【GRゾルゲ血風録】 DMGP8th顛末記 ~ゾルバルブルーGT-R~


Prologue 【紅蓮ゾルゲ】は死んだ

 1st Seasonにあたるところの「紅蓮ゾルゲ回顧録」では、私がこれまでに組んできた紅蓮ゾルゲを構築する上での思考の流れや、実際にプレイした状況をカバレージ風味でお届けしていた。

 だが、時に2019年3月30日。ついに私は【紅蓮ゾルゲ】というアーキタイプの研究を打ち切らざるを得なくなった

 それこそが、《イッコダス・ケイジ/種デスティニー》および各種GR召喚という、上位互換の登場である。まさか、こんな形で【紅蓮ゾルゲ】がとどめを刺されるとは思わなかった。だが、同時に、この新カードならば、今まで以上に面白いことができるのではないかと、そう思わせるだけのポテンシャルも感じている。

 そこで私は、新たな形態のゾルゲループのポテンシャルを測るべく、前回の【ゾルバルブルー】をGR召喚型に組み替え、来る2019年4月14日、幕張で行われるDMGP8th・殿堂レギュレーション大会にて真価を見定めようと決めたのだった。

 そして、運命の2019年4月14日。私は、会場で驚愕することになる。

第1章 徹底比較、【紅蓮ゾルゲ】と【GRゾルゲ】

 まず、読者諸兄に対して、なぜ私がこれを「上位互換」と断ずるのか、それを【紅蓮ゾルゲ】との比較という観点で解説したい。というのも、これまでループ自体の解説はネット上に大量に公開されているのだが、紅蓮ゾルゲと比較した記事というのがあまり見当たらないのだ。もちろん、デュエル・マスターズというゲームをしっかりと理解しているプレイヤー諸氏においては自明のことだとは思う。しかし、だからこそ改めて整理をしておく必要がある。

 ここでは、GR召喚を使用したゾルゲループを使用するデッキを総称して【GRゾルゲ】と呼称したい。アーキタイプの名称はそのうち固まるだろうが、この記事を書いている現時点ではこう呼称させていただく。読者諸兄においてはこの点についてご了承いただきたい。

 そもそも、【GRゾルゲ】とはどういったデッキなのか。すでに情報も多数出回っているので、今更解説は不要かとも思うが、おさらいの意味も兼ねて解説していこう。
 【GRゾルゲ】の肝は、超天篇にて新たに登場した「GR召喚」を最大限に活かしたループだ。《偽りの名 ゾルゲ》のクリーチャーが登場したときバトルを行う効果を使用し、《イッコダス・ケイジ》や《ガチャパルト初号機》等の「バトルに勝ったときGR召喚する」クリーチャーの効果を発揮させる。最初に場のクリーチャーと《イッコダス・ケイジ》や《ガチャパルト初号機》をぶつけた後は、GR召喚されたGRクリーチャーとこれらのGR召喚を行うクリーチャーをバトルさせる。バトルに勝つと、GRゾーンの下に戻ったGRゾーンのクリーチャーの代わりに、次のGRクリーチャーがGR召喚される。このように、GRクリーチャーがバトル勝利時にGR召喚を行うクリーチャーのパワーを下回る限り、半永久的にGR召喚をし続けることが可能となる。
 このようにGR召喚を行い続けることによって、GRクリーチャーが出た時の効果と場を離れたとき・破壊されたときの効果のストックを貯め続ける。代表的なところでは、《ツタンメカーネン》の互いにドローする効果を使用したライブラリアウトだろうか。

 さて、【GRゾルゲ】の利点。それは、ループに使用するパーツの軽量化が第1に挙げられる。【紅蓮ゾルゲ】では、《紅蓮の怒 鬼流院 刃》を出すためには最低でも5マナが必要だった。火の7コストのサイキック・クリーチャーを出すための超次元呪文は総じて5マナである。また、これに加えて自前でループを完結させるためには、《紅蓮の怒 鬼流院 刃》と《遊びだよ!切札一家なう》にぶつけるための軽量クリーチャーを2体用意するか、《紅蓮の怒 鬼流院 刃》のパワーそのものを上昇させる手段を用意する必要があった。この場合、総合する要求コストはさらに上昇する。

 一方、【GRゾルゲ】で採用される候補の《イッコダス・ケイジ》は4コストであり、これにぶつけるクリーチャーも1枚のみでOKだ。《イッコダス・ケイジ》自身のループは、極論すれば《イッコダス・ケイジ》の効果でGR召喚→GR召喚されたGRクリーチャーを《イッコダス・ケイジ》にぶつける、という行為の繰り返しである。つまり、コンボの起爆剤となるクリーチャーは1枚のみでよい。もちろん、同じことは《激流アパッチ・リザード》にも言えるが、こちらは7コストと比較的重量級である。《激流アパッチ・リザード》を出すだけのコストで、《イッコダス・ケイジ》を出す+3マナまで要求される他の行動を取れる、となれば、マナ次第では《イッコダス・ケイジ》を出しつつ起点のクリーチャーを用意する、ということもできる。ややコストの重い《ガチャパルト初号機》も6コストであり、《激流アパッチ・リザード》よりは軽い。1ターン早めに出すことが可能なのは大きいところだ。

 また、それ以外の利点として、《イッコダス・ケイジ》自身がループの核以上の役目を果たせることも大きい。序盤の小型システムクリーチャーや、踏み倒しメタに対して、マッハファイターで上から潰すこともできる。加えて、《イッコダス・ケイジ》はツインパクトカードだ。呪文面の《種デスティニー》は序盤に登場した一番隊サイクルや、【赤白轟轟轟】などに採用される《音奏 プーンギ》を早期に対処できる。ループを扱うデッキにおいて、ループパーツ以外の役割を果たすことができるカードは極めて貴重であり、重要である。これは《激流アパッチ・リザード》や《紅蓮の怒 鬼流院 刃》には難しい芸当だ。《ガチャパルト初号機》も、マッハファイターを持っている上、すでに自分のGRクリーチャーが存在すればパンプアップも狙える。

 他にも、このループは相手の《悠久を統べる者 フォーエバー・プリンセス》があったとしてもトドメを刺すことが可能だ。複数枚採用していても関係がない。これについて、詳細は後述するが、これも《ヴォルグ・サンダー》では実現が難しかった。「ループの完了が不確定な事象に左右される場合、ループの発生源であるプレイヤーが望む結果まで処理を省略できる」というルールによって、相手のデッキ内に眠る悠久が1枚ならば対処が容易となったが、そうではない場合、一度相手にターンを返すかサブプランへ移行する必要があった。《イッコダス・ケイジ》を使用するならばその心配は無用だ。【GRゾルゲ】はきちんと悠久に対処が可能なデッキである。

 さらに、GR召喚が「コストを払ったことにして召喚する」という行動であることが、これまでのサイキック・クリーチャーやドラグハート、さらにはグラビティ・ゼロや無月の門とも大きく異なる点だ。コストを払った召喚である以上、ほぼマナを使用して召喚している扱いに等しいため、いわゆるコスト踏み倒しメタや、召喚以外の方法でバトルゾーンに出す行為へのメタに滅法強い。これを止められるのは、今や殿堂入りしてしまったが7コスト以下の召喚を封じる《時の法皇 ミラダンテXII》や、「マナをタップせずに場に出したとき」というより具体的な行動に反応する《百発人形マグナム》および《早撃人形マグナム》など、かなり限定される。【紅蓮ゾルゲ】のループの屋台骨であるサイキック・クリーチャーは踏み倒しメタに対してほぼほぼ無力であり、こうした制約を受けることがないのは心強い。

 このように、ループの安定性や個々のパーツの応用力、アドリブの効きやすさなどを考慮するに、【紅蓮ゾルゲ】以上のデッキパワーであることは疑いようがない。「GR召喚に対するメタカードが作成され、それが環境で流行する」という未来に期待しない限り、【紅蓮ゾルゲ】は【GRゾルゲ】に淘汰されるだろう、と当時の私は考えていた。まさかその後しばらくして《ヴォルグ・サンダー》がプレミアム殿堂に格上げされ、構築不能になるという形でトドメを刺されるとは思わなかったが……。

第2章 【GRゾルゲ】へのコンバート

 上記の状況を整理して、私は1st Season最終章で組んできた【ゾルバルブルー】を【GRゾルゲ】へ組み直すことを余儀なくされた。だが、このコンバートは実に容易であった。【GRゾルゲ】における必須パーツは極論すれば《偽りの名 ゾルゲ》と《イッコダス・ケイジ/魂デスティニー》のみであったからだ。

 今回、なぜ《ガチャパルト初号機》ではなく《イッコダス・ケイジ/魂デスティニー》を採用するに至ったのか。それは、ひとえにツインパクトであることが大きかったからに他ならない。

 呪文面である《魂デスティニー》は1マナであり、相手のバトルゾーンに存在するコスト2以下のカードを墓地に送る。1マナというのが肝で、《音奏 プーンギ》が1体立っていても僅か2マナで除去ができる。他にも、シノビを構えておいた状態で【レッドゾーン】等で採用される《伝説の禁断 ドキンダムX》の禁断解放をあえてさせておいて、殴ってきたところを《怒流牙 佐助の超人》からの《斬隠双頭龍バイケン》でバウンスさせて特殊敗北効果を発動させる、禁断コアを直接墓地に送って《ドルマゲドンX》の敗北回避効果を1つ減らす、サイキック・セルを狙ってサイキック・スーパー・クリーチャーを解体する、など、応用も容易だ。

 しかも、この《イッコダス・ケイジ》は、双極篇第4弾より登場した多色ツインパクトである。多色ツインパクトの強みを幾つか列挙すると、マナゾーンでは多色マナとしてどちらかの色を出せることや、多色マナ武装の頭数に入れられること、カードとして使用する場合は単色として色を節約しながら使用できることだろうか。その分マナの使用には気を使うためプレイングには細心の注意が必要になってくるだろう。

 さて、続いてGRゾーンを含めたループギミックを構築する必要がある。これはメジャーな《ツタンメカーネン》《バクシュ 丙-二式》《予知 TE-20》を使用した形にする。

 ループの構築にはメインデッキに《悠久を統べるもの フォーエバー・プリンセス》を採用する必要がある。今回、《悠久を統べるもの フォーエバー・プリンセス》としたのは、色が赤緑と多色であり序盤にマナに置きやすいこと、場に置くことで踏み倒しメタとして機能すること、《悠久を統べるもの フォーエバー・プリンセス》のデッキ回復効果が置換効果であることにある。相手の処理中に割り込んで処理できる置換効果のメリットを見逃すことは出来ないだろう。これは、同様の効果を持つ《ワカメチャ》にはない利点だ。

 このようにして、基本的なループを構築した後は、【ゾルバルブルー】からスライドできるカードの検討を始める。

 まず、デッキの核である《偽りの名 ゾルゲ》、そして前回のコンセプトである「踏み倒し」と「エクストラターン」を得るために重要な《最強虫 ナゾまる》《無双と竜機の伝説》は必要不可欠だ。これらはそのまま新たな【GRゾルゲ】にも採用できる。

 また、序盤に使用した《イッコダス・ケイジ/種デスティニー》が回収可能という強みから、《時の秘術師 ミラクルスター》や、マナ回収として非常に優秀な《黒豆だんしゃく/白米男しゃく》も続投。同時に、受けとしては鉄板のシノビたち、《怒流牙 佐助の超人》《斬隠蒼頭龍バイケン》《怒流牙 サイゾウミスト》も引き続き採用する。特に、《怒流牙 佐助の超人》は墓地に落ちたパーツをマナに置き直すことで、《白米男しゃく》による回収を可能とする。一度出して相手の攻撃をチャンプブロックした《時の秘術師 ミラクルスター》を墓地からマナに置き直して《最強虫 ナゾまる》で踏み倒すもよし、途中で別の目的で出したはいいものの焼かれてしまった《最強虫 ナゾまる》を再度マナに置いて本命の《偽りの名 ゾルゲ》の踏み倒しに備えるもよし。呪文回収は《時の秘術師 ミラクルスター》で賄い、クリーチャー回収を《怒流牙 佐助の超人》でカバーするという流れがこれで出来てしまう。

 長々と記述はしたが、ここまではこれまでの紅蓮ゾルゲとそこまで変わっていない。マナブーストを繰り返しながら適宜シノビで相手の攻撃を捌きつつ、準備が整い次第《無双と竜機の伝説》+《最強虫 ナゾまる》でマナから踏み倒したいクリーチャーを状況に応じて引っ張り出す。だが、【GRゾルゲ】に変えるに当たって、そろそろ不要だろうと判断して抜いたものもある。

 それが、《龍装艦 ゴクガ・ロイザー》および《焦土と開拓の天変》である。現在の環境でランデスが刺さることが減ったためだ。【ジョーカーズ】や【赤白轟轟轟】を考えるなら、このパーツを相手からの攻撃を受けるスロットに変えてしまったほうが良い。

 そこで、多色が比較的多いことに着目して《謎帥の艦隊》を採用する。相手のバウンスだけでなく、場に残ったシノビを手札に戻して再利用することもできるため、状況に応じて様々な応用が効く。

 ここまで読んでくださった読者諸兄は気づいたと思うが、私が採用するカードはどれも、複数の役割を果たすことを期待して採用されたものが多い。
 私のような若輩者がデッキビルディングに関して持論を述べるのもおこがましい上、プレイヤー諸兄には何を今更、という論ではあるが、デッキには「全てのパーツに複数の役割を持たせる」ことが重要となる。例えば、多色カードはそれ自体がマナゾーンに置いた時の色基盤という役割と、そのカード自体が持つ役割の2つがある。1枚が2つの仕事をしているのだ。もちろん、この役割は多ければ多いほど良い。

 《焦土と開拓の天変》が何故今回抜けたのか。それは、5マナ使用した際のランデス+マナブーストが有効打となりうる局面が少ないと感じたからだ。マナアドバンテージは+2となるし、相手の色基盤を除去して相手の足を引っ張ることも容易だが、結局の所、少ないマナで動けてしまうパターンや少ない色基盤に頼るパターンが多い。私が住む浜松は5cが多い環境のため、こうしたランデス戦略も有効ではあるのだが、これから挑むGP8thは各地の環境がごった煮状態、しかも地雷デッキを手に息を潜めるデッキビルダーたちも大挙して押し寄せる地雷原であると言える以上、地元基準で考えるわけにも行かない。故に、相手の足を引っ張る役割が十全に果たせなくなると危惧して不採用に至った。同時に、ゴクガ・ロイザーもまた、何回も打ちたい呪文が少なくなったことや、単色であることのデメリットもあり、デッキでの役目が少なくなったことで不採用となった。このように、不採用となるカードは「構築が変わったことで役割が減少した」ことで不採用となる。

 同じことがシノビにも言えるではないか、シノビはビートダウンに対する回答以外の仕事がない、というご意見もあるだろう。しかし、シノビ――とりわけ《怒流牙 佐助の超人》は先述したとおり、クリーチャーをマナゾーンに置くことや、《斬隠蒼頭龍バイケン》とのパッケージで非常に重要な役割がある。相手のマッハファイターやアンタップキラーから《最強虫 ナゾまる》を守ることだってできるのだ。しかもこのとき、墓地に踏み倒したいクリーチャーが落ちていれば、それをマナゾーンに送り込み、返ってきたターンに《最強虫 ナゾまる》で踏み倒すことだってできる。かなり器用な動きが出来てしまうのだ。《斬隠蒼頭龍バイケン》単体にしても、場に残しておけば、後続のニンジャ・ストライクに誘発する1ドローを利用してコンボパーツを集めたり、殴ってきたクリーチャーに殴り返しをしつつ《時の秘術師 ミラクルスター》に革命チェンジして手札を確保することもできる。

 では基幹とも言える《無双と竜機の伝説》は何故採用され続けているのか? 《龍装艦 ゴクガ・ロイザー》が抜けた今、これこそまさに「役割が減少した」カードではないだろうか。そう思う方もいるだろう。
 だが、エクストラターンを単体で得るという行動は見た目以上に強烈だ。《アイアン・マンハッタン》のような「ターン終了時まで」という時間制限のある効果を乗り越えて行動ができるのはすでに語ったとおりだが、「クリーチャーは致死打点が揃っていて、ターンを渡すと相手の勝利条件が満たされてしまう」状態であればターンを渡すことなく比較的安全にビートダウンを行うこともできる。何より、アンタップフェイズ・ドローフェイズをもう一度迎えられるのは大きい。デュエルマスターズというゲームにおいて1ターンとはそれだけ重いものなのだ。
 さらに、《無双と竜機の伝説》はパワー6000のクリーチャーを全て破壊する効果すら持っている。《勝利のリュウセイ・カイザー》や《龍装艦 チェンジザ》《アクア・アタック〈BAGOOON・パンツァー〉》などを始末できるのだ。これらのクリーチャーへの除去を打ちながらエクストラターンを得られる点は特筆に値するだろう。

 だが、相手のビートダウンに対する回答がもっと欲しくなる。実のところ、コントロール相手には手数が減ったところで雑に《最強虫 ナゾまる》を出し入れしているといつの間にかコンボパーツが場に揃っていることが、とりわけこのデッキでは多い。だが、明確な回答が得られなかった。

 仮想敵となる【ジョーカーズ】や【赤白轟轟轟】のレシピや動きを見て、手持ちのカードで対応可能なものを探している中で、《青寂の精霊龍 カーネル》と《百族の長 プチョヘンザ》という回答に至ったのはGPの3日前というタイミングだった。《獅子王の遺跡》などを採用してマナが伸びやすくなったことで、【赤白轟轟轟】や【ジョーカーズ】、【黒緑デッドゾーン】などは《百族の長 プチョヘンザ》のタップインを防ぎ切ることができないとわかったのだ。加えてカーネルも最大2体のアタックを止められる他、白青のカラーを持つドラゴンであるから、プチョヘンザやミラクルスターへの革命チェンジも可能だ。プチョヘンザは、《悠久を統べるもの フォーエバー・プリンセス》からも革命チェンジができるので、状況に応じて革命チェンジを狙っていきたい。

 全てのレシピが整い、ループの証明方法も確立した。私は大会会場に向かう新幹線の中で、レシピを見ながら動きのおさらいをしていた。

第3章 新生、【ゾルバルブルー GT-R】

 こうして完成した【ゾルバルブルー】に、私は競技シーンでの活躍を願い、かの名車「スカイラインGT-R」にあやかって【ゾルバルブルー GT-R】と名付けた。

 GT-R、スカイラインのGTレーシング仕様としてこのアルファベット3文字が冠せられている。レースでの使用を想定した仕様、すなわち実戦仕様となるわけだ。

 そのレシピは以下のようなものだ。

2 x 偽りの名 ゾルゲ
3 x 黒豆だんしゃく/白米男しゃく
2 x 無双と竜機の伝説
3 x 怒流牙 サイゾウミスト
3 x 怒流牙 佐助の超人
3 x 斬隠蒼頭龍バイケン
2 x 時の秘術師 ミラクルスター
2 x 謎帥の艦隊
3 x 獅子王の遺跡
3 x イッコダス・ケイジ/種デスティニー
2 x 最強虫 ナゾまる
2 x 悠久を統べる者 フォーエバー・プリンセス
3 x 青寂の精霊龍 カーネル
2 x 百族の長 プチョヘンザ
2 x フェアリー・シャワー
3 x フェアリー・ライフ

2 x ツタンメカーネン
2 x 補充 CL-20
1 x 防護の意志 ランジェス
1 x バクシュ 丙-二式
2 x 感応 TT-20
2 x 予知 TE-20
2 x 硬直 TL-20

 まるでデッキの迷走を物語るかのようなレシピではあるが、ひとまず形にはなった。欲を言えば、誰かに相談のひとつもしておきたかったが……。

 このデッキの肝はこうだ。

 《最強虫 ナゾまる》がマナに置かれるまではマナブーストを優先し、《最強虫 ナゾまる》がマナに置かれたら《時の秘術師 ミラクルスター》などを使用して墓地の呪文を回収しつつ、《無双と竜機の伝説》が手札に来るか、相手が1ターンでナゾまるを処理できない状態まで待つ。然る後に、《偽りの名 ゾルゲ》の踏み倒しを行い、《悠久を統べるもの フォーエバー・プリンセス》を手札に回収しながら《イッコダス・ケイジ》および種クリーチャーの召喚を行ってループを起爆させる。

 ループ自体の解説はすでに数多く行われているので割愛するが、《偽りの名 ゾルゲ》のバトル効果と《イッコダス・ケイジ》のバトルに勝った時の効果を組み合わせて、GRクリーチャーのCIP効果・PIG効果を延々とストックさせるのが第一段階になる。その後、ストックを解決していくのだが、私はこのようにストックを解決することを考えた。

 パターンA:相手のデッキ枚数が自分より少ない場合
 この場合は《ツタンメカーネン》のストックのみを解決する。相手のデッキ枚数分を宣言して相手の山札を枯らせばこちらの勝ちだ。

 パターンB-1:相手のデッキ枚数が自分より多い場合
 この場合は《ツタンメカーネン》のストックをこちらの山札の枚数が残り1枚になるまで解決した後、《バクシュ 丙-二式》の効果を解決し、《悠久を統べるもの フォーエバー・プリンセス》を手札から捨てて山札を回復する。この結果、こちらの山札の総量が多くなれば、後は相手の山札が0枚になるまで再度《ツタンメカーネン》のストックを処理していく。
 バクシュの効果を解決する際に、相手も《悠久を統べるもの フォーエバー・プリンセス》を捨てた場合、パターンB-2に移行する。

 パターンB-2:相手が《バクシュ 丙-二式》の効果を解決したとき、《悠久を統べるもの フォーエバー・プリンセス》を捨てた
 この場合、最初に《悠久を統べるもの フォーエバー・プリンセス》を捨てて山札を回復・シャッフルした状態で、《予知 TE-20》のストックを1回解決する。デッキトップが悠久ならばそのまま固定悠久以外ならばデッキボトムに送る
 こうすると、悠久は確実にデッキボトム以外の場所に存在することになるので、山札が切れることがない。そして、2回目に山札を限界まで引き、再度悠久を捨てると、墓地に何も落ちていない状態のため悠久のみがデッキに戻る。つまり、デッキに「悠久とそれ以外のカード」の2枚のみが存在する状態になる。
 この状態で、こちらは悠久をトップに置く→悠久を引く→悠久を捨ててデッキに戻す→悠久をトップに置く……という行為を繰り返すことになる。一方、相手も悠久を捨てることができるとはいえ、悠久がデッキボトムに落ちるケースもいつかは訪れる。「こちらが望む結果まで省略できる」のだ。
 これを利用して、相手の悠久がデッキボトムに置かれる状況まで省略する。要は、紅蓮ゾルゲを使用している際に発生しうる「《ヴォルグ・サンダー》のcip効果を何度も解決できる状態で悠久が落ちた場合」と同じ処理だ。悠久が複数枚あったとしても、その全てがボトムに行く状況まで省略すればよい。こちらは延々と同じ行動を繰り返すことができるが、相手が悠久をデッキトップに自分の意志で置くことが出来ない限り、相手は悠久がボトムに置かれることを防げないのだ。
 後は、現在見えている悠久を含めた相手のデッキの総数分バクシュを解決し、最後の解決で悠久を落とすことで、相手のデッキ枚数を上回るようにする。そのうえで《ツタンメカーネン》の効果を相手のデッキ枚数分解決して勝ちとなる。

 《予知 TE-20》を使用してデッキボトムに《悠久を統べるもの フォーエバー・プリンセス》が存在する状況を回避するというテクニックは、パタ@いっせー氏も後に指摘していたが、コンボ発見当時、不思議なほど情報が出回っていなかった。ただ、発表されたカードプールから、容易くこの発想にたどり着いたプレイヤーも多いだろう。

 実はこのとき、《ロッキーロック》も何かに使えるか、という実感はあったが、本番までの時間が足りなかったことで今回は一考するにとどめ、採用は見送ったのだった。今にして思えば、無理矢理にでも採用する価値はあったと思われる。

第4章 衝撃のDMGP8th

 DMGP8th当日、前日まで練り続けた【ゾルバルブルーGT-R】を手に、私は幕張メッセに足を運んでいた。

 レシピを何度も見返しながら、想定される相手に対する回答を反芻する。しかし、やはりそこは2000人以上ものプレイヤーが集うDMGP。実際に私が戦った相手は、想定しえないアーキタイプのオンパレードだったのだ。

 Round 1 vs【5cキューブ】

 初戦は前日も参加していたという選手。超次元ゾーンを確認し、おそらくビッグマナ系統のアーキタイプかと当たりをつける。

 互いにマナブーストを行うが、4ターン目に放たれた《ミステリー・キューブ》が呼び出したのは《偽りの王 ヴィルヘルム》。こちらのマナが吹き飛ばされる。立て直しを図るべくマナを貯め直すが、手札からマッドネスが切れたタイミングを見計らって《ニコル・ボーラス》が手札をもぎ取っていく。どうにかコンボパーツこそ揃えて状況を整えたものの、先に仕掛けた相手の勢いを止めることは出来なかった。

 試合終了後の感想戦では、やはり《ミステリー・キューブ》で《偽りの王 ヴィルヘルム》がめくれたことが全ての勝敗を分けた、という意見で一致した。他のカードだった場合を想定したが、結局の所こちらのドローカードの状況から、こちらがすんなりとループにたどり着いていたのだ。とはいえ、仮想的に【5cキューブ】を想定しきれていなかったのはこちらの落ち度だ。試合後に何人かの顔見知りの選手と会話する機会があったが、どうも今日は5cキューブを使用する選手がそこそこいたようなのだ。
 考えてみれば当然の話だ。前日のタイミングで参加者に配布されたのがプロモ版《ミステリー・キューブ》。当然、このカードを使用したいと考える選手も多いことだろう。ビートダウンを仕掛ける相手に対しても、それなりに強気の姿勢でプレイできるのも大きい。

 読み違えたか、と私は表情を曇らせたが、気を取り直して2戦目のマッチングを待つのだった。

 Round2 vs【ステロイドジャックポット】

 超次元には赤のドラグハートがずらり。おそらく【モルトNEXT】だろうと考える。一方で、《FORBIDDEN STAR ~世界最後の日~》の姿は無い。

 案の定、ターンを重ねるごとにマナゾーンには赤のドラゴンが続々と置かれていく。一こちらも負けじと《白米男しゃく》、《獅子王の遺跡》を続けざまにキャスト、マナを8まで伸ばす。

 ここで《龍秘陣 ジャックポット・エントリー》。流石にこれは驚きを隠せなかった。マナに置かれた形跡もなく、赤緑というデッキカラーから使い回すものでもないだろうと思いこんでいたのだ。しかし、出てきたのは《龍の極限 ドギラゴールデン》。マナ送りにされるクリーチャーはなく、相手もそのままビートダウンを仕掛けてくる。こちらも手札が欲しいタイミングだったのでまずはこれを受け、シールド3枚を手札に加える。

 続く自ターンで9マナに到達。《最強虫 ナゾまる》《偽りの名 ゾルゲ》がマナに、《無双と竜機の伝説》《イッコダス・ケイジ》《悠久を統べるもの フォーエバー・プリンセス》が手札にあることを確認すると、《無双と竜機の伝説》をキャスト、マナから《最強虫 ナゾまる》を召喚。エクストラターンを得た状態でナゾまるの効果により、自身と入れ替わる形で《偽りの名 ゾルゲ》をバトルゾーンに出す。そのまま一気に《イッコダス・ケイジ》《最強虫 ナゾまる》を召喚し、ゾルゲの効果でイッコダスにナゾまるをぶつけてコンボを起動。相手も悠久を持っており、《バクシュ 丙-二号》のハンデス効果で互いに《悠久を統べるもの フォーエバー・プリンセス》を捨てた。近くでこの試合の様子を見ていたジャッジに立ち会ってもらい、ループの証明をした上でパターンB-2のループ省略を認めてもらった上でコンボを完遂し勝利。

 自分も認定ジャッジ資格を持っており、ループの省略の理屈を説明することは難しくはなかったのだが、今の自分は選手という立場である以上、選手という立場からルール説明をするのも信用度は高くない。相手の選手はそこまで大会経験がなかったということもあり、今回はジャッジを呼んで対応してもらった。細かいルールで不安があるときはジャッジをすぐに呼んで、状況をきちんと説明した上で判断を仰ぐことは重要である。特に、今回新たにカードプールに加わったカードを使用する場合はなおさらである。

 Interval

 ここで一旦インターバルを挟む。顔見知りのプレイヤーに挨拶したり、試合模様を聞いてみたり、と会話を楽しんでいたのだが、その中に私と遭遇したプレイヤーの一人、《天雷王機ジョバンニX世》や《魔龍バベルギヌス》を殿堂に導いた男、パタ@いっせー氏がいたのだ。

 彼が使用するデッキは奇しくも、私と同じ【GRゾルゲ】。彼のような一流デッキビルダーが自分と同じアーキタイプを研究し、GPに持ち込んでいたという事実が、私を勇気づけた。この選択は間違っていない、このアーキタイプにはやはり、デッキビルダーを惹きつけるだけのポテンシャルを秘めていたのだ、と。

 話を聞く限りでは、パタ氏が使用するデッキはほぼほぼ私と同じく《無双と竜機の伝説》を使用するタイプだったようだ。ただ、多色に寄せた形になっており、私が使用する《最強虫 ナゾまる》型ではなく、どうも《大革命のD ワイルド・サファリ・チャンネル》を使用するタイプらしい。

 話は少し変わるが、ここでパタ氏が使用する《大革命のD ワイルド・サファリ・チャンネル》型と私の《最強虫 ナゾまる》型について、それぞれのメリット・デメリットを比較していこうと思う。

 まず、《大革命のD ワイルド・サファリ・チャンネル》は多色をサポートする6マナのD2フィールドだ。常在効果として「マナゾーンの多色カードが出すマナを倍加させる」というものがあり、Dスイッチの発動タイミングがターンのはじめだ。Dスイッチを使用したターン中、マナからクリーチャーを召喚することができる。

 その常在効果の特性上、このカードを使用する場合、デッキの過半数を多色カードで占めることになる。さらに、多色をサポートする「多色マナ武装」を持つ《謎帥の艦隊》や《獅子王の遺跡》などを使用する。ただし、多色が多く含まれている以上、初動は比較的鈍い部類に入る。

 また、D2フィールドはルール上、相手が後からD2フィールドを出した場合、先に出していたフィールドは墓地に送られる。このD2フィールドの上書きに対しては、D2フィールドを主軸とする場合、非常に脆弱となる。これに加えて、バトルゾーンに出す関係上、カード指定除去にも弱い。それ故の《無双と龍機の伝説》というわけだ。しかし、D2フィールド自体が6マナと重いため、D2フィールドを出してからタイムラグなしで《無双と竜機の伝説》をキャストするためには、マナゾーンには多色3枚を含めた10枚が最低限要求される。しかし、1ターンの間マナゾーンから召喚することができる効果のため、仮にコンボが始動できない状況でも、状況に応じたクリーチャーをマナから呼び出すことが可能であるし、コンボに使用する《イッコダス・ケイジ》や《偽りの名 ゾルゲ》をマナに置くことも容易だ。

 一方、《最強虫 ナゾまる》の最大の特徴は、「コンボ始動タイミングまでマナゾーンに置いておける」ことが最大の強みだ。マナゾーンに干渉できるカードは少ないし、ナゾまる自体は2マナと少ないマナで出すことができる。さらに、《最強虫 ナゾまる》だけにできる芸当として、コンボの起爆剤を自前で用意できることが非常に大きい。これは前回の【ゾルバルブルー】の記事で説明したとおりだ。ただし、《最強虫 ナゾまる》自体は2マナのパワー1000と非常に脆弱なクリーチャーであり、タイミングを考えて出さないと除去されやすい上、1体のナゾまるでマナから出せるクリーチャーは1枚のみと、爆発力には欠けている。そのため、最低でも《イッコダス・ケイジ》はマナではなく手札に抱えておくか、予め2体の《最強虫 ナゾまる》を出しておく必要がある。

 さて、先述したとおり、《大革命のD ワイルド・サファリ・チャンネル》型は多色を多く採用する関係上、初動が比較的鈍い。ここを【赤白轟轟轟】などのアグロに付け込まれてしまうと非常にマズい

 そこで、パタ氏は初動を伸ばすことと、速攻に対する受け札として《無双龍聖イージスブースト》を採用したのだ。イージスブーストも、《青寂の精霊龍 カーネル》と同様に《百族の長 プチョヘンザ》への革命チェンジが可能だ。しかも、出た時にマナブーストを行うため、革命チェンジ後に相手をタップインさせる範囲が1コスト分増えるのも大きなポイントである。

 一方、私の《最強虫 ナゾまる》型はシノビを採用している関係上、「1体でも多くのクリーチャーを止める必要がある」と考え、《青寂の精霊龍 カーネル》を採用した。カーネルの場合、後半でも《最強虫 ナゾまる》から出して仕事をさせることも視野に入れられるし、手出しで置く分にはイージスブーストよりも1コスト軽いため、ミッドレンジ系のデッキに対する抑止力としても有効だ。

 これに関しては完全に好みの領域に入ってくるし、実際どちらが優れているというわけでもない。ただ、大会後、パタ氏は私のデッキを見たとき、こう聞いてきた。

「多色のカードは何枚入ってるかソラで言えます?」

 ぐっ、と言葉に詰まってしまった。私のデッキはその意味でかなり中途半端だったのだ。《獅子王の遺跡》、そして《謎帥の艦隊》という多色サポートを入れておきながらこの体たらく。パタ氏は以前、多色サポートを投入した【クローシスドギラゴン剣】を組んで以降、多色カードの枚数をきっちりと暗記し、正確に把握できるようにしている

 その意味では、パタ氏の方がより深く練り込まれたリストであったのだ。一方の私は旧来の【ゾルバルブルー】からのコンバートにすぎない。より抜本的な改造を施すべきであったのだ。

 ただ、パタ氏も私も、共通して抱く思いはあった。

「【GRゾルゲ】使うって知っていればなぁ……相談したのに!」

 後悔先に立たず、である。

 Round 3 【赤白轟轟轟】

 ここへ来て、ようやく想定のアーキタイプの一角と当たった。想定した内容のゲーム展開をしていくため、まずは相手の打点を削りにかかる。

 その意味で、《イッコダス・ケイジ/種デスティニー》は強烈であった。《音精 プーンギ》や《イオの伝道師ガガ・パックン》を、出てくる端から退場させていく。相手のキルターンは大幅に狂っていた。

 しかし、こちらは除去にカードを割くことを余儀なくされていた。何故ならば、《イッコダス・ケイジ》以外のコンボパーツが揃っていなかったのだ。しかも、その《イッコダス・ケイジ》を除去に使用する関係上、《時の秘術師 ミラクルスター》を用意して、破壊や呪文面の使用により墓地に落ちた《イッコダス・ケイジ》を回収する必要がある。急がなければ。

 逸る気持ちと裏腹に、こちらの動きは鈍い一方だった。《獅子王の遺跡》や《フェアリー・ライフ》といったマナブーストが引けず、思うように動けなかったのだ。そして、相手の突破口が先に開いてしまった。《轟轟轟ブランド》が投下されてしまったのだ。

 これまでのお返しとばかりに過剰打点を形成され、シノビ2枚でなければひっくり返せない状況に持ち込まれる。そして、シールドの中にシノビはただの一枚も存在せず、抵抗虚しく押し切られてしまうのだった。

 とは言え、試合後の感想戦でお相手は「こちらも苦しかった」、と語る。

「打点が片っ端から除去されて……正直動かれてたら負けてましたね」

 敗因はやはりこちらの動きが鈍かったことに尽きる。せめて、せめて《獅子王の遺跡》でマナを伸ばせていれば……。

 Round 4 vs【白単サッヴァーク】

 今回の相手は極神編までプレイしていて、最近復帰したという選手。序盤から積極的に裁キノ紋章をプレイしてくる。一方こちらはマナをがっつり伸ばしつつシノビを構える。相手はこちらにビートダウンを仕掛けてくるが、これをシノビや《謎帥の艦隊》でどうにかいなす。

 相手がフィニッシュの構えに入ったのは8ターン目。場に《音奏 ハイオリーダ》を投下し、《煌世主 サッヴァークカリバー》でビートダウンを仕掛けてきたのだ。マスター・ドラゴン・ブレイカーの効果で山札から3枚がシールドゾーンに表向きで重ねられ、ハイオリーダの効果で3枚のGRクリーチャーが着地。しかも《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》がアタックチャンスで放たれており、そのままダイレクトアタックに持ち込まれる。

 しかしこちらには《怒流牙 サイゾウミスト》が3枚ある。2回目のサッヴァークカリバーの攻撃で龍終は放たれず、ダイレクトアタックに持ち込まれることはない。そう思っていたが……。

「ダイレクトアタック時にサイゾウミストをニンジャストライク。シールドを追加します」

「ではブレイク時にドラゴン・W・ブレイカーでシールドが増えたのでハイオリーダの効果でGR召喚……あ、《マシンガントーク》出ましたね。GR召喚時効果でサッヴァークカリバー起こします

 私はその瞬間、声にならない悲鳴を上げた。これでサッヴァークカリバーが再び起き上がってしまう。なんつうもんを入れてるんだこのGRゾーン。サイゾウミストが3枚ないと回答にならない。

 だが、こちらには今ニンジャストライクで場に投下したものを含め、2枚しかサイゾウミストがない。万事休すか……そう思われたが、2枚目のサイゾウミストで増えたシールドをブレイクするとき、ハイオリーダはマシンガントークを呼ぶことはなかった。そのままターンが返る。
 こちらをヒヤッとさせた代償を払わせてやろう、そう決意して《無双と竜機の伝説》と《最強虫ナゾまる》をバトルゾーンに送り出す。続くエクストラターンで相手の残り山札を確認し、《偽りの名 ゾルゲ》《イッコダス・ケイジ》が揃い踏み。相手の山札を一気に枯らして勝負を決めるのだった。

 Round 5 vs【準赤単革命チェンジ】

 お相手は1ターン目からマナが赤い。走ってくるデッキだ、と当たりをつけてシノビを抱え込みながらマナを順当に伸ばす。

 しかし、こちらのマナが7マナに届こうかというところでお相手が革命チェンジを宣言する。登場したのは《シン・ガイギンガ》。下手に触ろうものならエクストラターンを与えてしまう、対処が難しいカードだ。こちらが用意できる回答は《百族の長 プチョヘンザ》。だが、革命チェンジ元は来ず、動きは鈍い。

 最早このデッキではここまでが限界らしい。突破するための回答はあったが、それを盤面に投下するには、自分も、デッキも、最早気力が尽きていたのだ。

 完全に打点を構築され、最後のシールドを確認した瞬間、私は対戦相手に投了を告げた。盤面の《シン・ガイギンガ》が「もう休め」と言っているかのようだった。

 結果──2-3で無念のドロップ。

第5章 しばしの眠りの後

 2-3と振るわなかったとは言え、同様のデッキを握っていたパタ氏は勝ち越している。完全に練り込み不足だった自分が悔やまれる。

 だが、同時にこのデッキにはポテンシャルを感じていた。今後GRクリーチャーが増えれば、さらに面白いことが出来るかも知れない。当時、すでに予告されていた拡張パックには《シャギーII》の存在があり、マナから《悠久を統べるもの フォーエバー・プリンセス》を回収できる強みがあった。

 だが、しかし、あれから5ヶ月後。

 私が手にした新たな【GRゾルゲ】には、その悠久の姿が消えた。

 そして、GRゾーンからは《バクシュ 丙-二式》が消え、不要となったはずの超次元ゾーンには、役目を終えたと信じていたはずの《紅蓮の怒 鬼流院 刃》、《遊びだよ!切札一家ナウ》の姿があった。

 歴史が大きく変わる時、紅蓮ゾルゲはその姿を現す。
 始めには漆黒の狼を連れて。
 漆黒の狼は大地に死を振りまき、やがて自らも死ぬ。
 しばしの眠りの後、紅蓮ゾルゲは蘇る。GRゾルゲとして、蘇る。

 私は、この5ヶ月間で増えたカードプールを見て、ある決心を固めていた。
 死んだと誰もが思っていた紅蓮ゾルゲを、ここに蘇らせるのだ、と。

──To be continued...

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