【解説】2019年DM全国大会北陸エリア予選準決勝のカバレージが出来るまで

 どうもバートレットです。前回の第2回東海CSのカバレージ解説が好評だったので、今度はいよいよ公式カバレージ、DM全国大会北陸エリア予選の準決勝の記事の話でもしようかと思います。

 とは言っても、前回と方法論が大きく変わったわけではないですが、色々と裏話とかできればなと思ってます。

 カバレージ本文は以下から読むことが出来ます。

1. きっかけ

 きっかけとしては前回よりも単純でした。あーくんさんや神結さんから「もっと読みたい!」と次のカバレージ執筆をせがまれたのを皮切りに、ヤスさんから「YOU公式で書いちゃいなYO」と煽られた結果、どこぞの野球選手の如く「やってやろうじゃねぇかよこの野郎!」と実績をまとめ、公式にカバレージを書きたいですとアピール。すると早速北陸エリアで書いてくれ、という連絡が来ました。

 ただ実績まとめた時はドキドキでしたね。カバレージライターとしてデビューしたのが2ヶ月ちょい前くらいでカバレージは第2回東海CSの2本だけ。他にも何か書いてますよアピールをする必要があるんじゃないか、と疑心暗鬼に陥った果てに、「紅蓮ゾルゲ回顧録」を実績として持ち出す暴挙に出ました。

 一応noteで書いてる記事なので説明すると、この「紅蓮ゾルゲ回顧録」はまつがんさんの「だらだらクソデッキ」に感銘を受けて書いていたデッキ解説です。「紅蓮ゾルゲをいろんな構築で作ってみたよ!」というテーマで様々なパターンの紅蓮ゾルゲを作ってはレシピを公開するという記事です。【バッシュゾルゲ】とか【墓地ソMDWゾルゲ】とか【ゾルバルブルー】とか、色々作ってました。
 この記事を目にしたヤスさんからは「だらクソに感銘を受けやがってこの野郎」とひと目で見抜かれました。顔見知りのプレイヤー間では「ゾルゲ怪文書」と呼ばれているらしいです。現在は続編の「GRゾルゲ血風録」が忘れた頃に更新されます。スキあらばゾルゲ語りです。ゾルゲは常に貴方を見ています。ゾルゲです。よろしくお願いします。

 閑話休題。

 この暴挙が功を奏したのかどうかは不明ですが、晴れて北陸エリアでカバレージを書けることになったというわけです。

2. 事前準備

 今回は公式でカバレージを書くということで、まずはじめに取り掛かったのはDM公式ページの過去のカバレージを読み返すことでした。職場でも仕事の合間にタバコ吸いながらカバレージを読み返すことに全力を傾けました。

 というのも、この公式カバレージというのは、東海CSと同じようで決定的な違いがあったのです。端的に言えば、それは「クライアント(依頼者)」の存在です。

 東海CSの場合は、カバレージの前例がないこと、自分も運営チームの一員であること、さらに主催から「好きに書け」と言われたことで、とにかく自由に書くことが出来ました。しかし、今回書くことになる公式カバレージは、公式大会の運営から依頼を受けて書くことになります。つまりどういうことかというと、「依頼主である公式側が公開したい記事を書く必要がある」ということになります。当然、好き勝手に書くわけには行きません。

 「公式が期待している水準を満たしつつ、公式が定めた記事の体裁を守りながら、依頼された記事を納期通りに書き上げる」ということが、今回公式カバレージを書く上で自らに課されたミッションとなります。

 まず注視したのはカード名です。すべて正確な名称で書く必要があるのかというのはもちろん、ツインパクトカードの呪文面のみ記載する場合はどうするか、といったところなどを予め押さえておきました。他にも、選手の話した内容や、記事全体の分量なんかも確認しています。
 もちろん、体裁の確認だけではなく、例えば他のライターさんはどこに重点を置いて記事を書いているのか、記事を書く上でどこに視点を置いたのか、なども分析しました。自分もこのページに記事を載せてもらうことになる以上、先人たちが積み上げたものを崩すことはできません。この段階でまずはかなり気を遣いました。

 他にやったことと言えば、2ブロックの環境分析も可能な限り行いました。今の環境はどんなデッキがあるのか、当日はどんなデッキが登場する可能性があるのか、などです。当時は片っ端からYouTubeの対戦動画や2ブロックCSの結果などを確認していた記憶があります。

 そして、忘れてはならないのが開催場所の分析。今回開催されたのは福井県でした。私の地元は静岡なので、まず交通手段の確保が必要です。他にも、現地周辺で食事をする場合のレストランやファストフード、コンビニの場所の把握もしましたし、記事執筆の上で重要なご当地ネタの選定も行いました。恐竜の話を記事中に盛り込むのはこの時点で決定していたと思います。

 これらの準備を経て、ついに大会前日、私は福井の地を踏みました。

3. 大会当日の動き

 ホテルのロビーでチェックアウトを済ませて、今回のカバレージ班と顔合わせを行いました。カバレージ班のまとめ役である川崎さん、写真を担当される瀬尾さん、そして今回カバレージを一緒に担当するイヌ科さんと挨拶を交わします。

 会場に到着して早速顔見知りがいるか、と辺りを見回したのですが、ここで問題が発生しました。顔見知りのプレイヤーが見当たらないのです。これには流石に面食らいました。地元である東海地方はいざ知らず、関東・関西のプレイヤーにもそこそこ顔見知りはいるんですが、それ以外のエリアだと知人がほとんどいないというこの状況。流石にこれはどうしたもんかと頭を抱えました。

 前回説明した方法論がここで早速崩壊しています。ただ、それでも顔見知りではないまでも、静岡CSなどで名前を見かけた選手が何人かいたので、彼らの動向を見守ることとしました。

 アーキタイプの予習に関しては、イヌ科さんにはかなりお世話になりました。彼は現環境についてがっつり触れているプレイヤーでもありますので、彼の環境分析や注目すべきアーキタイプ、カードなどについて話すことができたのは行幸でした。

 そして、上位陣も絞られてきた頃、カバレージ卓にデッキレシピが到着。ここでイヌ科さんとどのカードを見るべきか、どの試合を担当するかの役割分担と確認を行います。今回は動きが大きく、かつダイナミックな試合が書けそうなでぃすく選手vsつむーじー選手の卓を選びました。【赤単"B-我"】と【赤白ビートジョッキー】、ドラマチックな展開がありそうだと期待しての選択でした。

 こうして、ついに自分が担当する試合が始まりました。

4. 準決勝の試合中にやったこと

 今回試合を見るにあたって意識したのは、両選手の表情とプレイ速度です。これは序盤にでぃすく選手がじっくり考えてマナを置いていたのに対して、つむーじー選手がテンポよくマナを置いてターンを返していたところから、ここにスポットを当てて流れを把握すべきだと考えました。

 というのも、この試合はビートダウン、それも速攻系同士の対決ということもあり、どちらがゲームの主導権を握っているか、というのが可視化されやすいものです。逆に言えば、結果だけを先行して知っている読者が一番知りたいのは、「途中経過でどのように主導権のやりとりがあったのか?」というところになります。

 その意味では、今回の試合は極めて主導権の移動が明確であることは予想できており、事実そのとおりでした。序盤はでぃすく選手が押していく。中盤につむーじー選手が窮地に陥るも、シールドトリガーで徐々に押し返し、最後は一気にひっくり返す、という流れを見出すことができたのです。起承転結がかなりはっきりしていたんですね。

 このように、ある程度主導権のやりとりがあるとわかった以上、注目すべきは主導権を握る、握られている関係を端的に表すための要素に注目すべきと私は思っています。故に、両選手の表情と手付きには十分に注意を払っていました。

 試合が終わった後に取材を行い、両選手を交えて感想戦を行いました。時間は限られていたので、重要と思ったポイントをある程度絞って話を聞きます。デッキを選んだ理由やゲーム中の心情なんかを聞き出して、その日の最大の仕事は終わりました。

5. 記事執筆

 地元に戻り、いよいよ本番の記事執筆です。この記事に関しては1日でほぼほぼ書き上がったと思います。

 まず、今回は何よりも納期に間に合わせることが大前提でした。そのため、プロットは帰りの新幹線の中である程度練っていました。そのため、自宅での作業はプロットを記事の形に膨らませることに終始しています。

 先にも述べた通り、起承転結が極めてはっきりしている試合でした。そのうえで、読者が記事を読む時、どちらの視点から見ればカタルシスを感じるか、という点でつむーじー選手側の様子を重点的に書くことにしました。

 もちろん、これは試合に勝った側という理由もあるのですが、起承転結の四幕構成で見た場合、「転」のタイミングで状況が良い方に変化した側に読者側の共感を誘いたかった、という意味もあります。カードゲームアニメでもよくある「劣勢から突破口を見つけて逆転する」というストーリーラインを素直になぞるわけです。

 カバレージ執筆で私が意識していることの一つに、プロット類型をいくつか自分の中で作っておいて、それを実際の試合に当てはめる、というものがあります。
 何をするかというと、「終始圧倒していた」のか、「劣勢から土壇場で逆転した」のか、「シーソーゲームの末に勝ちを拾った」のか、というように、ストーリーのパターンを予め決めておいて、実際の試合をそれらのパターンに当てはめて書いていくということになります。

 こうすることで、どちら側に注目して書けばよいか、といった部分や、細かい情景描写をどうするか、といったことが自然と決まってきます。もちろん、すべての対戦がかっちりと型にハマるわけではありませんが、ある程度「これはこういう展開だからこういう構成にすればいいな」というのを事前に考えておくとスラスラっと書けたりするのでオススメです。

 後、今回のカバレージでかなり目を引いたと思われる恐竜の話を盛り込んだ件についても説明しておきましょうか。神結さんが今回のカバレージについて読者目線で解説記事を書いてくださったのですが、その記事の中で神結さんが「小休止」と仰っていたパートについて、補足説明と言うか解説をば。

 あのパートの意図ですが、いわゆる終盤に向けての「溜め」の意図があります。クラブミュージックなんかで言われる「ドロップ」前にある「ビルドアップ」のフレーズであり、メタルでいうところのギターソロ前のドラムパートであり、小林啓樹サウンドで旋律が積み上がってからスッと無音になるまでの部分です。読者のテンションが最大限にぶち上がってカタルシスを感じる瞬間がリーサルを決めるまさにその時ですから、そこへ向けて一旦文章のテンションを落ち着かせつつ、終盤に向けてテンションを振り切らせるために入れています。

 先程起承転結の話をしましたが、実は大きな流れでの起承転結の間に、小さな起承転結を入れています。それが、つむーじー選手の反撃開始→試合終了の流れにおける起承転結です。

 大きな流れでは、「転」の部分につむーじー選手のシールドトリガー発動があります。ここから「結」のリーサルに持ち込むまでの過程で、小さな起承転結が生まれています。すなわち、シールドトリガー発動を「起」と見た場合の起承転結です。この「転」に当たる部分で恐竜の話が入ります。文字通り視線が一旦転換されるわけです。この視線の転換で、一旦ここまでの試合の流れを俯瞰しつつ、クライマックスはどうなるのか、と期待させる効果を狙いました。

 この手の文章は読者のテンションをとにかく煽ってなんぼだと思っています。そのためには許される範囲であらゆる手段を講じるべきだと思っていますし、結果として私のカバレージは往々にして大仰なものになっている自覚があります。ただ、それと同時に、カバレージはその試合の出来事を読者に鮮烈に印象づける必要があるわけですから、記憶に焼き付けるためのカバレージとしての仕事は果たせたのかな、とも思います。

6. まさかの解説記事

 記事が公開されてからしばらくして、先述の通り神結さんが私の記事に関する解説記事を書いてくださいました。これは本当に嬉しかったですね。

 物書きは基本的に感想に飢えています。絵とか音楽なんかはぱっと見てぱっと感想をいただける印象なのですが、文章の場合、まず「読む」という行為自体がエネルギーを使う行為だと思いますので、そこからさらに感想を得ることは非常に困難です。だからこそ、ここまでがっつり書かれた解説記事というのは飛び上がって喜ぶものです。本当にありがとうございます。

 その感想記事を踏まえて言うならば、やはり自分が「物書き」として何を大事にしているかの再確認になりました。引き出しと構成、そして描写。この3つが自分の売りになっているところなんだなぁと思った次第です。

 引き出しは実に簡単で、普段から色々なことに興味を持って、時には挑戦してみることです。いろんなゲームやアニメに手を出しましょう。知識と経験は力です。
 構成については、プロットを起こしたり、設定を組んだりする過程で身につくと思うので、これもやっぱり物書きとしての経験が活きるところだと思います。要は自分の中でどこまでパターン化できるかです。
 描写は……なんだろうなぁ、ここばっかりは本当に個々人のセンスなんですよね。ただこれもやっぱり数書いていくうちに身につくものだと思いますよ。

 結局、どれだけ書いたか、という経験が物を言う業界なんです、物書きって。だからこそ失敗を恐れずにいっぱい書いてほしいし、公式カバレージライターに応募する過程で自分がどれだけ書いたか、という実績を示す必要があるのも、ある程度の経験が記事のクオリティを担保するからだろうと思っています。

 ここまで偉そうに語っている私自身、まだまだ記事は粗い部分が目立っていると思いますし、今後も精進は必要だと思います。だからこそ、これからも機会があればガンガンカバレージを書いて経験をさらに積んでいきたいですね。ということで、皆様のご依頼、お待ちしております。

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