【お題・シナリオ】みんな猫になる(3,370字)【投げ銭】
――放課後の教室。
生徒A「最高! ニャンチャコちゃん愛してるー!」
生徒B「いきなりテンションおかしいなおまえ、どうした?」
生徒A「あ、こんにちは先輩、どうもいつもお世話になっておりますニャンチャコちゃん最高!」
生徒B「え、おれ先輩なん。ふつう同じ教室にいたら同級生ちゃうの? そして相変わらずテンション高え」
生徒A「見てくれよこのCDジャケットのニャンチャコちゃん最高すぎね? まじ天使。天使超えて神。いや神超えて創造主」
生徒B「てかいきなりタメ語かよ。そして神の上位は創造主でいいのかどうか議論の余地はあるけど確かにそのジャケ写かわいいな。ニャンコちゃんっていうの? 誰? アイドル?」
生徒A「ちげーよニャンコちゃんじゃなくてニャンチャコちゃん! ジジィ並みの記憶力だなやべーぞお前」
生徒B「しょうがねーだろ字面だと目が滑って……てか、さっきの先輩後輩設定どうした。そして唐突な罵詈雑言! ニャンチャコちゃんにハマりすぎて周り見えてないやべえヤツみたいになってんじゃん。全国のジジィに謝れ」
生徒A「そりゃあヤベエやつにもなるだろ! ニャンチャコちゃん最高過ぎて! まじて尊い!」
生徒B「ヤベエやつ否定しないのかよ」
生徒A「アアッ! 尊くてシヌ! 尊死!! 孫氏!! 諸葛孔明……グハッ(吐血)」
生徒B「諸葛孔明いま関係無くね? いやおいおい泡吹いて倒れんな! マジで死にそうになっとるやないか!」
生徒A「アア……グフッ……頼む……俺が死んだら、棺に小麦粉とマキシマムかけてこんがり焼いてくれ……」
生徒B「なんでリロ氏のホットサンドメーカーレシピみたいになってんだよ! ハイボールでキメられたいのかよ!」
生徒A「うう……意識が……川の向こうでニャンチャコちゃんが俺に手を振って……今行くよ」
生徒B「なんでニャンチャコちゃん先にあの世に召されてるんだよ。おい、起きろ! 死んだらそのニャンチャコちゃんにも現世で会えなくなるぞ!」
生徒A「そうだった!(ガバッ)」
生徒B「立ち直るの早いな。ちょっと吐血までしてたのなんだったの」
生徒A「あ、それはさっき飲んだトマトジュースです」
生徒B「紛らわしいことすんな。しかもめっちゃコテコテのやつ」
生徒A「実は今からニャンチャコちゃんのライブなんだよ! おめえも来るか? チケット2枚あるので、あなたさまの下僕であるワタクシめが確保しておき申した」
生徒B「時代設定おかしな敬語! っていうか、さっきから俺とお前の関係性どんななんだよ。まずそこの設定をしっかり定めてくれ」
生徒A「あらやだぁ~ん、生まれる前から一緒のお腹の中にいた腹違いの兄妹じゃないの」
生徒B「兄妹!? てか一緒のお腹の中にいたのに腹違いとか矛盾してんな」
生徒A「そこはオカンの別腹だから」
生徒B「別腹! それスイーツ食べるときの言い訳にするやつやん。まじで別腹なんて持ってる人間存在したん? てか思ったけどどっちが兄でどっちが妹?」
生徒A「私が兄だ。そしてお前はボクッ娘の妹な」
生徒B「前提ぜんぶ引っくり返してきた! あなたがボクのお兄ちゃん!? お兄ちゃんなの!?」
生徒A「そうだ、行くぞ妹よ。これからニャンチャコちゃんに会いに」
生徒B「なんで妹が、興味も無い兄貴の趣味に付き合わされなきゃならねーんだよ! てかまずニャンチャコちゃんって誰なのか説明不足! 適当な創作ネタにしてもそこを明確にしないと読者置いてけぼり感はんぱねえ!」
生徒A「もうこの時点でだいぶ置いてけぼりだけどな」
生徒B「唐突な鋭いツッコミ! 確かにそうだけどちゃんと最低限の設定は用意しとけよ」
生徒A「あー、あの、アイッドルッ……的な? というか、メジャーじゃなくて、マイナー……知る人ぞ知る……底辺……じゃなくて、その、地下……地下アイドル!」
生徒B「説明へたくそか。てか、コイツ1回『底辺』って言いおったぞ。それ絶対言っちゃいけないやつ」
生徒A「うっせーボケナスビ! さっさと行くぜ相棒!」
生徒B「そしていい加減俺はお前の先輩なのか妹なのかボクっ娘なのかボケナスビなのか相棒なのかそのへんハッキリしろ!」
※
――ライブ会場にて。
生徒A「アアッ……いよいよ握手会……緊張してきたっ……」
生徒B「てか、ライブ終わった感出してるけど俺らいま会場着いたばっかなんだけど。え? これはライブの前に握手会あるの? そういうタイプのライブ?」
スタッフ「それではこれより、ニャンチャコちゃんの登場です。みなさま、しっかり順番にお並びください」
生徒A「並んでますよ! 並んでますとも!」
生徒B「てか、客、俺らしかいなくない? 本当に底辺……」
生徒A「うるせぇ! 地下アイドルって言えよ! 侮辱してんのか! 訴えてやる!!」
生徒B「それに関してはお前も同罪だろ!」
ニャンチャコ「あらぁ、生徒Aさん! また会いに来てくれてありがとう!」
生徒A「ウワァ、ニャンチャコちゃん、本物だぁ! 会いたかったよぉ!」
生徒B「えっ。おまえ、生徒Aって、役名じゃなくてお前の名前やったん? マジで? じゃあ俺も生徒Bっていうのは……」
生徒A「ちょっと、後ろ、静かにしろ、ロビセロロドリゲス35世」
生徒B「ロビセロロドリゲス35世!? それが俺の名前!? 長っ!!」
生徒A「ごめんねー、気にしないでねニャンチャコちゃん。こいつ俺の舎弟だから」
ニャンチャコ「うふふ、いつも適当な設定口走って、面白い人!」
生徒B「ニャンチャコちゃん、何気にめっちゃ的確やん」
生徒A「ニャンチャコちゃーん、実はさぁ、俺、ニャンチャコちゃんに訊きたいことがあって……」
ニャンチャコ「えー、何?」
生徒B(ロビセロロドリゲス35世)「おい、いくらなんでもやめろよ、アイドルに唐突に質問するとか! 彼氏いるの? とか絶対NGやぞ! 摘まみ出されるからな!」
生徒A「ニャンチャコちゃんってさぁ、ウ〇チとかするの?」
ロビセロロドリゲス35世(以下、ロドリゲス35世)「めっちゃアカン質問ぶつけてるやん!! 最低か!! 摘まみ出されるでコイツ!!」
ニャンチャコ「えっとぉ……ど、どうかな……あ、あたし、アイドルだから……」
ロドリゲス35世(以下、ドリゲス世)「ニャンチャコちゃん、マトモに答えようとしてるやん! あの子、ぜったい良い子! でも答えなくていいから! キモオタの最高にキモい質問にマトモに答えなくていいから!」
生徒A「いいよ、答えなくて! ぜんぶ知ってるから! 食べたもの、ぜんぶ猫になるんだよね!? ぜんぶカワイイ猫になって、お腹からポーンって出てきちゃうんでしょ!」
ドリゲス世(以下、ゲス)「は?」
ニャンチャコ「え」
生徒A「ん?」
ゲス「いや、は??????? ちょっと何言ってるかわからない……って、ホラ、ニャンチャコちゃんも固まってるやん。さすがに意味わからんて。意味わからんすぎてドン引きしてるやん! てか、さっきから俺の呼び名ころころ変わるのなんなん!!!??? ゲスはやめて、ゲスは!!」
ニャンチャコ「あ、あはは……お、面白い…こと言うね……」
スタッフ「はい、時間ですので下がって! オラ下がれゲス!!」
ゲス「ほら摘まみ出されたやんけ! てか俺じゃねえ! いや、ゲスは俺やけれども、悪いのは俺じゃねえ! てか俺はまだ握手会もやってねぇ! てか生徒A、テメーは何ボケッとしとんねん!」
生徒A「ああ? ごめん、ヘルシェイク矢野のこと考えてた」
ゲス「くそが」
※
――トイレにて。
ニャンチャコ「うっ……はぁっ……んっ……くっ……いっ…ひゃぁあああああんっ……!!」
ポンっ。
猫「にゃー」
ニャンチャコ「はぁ……はぁ……よかった、出た……」
猫「にゃー」
ニャンチャコ「ははは……よし、よし……てか、何なの? なんでアイツ、あたしの体質のこと知ってたの? ちょっと、生かしておけないわね……(ピッ、ピッ)もしもし、あたし。さっき握手会きてたやつだけど。そうそう、あたしの秘密を口走ってたやつ。あいつ、消しといて。それじゃ(ピッ)」
猫「にゃー?」
ニャンチャコ「ははは……よしよし、あんたは何も知らなくていいんでしゅよー……てか、しんどいわ……どうして食べたもの、みんな猫になっちゃうのかね……あたしの体、マジでどうなってんの……?」
(つづく)
※本作は、「みんな猫になる」というタイトルで作品を作るというお題のために制作した書き下ろしシナリオ作品です。
(画像出典:Free Images - Pixabay)
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