ボルダリング(5)
今日は、スメア、足きりについて書いていきたいと思います。
今まで書いてきたように、ボルダリングは足で登るもの。なのに、なんで足をホールドから外すの?という素朴な疑問が生じるし、初心者にとって足を切るという概念はとても理解しづらいこと。この辺り、書いてみたい。
まず、スタートがいいかなと思う。
この課題をスタートするには、左足でホールドに乗り、右足を切ります。あとで説明しますが、右足はスメア(後述)しているだけで、ホールドに乗ってはいません。両腕でスタートホールドを左上に引っ張る。そして、左足を踏んで左上に蹴る。両方の力の均衡を取り、落下しようとする力を打ち消す。物理的な説明はここでは割愛しますが(長くなってしまうので)。
で、初心者がこれを登ろうとした場合、両足で乗ろうと考える。すると、右回りに回転する。今ある身体が、手前を経て右に回るように回転するはずです。どうして両足で乗ると回るの?まあ、これはそういうようになっています。そして、片足で乗り、もう片方の足を右の方に振ってスメアすることで、回転することを止めているんです。
それで、なんで足を切るのかを別の写真を使って説明します。下の写真は左から右の写真に動作を移しています。
写真左では右足に重心の多くが乗っています。でも、右の写真では右足を切っています。なんでせっかく乗せられているのに切るの?と思うでしょう?実は、この後、左手上の方にあるピンクっぽいホールドを取りに行くんです。左手を外さないといけない。もし、右足が乗っている状態(左の写真)で左手を外すと、まず背中側に向けて回転は始まってしまいます。それを避けるために、右足を切るのです。右足を切って左足に重心を乗せていく。そして、右足でバランスを取るんです。正直、この時は右手が頑張らなくてはいけません(100%ではないですよ)。でも、なるべく右手には楽をさせてあげたい。もし、左足に完全に荷重を乗せ、下向きのベクトルを完全に打ち消せれば、右手は壁からはがれる動作を止めるだけになり、手としては非常に楽になります。そうならなくても、なるべく重心を左に持っていく。そして、右足でバランスを取り、回転しないようにするんです。ちなみに、左手で次のホールドを取るには、左足で少し上がらなくてはいけません。基本は足で立ち上がるんですが、右手が立ち上がりを補助します。
下の写真は、100%荷重が右足に乗っている時のものです。
上の写真は、頭上にあるオレンジの山形のホールドを取りに行くときの動作を示す写真です。このホールド、形状見てわかる通り、掴めません。壁から剥がれ落ちるのを阻止するくらいしか使えないホールドです。また、左足はホールドには乗っていません。くっついているように見えているだけで、浮いています。この後、右手で写真外右上にあるボテを取りに行きます。この時、右足で立ち上がります。左手でオレンジのホールドを持ちながら、足だけで立ち上がるのです(もちろん、左手が補助役を担いますが)。こんな時にも、足を切ります。足を切ってバランスを取り、軸足のホールドに乗るのです。これが、切るという概念で、左足を乗せていたのではこの動きはできません。説明ではヤジロベーの動作、と紹介されていて、筆者はこの動作が結構好き。得意な動作です。
ということで、足を切るのは、基本、バランスを取るためなんですね。そして、もし、上の写真で背中が右周りに壁に向かう方向に回転力が発生するのであれば、左足を壁に押し付け、回転を止めます。このように(これはスメアとは言えないですが)、壁に沿って足を添え、回転を止めるようにする動作をスメアと呼んでいます。
そして、もう一つ大切なことは、手が疲れないよう、重心を足が乗っているホールドに移していくこと。後日お話しする、重心コントロールが出てきます。これは後日に。
ここで、スメアをもう少し。
上の写真の最初の奴は、右手、左足でバランスを取るために右足をスメアしています。右回転がかかるため、右足で壁を蹴り(スメアし)、回転を止め、左手を腰上のホールドに移しています。
下の写真は右足に乗り、左手で青太バーを持ち、右手で右上の青蛇(細いバー)を取りに行きます。この時、左足をスメアしています。これも、何もしないでいると、右回転を始めるはずで、体幹を使い、左足をスメアし、壁から引き剝がされるのを防止しています。下半身で左回りに力を込めているんだろうと思います。
と、こんな感じで、足を切り、バランスを取り、必要に応じてスメアし、回転を止めます。基本、回転を止めるために使うのがスメアで、重心コントロールするのが足を切るという動作なんです。ちなみにですが、手と足の組み合わせは右手+左足、左手+右足と対角線になり、空いた方の足でバランスを取ります。
最後にもう一つ余計なことを。回転を止めるのは、何もこれだけではないです。ヒールフック、トゥーフックがあります。足をホールドに引っ掛けて、回転を止める、という動作。ヒールフックは足の力が引っ張ることにも使え、手がとても楽になりますし、場合によっては、身体を引き上げる補助までしてくれる、有能な技です。これらはいずれ。では、ガンバ!