでした。ぬぅ……勉強になるなぁ。
ということで、史実はともかくとしてですよ。少なくとも『どう康』ではどう描かれたか。
「朝倉を滅ぼせば、越前国は織田家のものとなるであろう。いや、越前のみにあらず。今後、信長殿に逆らった者は全てそうなる。我らとてな」
ドラマの長政はそう語っていました。つまりは大局を見過ぎたがゆえの判断。第13回で家康が「信長殿についてきてよかったのかもしれんな。このまま戦のない安寧な世がくるような気がする」と家康が楽観的なことを言っていたのとは対照的に、長政は「このまま信長殿についていたら、それこそ戦続きの世になってしまう」と憂いたのでしょう。
とは言え、信長の側には室町幕府将軍の足利義昭だって付いています。信長に弓を引くのは将軍様に弓を引くのとも同じハズなんですけれども、それについても数正がこう言っていましたね。
「信長がやろうとしているのは、あの将軍を操って天下を我が物にすること」
や、やっぱり将軍様は傀儡なの……?いや、傀儡とは思えないんだけど。まだこの段階では「持ちつ持たれつの関係性」だって思っていたんだけど……少なくとも、長政や数正の目にはそう映っていたということなんですね。
●信長に「日ノ本」を我が物にする野望はあるのか?家康に否定されて浮かべた涙の理由とは
もちろん、信長本人は「俺は将軍と、朝廷のために戦っている!」と家康に向かって叫んでいます。しかし、それを「お前の心のうちなどわかるもんか!」と家康に否定されて、激昂しながらも信長は目に涙を浮かべていました。
僕、思うんですけど、やっぱり長政や数正の台詞はミスリードだと思うんですよね。岡田信長くん、本気で日ノ本(日本)を我が物にしようとなんて考えていない。けれどその圧の強さと、物事をすごいスピードでこなしていく「仕事の速さ」から、勘違いされてるだけだと。
なのに、自分が本当に愛した義弟の長政には裏切られ、幼少期から可愛がっていた家康にも「お前の心のうちなどわかるもんか!」と突き放されるような態度を取られてしまう。一方、信長に従うのは木下藤吉郎のような出世欲が強いサイコパスに、明智光秀のような陰湿ジジィばかり。まさに「ただひたすらに信長殿の機嫌を取るだけのような輩」なわけです。
ただ今回は、同じくその輩の内の一人だった柴田勝家は、少し株が上がるようなシーンも描かれていましたね。信長VS家康の口喧嘩の後、「わしゃ、もうおしまいじゃ……」と絶望する家康に対して「徳川様がおられる時だけでござる。我が殿の機嫌がよいのは。どうか、引き続きお供くださいませ」と言いに来てくれました。
勝家が、まだ常識人で良かった……。そう考えれば第4回の「清須でどうする!」で藤吉郎のケツを蹴っていたのも「常識人の勝家から見ても、藤吉郎はヤバイやつであることを悟っていた」からのように思えてきます。
●家康、2回も「あほたわけ」!信長にもの申せるようになった理由は?
今回の雑感でもう一つ注目しておきたいのが、家康が信長に対して「あほたわけ」というセリフを2回も吐いたことですよね。SNSでも「1週休んでる間に強くなり過ぎじゃないか家康」と戸惑うような意見も出ていましたけれども。
ただ、個人的にはこの2回の「あほたわけ」、それぞれまったく意味が違うなと感じました。1回目の「あほたわけ」は、長政の裏切りを予見したせいで信長と口論になった際、「朝倉の次は、お前じゃ」なんて言われたからですよね。家康くんじゃなくても「なぜ、そうなるんじゃ!」ですよ。完全にとばっちりもいいところです。
こうなると、売り言葉に買い言葉。家康くんだって腹が立ったのと、「それだけは勘弁してくれ」という恐怖に駆られたのとで感情がグチャグチャになり、つい「あほたわけ」が無意識で漏れてしまったんだと思います。
その証拠に、「左衛門尉、数正!どうしてもっと早く止めてくれなかったんじゃ」なんて後悔を口にしていましたね。左衛門尉にも「『あほたわけ』は、さすがにまずかったですなあ」なんてたしなめられていました。
やっぱり家康くん、キレると自分が思ってもいないようなことを口にしてしまうクセがある。これは第2回のときからずっとそうです。「そなたたちのことは、このわしが守る!わしが守るんじゃ!」と宣言して岡崎に帰ったのに、「どうしよう……!」なんて最後に後悔していましたよね。
でも、本当に家康くんの成長を感じられたのは2回目の「あほたわけ」。これは阿月が命がけで知らせてくれて長政の裏切りが明確なものとなった瞬間、それでも「お主の指図は受けん!」と頑なに引こうとしなかった信長に対しての本気の「あほたわけ」なんです。
「わしの指図ではない!お市様のじゃ。阿月の命を無駄になさるな」
阿月の骸を前に、その死に報いたかった家康。お市様のメッセージを届けたかった家康。そして、信長に本気で死んでほしくなかった家康の、すべての思いがこもった「あほたわけ」だと感じる展開になっていました。
だから、「1週休んでる間に強くなり過ぎ」なんじゃないのよ、家康くん。成長があったとすれば、それは阿月の死を受け入れたことでの成長なんですよね。
ホラ、やっぱり大河の「成長」って、哀しいでしょ……「何かを乗り越えた」とか「目標が達成できた」とか、そんな甘いものじゃないんです。もっと絶望的な哀しみを背負いながら、それでも前に進まなきゃいけないんですよね、大河の主人公というのは。
そして次回、第15回「姉川でどうする!」ですか……恐ろしい戦況を目の前にして、また「浅井につきたい」なんて弱気なセリフを口にしていましたね。またかよオイww
家康くんの成長、基本的に右肩上がりではあるんですけど。やっぱり乱高下はあるみたいですね……なんか、株やFXの相場を眺めているようやで……。
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