採算『土返し』(新しい日本語について?)
こんな恥ずかしい思い込みをしていました。同じ意味で『奏功する』という言い回しもあるから、混同していたみたいです。『奏でるのに成功する』と『成功を奏でる』のでは少し意味が違いますよね…。反省。
新しい日本語が生まれている
そんなわたしが言えた義理ではないのですが、最近気になっている言葉があります。
それは『土返し』。
本来は庭や畑の土を掘り起こして肥えた土を表面に出す『天地返し』と同じ意味なのですが…ツイッターには、明らかに違う意味で使っている方がいらっしゃいます。
たとえば、『採算土返し』。採算を掘り起こして表に出す、と解釈するとまったく意味がわかりません。
今年2月、『警察沙汰』の勘違いの『警察駄々』がバズった時に聞いた言い回しです。『警察駄々』をTwitterで検索すると、「『警察駄々』とかw」などと誤解に言及する方が圧倒的に多いのですが『土返し』はどうも様子が違います。
どういうことかよくよく調べてみたところ、『度外視』という言葉を当てれば意味が通じることが明らかになりました。
ふだん本や活字に縁のない方が『どがいし』という音を聞いて意味をおぼろげに覚えて、脳内で『どがえし』という音に置き換えられた状態で漢字変換しようとしたところ、うまく変換できない。そこで、『どがえし』と打った時に候補に出てきた『土返し』という単語を当てはめた…いわゆる『耳コピ』の失敗事例のようです。『気をつけて』を『きょうつけて』、『店員さん』を『定員さん』と呼ぶような…。
『儲け土返し』『カロリー土返し』といった言い回しに違和感を覚えなくても、確かに人は生きていけます。さすがにツイートを晒すことはできないので、こうして口頭で例を話すしかできないのですが…。
更に最近では、『土返し』に新たな意味が生まれました。
『この一年の活動を土返し』『フォロワーを土返し』など…。
どうやら、土の天地返しをするように、ものごとを一旦リセットして掘り返して更地にする、といった意味のようです。
誤字の字面やニュアンスから新しい意味を感じ取って疑問を持たずに使う、という層が一定数生まれているようなのです。
原因は『若者の活字離れ』なのか?
最近の若者の活字離れがもたらした弊害…というわけでもなさそうです。
わたしが調べたところ、最初にツイッターで観測された『土返し』は2010年。人によっては10年以上『土返し』だと思って使っているのです。
これは若者だけの問題ではなく、もともと『度外視』を『土返し』と認識してしまう層がこの一億総SNS化世界と化した現代日本であぶり出されたと考えた方がよさそうです。
よく考えれば、統計上日本人の半分はIQ100未満です。みんながみんな正しい日本語を使うべし、というのはあくまで理想論です。
間違いを指摘されることを侮辱だと思う人も一定数います。よほど差し障りのない限り、『土返し』という言い回しを見ても脳内変換で『度外視』と補完するに留めておいたほうが、より穏やかな人間関係を保つことができるでしょう。
お願い
ただ、わたしが間違った日本語を使っていたら、お知らせいただけたら助かります。人前で『奏を功する』などと口にしたら、指摘されることの100倍恥ずかしいですから…