【GRゾルゲ血風録】信じて封印した女神エメリアちゃんがゾルゲループにドハマリしてデカいボルバルザークとしての人生を送るなんて…… ~エムラGRゾルゲ~

序章 「異界月」異聞

 イニストラードの異界月に封印されたエムラクールは、ある存在と邂逅していた。

「これはこれは、誰かと思えば女神エメリア様ではないか」
「その声は……ボーラス君!?」

 気さくに手を振るエルダードラゴンの姿を見たエムラクールは思わず目を(実際のところエムラクールの目ってどこにあるんだかわからないが)剥いた。

「え、貴方元気にアモンケットで陰謀巡らせてたはずよね」
「あぁ、どうやら時空が混乱しているようだな。実のところ我はあの後、なんやかんやあって貴様と同様の末路を辿り、ウギンの奴に封印されたのだ。しかし我もタダではやられん。見つけてしまったのだよ、逃げ込める先となる、ある世界をな」

 エムラクールはボーラスの話に最初は半信半疑だった。エムラクール程ではないにしろ、コジレックやウラモグといったエルドラージに匹敵する力を持ったクリーチャー、「ゼニス」がうようよと存在する世界があるという。
 しかもその世界は理がたまに崩壊し、別世界の存在がなだれ込んでくるとか来ないとか。

「如何かなエメリア。貴様ほどの存在、このまま異界月で腐らせるには惜しい。すでに我はその世界に足を踏み入れたが、なかなかに居心地がいいぞ。1度ドラゴンが絶滅したときは流石の我もびっくらこいたが」

 じゃあなんでお前生きてんだよ、という言葉をエムラクールは飲み込んだ。お前もドラゴンだから絶滅に巻き込まれたよなと問い詰めたかったが、そこはそれ、その世界のドラゴンとエルダードラゴンは身体の作りが違ったかなんかだと思うことにした。内臓の位置関係が常人と逆で秘孔を突かれなかったとかそういうやつだろうか。

「ただ、私が行くにしても、あの世界で上手くやっていけるか心配なのよねぇ」
「そこで我に考えがある。この紹介状を持ってある者を尋ねるが良い」

 ボーラスは1通の便箋を渡す。
 その便箋の宛先には「リヒャルト」という名があった。

 それからしばらくして、エムラクールはその世界──超獣世界に足を踏み入れていた。紹介状を手に、リヒャルトなる男の家を訪ねた。

 突然の来訪者に、リヒャルトはニッコリと応じた。

「いやー、ボーラスさんから話は聞いてますよ。貴方が風の女神エメリアことエムラクールさんですかぁ、お会いできて光栄です」

 リヒャルトと握手を交わすと、小間使いと思しきミノムシが「粗茶ですがどうぞまる」とお茶を持ってきた。一口啜り、エムラクールはリヒャルト側の顔ぶれを改めて見渡す。

 この家の主人であるリヒャルトに、長ドスを手にした明らかにカタギの存在ではない狼男、虫かごのような顔をしたカエル。彼らが側近だろうか。狼男はジン、カエルはケイジとそれぞれ名乗った。

「女神とは聞いてたが、こいつぁすげぇもんだ。ゼニスの中でも上位に食い込めるんじゃねぇか」
滅殺6にエクストラターンとはまた剛毅な……」

 ジンとケイジはそれぞれ感想を口にする。だが、とジンは頭を振った。

「悪いがウチのシマだとあんたを扱うことは難しいな。ケイジ、あんたに任せたいが」
「あぁ、僕もそれで構わない」

 エムラクールはジンとケイジの2人の間でかわされる会話に首を傾げる。そんな様子を見て、リヒャルトは微笑んだ。

「実はですねエムラクールさん。貴方と我々の間には奇妙な共通点があるのですよ」
「共通点? 失礼ながら、貴方がたはごく普通の一般クリーチャー、私は封印されたとは言え女神をやらせてもらっていた者よ。どこに違いが……」

 エルドラージとしての誇りを損ねられたと思い、やや強気に食って掛かるエムラクールの様子に、リヒャルトは「おっと」と手で静止する。

「気分を害されたのなら申し訳ない。私が言いたいのは、どちらも目的が近似しているということです」

 目的。エムラクールは思い出す。

「『我がエムラクール』、『全てはエムラクールとなる』……まさか、貴方達は」
「私のもう一つの名前をお教えしましょう」

 リヒャルトは名刺を差し出した。8コストパワー8000赤・青・緑のカラーを持ち、そしてその種族は「アンノウン」

「偽りの名──ゾルゲ。それが私の名です。掲げる命題は『全ては我らのもの』。おめでとう、エムラクールさん。我々と貴方は同志だ」

 リヒャルト──否、ゾルゲは再び握手を求めた。エムラクールはその姿に奇妙に魅せられていた。彼女は引き込まれるように握手に応じた。

 そう、そのうち全ては【紅蓮ゾルゲ】【GRゾルゲ】に収束する。ゾルゲを筆頭とする一派の大いなる野望に、新たなる同志が加わったのだった。

第1章 エムラクールに目をつけた理由

 謎のブラック・ボックス・パックで唐突に現れた超重量級クリーチャー、《引き裂かれし永劫、エムラクール》。ブラック・ボックス・パックシリーズとしては異例となった事前のスポイラー発表で告知されず、WHFでの先行販売時に初めて情報が出回ったカードである。

 コストは15と非常に重いが、飛行を持たないクリーチャーからのアンブロッカブル(加えてアンアタッカブル)能力、バトルゾーン・マナゾーン・シールドゾーンに対する滅殺6、召喚時に発生するエクストラターン獲得能力、そしてエターナル・Ωと、コストに見合うだけの凄まじいポテンシャルを誇る。

 そして、私はこのカードを見た瞬間に、すぐさま【GRゾルゲ】への採用を検討し始めた。

 理由は2つある。

 1つ目、デュエル・マスターズの歴史上初めて、条件・代償なしに「手出ししただけ」でエクストラターンを獲得できること。
 2つ目は、ことGRゾルゲにおいては極めて有用な「サブプラン達成のため場に残るフィニッシャー」であることだ。

 1つずつ見ていこう。

 これまでのエクストラターン獲得カードは、《無双竜機ボルバルザーク》や《無双と竜機の伝説》のような、「出しただけでエクストラターンを獲得できるが、そのエクストラターンには何らかの制約が伴う」か、《禁断機関 VV-8》や《勝利宣言 鬼丸「覇」》のような「エクストラターン獲得のために何らかの条件や制約が存在する」カードがほとんどであった。
 故に、ただ手出ししただけでエクストラターンが無条件かつノーリスクで付加されるカードはエムラクールが初めてなのだ。

 2つ目のサブプラン達成のために場に残るフィニッシャーであることもまた、非常に強力だ。表側限定とは言え、相手のマナゾーンやクリーチャーを6枚まで葬り去ることができる。例えば、事前に相手のクリーチャーを枯らせば6枚のランデスを果たし、反撃を封じた上でリーサルに持ち込める。

 元となるMTGでは、エムラクールを出すためにコストを踏み倒したり、大量のマナを生み出したりすることが多かった。《予想外の結果》でエムラクールを出したりするデッキの動画をご覧になった読者の方も多いと思う。

 デュエマにおいては、15マナという大量のマナを用意することはある意味、MTGよりも容易に行えるはずだ。《獅子王の遺跡》や《龍仙ロマネスク》などの大量ブーストが存在するためである。

 そこで、今回エムラクールには2つの役割を期待することにした。
 1つは、「出すことでエクストラターンを獲得し、安全にコンボを起爆する」ためのコンボ始動要員としての役割。
 もう1つは、「GRゾルゲループの勝利条件を充足できなかった場合のサブプランとしてのフィニッシャー」である。

 実は、この記事の執筆以前、私は1つのデッキを作成している。本来ならばそのデッキの紹介をしようと考えていたが、何分多忙で書く時間がなかったので、気が向いたら説明しようと思う。何しろ、あの「したい会」に所属しているヨーカン選手の【赤緑NEXT】を蹴散らし、当のヨーカン選手が「覚えてろよォォォォォ!!」と絶叫しながらGP9thの会場を後にする伝説を残したいわくつきのデッキである。

 そのデッキは、GRゾルゲ以外の勝ち筋であるビートダウンもこなせるデッキであった。そして、そのデッキを回していることで、メインプランであるゾルゲループに固執するのではなく、状況に応じていくつかの勝利プランから最適なものを探せるデッキの方が勝利に貢献しやすく、何より自分にとって使いやすいことがわかった。
 ちなみに、私の中では「新作ゾルゲデッキに対するいいツッコミをしてくれる」という認識になりつつあるパタ@いっせー選手のコメントを先行してネタばらしすると、
「これカレーとラーメンを同時に食おうとしてるみたいなデッキだよ! 別々に食いなさいよ! 胃もたれするわ!」
……とのことである。まぁ、このコメントでどういうデッキか読者諸氏には察していただけるものだろう。

 さて、話を戻そう。
 私のGRゾルゲ構築理論としては以下の3つが挙げられる。

 1.勝ち筋は複数選択できる
 ライブラリアウトはGRゾルゲの根幹だが、例えば必要パーツが揃わない、相手が勝ちそうだと判断した場合にビートダウンへスムーズに移行する必要がある。【紅蓮ゾルゲ】の場合は、《ヴォルグ・サンダー》のライブラリアウトが決まらない場合に《唯我独尊ガイアール・オレドラゴン》のV覚醒リンクを狙い、ビートダウンで勝利するというものだった。
 今回の場合は、エムラクールによる制圧だ。場やマナを徹底的に荒らし尽くして勝負を決める、さらに除去しようとすればエターナル・Ωで手札に帰るため、次のターンでエクストラターン確保が可能となる。

 2.相手にターンを渡すことなく、致死コンボに必要な複数枚のパーツを場に揃えることができる
 例えば、《偽りの名 ゾルゲ》と《イッコダス・ケイジ》の2枚を場に揃えるためには、理論上13マナが必要となる。これを満たすためには、迅速かつ大量のマナブーストはもちろんのこと、1ターンでコンボ成立に必要なパーツをすべて出し切ることが肝要だ。
 よくやる手としては《ワイルド・サファリ・チャンネル》による多色マナを2マナ分として扱う手段だ。さらにマナからも召喚可能となるので、噛み合わせはいい。最近の環境では《Dの牢閣 メメント守神宮》が制限になったため、D2フィールドが破壊される心配も少ない。

 3.コンセプトカード以外はすべて相手の妨害・防御やコンセプトのサポートに徹する
 基本中の基本だが、デッキコンセプトを確定した後は、他のカードはすべて防御札やサポートカードとすることが理想となる。妨害札は当時の環境を見ながら構築していく必要があるが、昨今の環境では《テック団の波壊Go!》は速攻系統のデッキにかなり通りが良い印象であるし、少数で殴ってくるデッキに対しては《謎帥の艦隊》も刺さりやすいだろう。《奇天烈 シャッフ》や《今日のラッキーナンバー!》の要求枚数を上げるために、除去札のコストも散らすのが望ましい。というか、以前【ゾルバルブルー】を使用した際にも、《今日のラッキーナンバー!》を打った相手が、「これとりあえずナンバー撃ったけど何宣言すりゃいいんだ……」と頭を抱える事態が発生する。相手の宣言に「そっかー、そっちかー」と愉悦に浸れる
 さらに、《ドンドン水撒くナウ》ならば、エムラクールを指定することで《暴走龍 5000GT》も容易にバウンスできてしまう。
 サポートカードとしては、ランプを支えるための《フェアリー・ミラクル》や《セブンス・タワー》、《獅子王の遺跡》や、キーパーツを集めるための《天災 デドダム》も候補だろう。GRクリーチャーもドローソースとなりうる《天啓 CX-20》などが検討できる。

 コンセプトを決めた後は、デッキ構築だ。
 そんなわけで、有料部分では暫定レシピを提示しようと思う。興味のある方はこれを元にさらに練り込んでみてほしい。

第2章 デッキレシピと基本的なデッキの回し方

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