テスラ、時価総額業界トップ守れるかTesla Will Lose Its Crown to Toyota if This Happens円安の恩恵受ける2位トヨタとの差850億ドル
2020年から首位
LEONHARD SIMON/GETTY IMAGES
米電気自動車(EV)大手テスラ<TSLA>のバックミラーに映っているものは、見かけより近くにある。
テスラ株は低迷しており、先週末に同社が発表した新たな値下げは今週、投資家心理を圧迫するだろう。
事態がさらに悪化すれば、トヨタ自動車<7203>は、世界で最も価値の高い自動車メーカーに座を奪還するだろう。ファクトセットによれば、テスラはその栄誉をさらったのは2020年6月10日のことだった。当時のテスラの時価総額は1900億ドルだったのに対し、トヨタは1810億ドルだった。(投資家と調査会社の発行済み株式の取り扱い方によって、実際の日付はあいまいかもしれない。)
今月19日の取引終了時点のテスラとトヨタの時価総額はそれぞれ約4600億ドルと3750億ドルで、その差は約850億ドルだ。差が1兆ドル近かった2021年1月3日とは比べものにならないほど小さい。
テスラの株価があと27ドル下げて120ドルを下回り、一方トヨタの株価に変動がない場合、トヨタが時価総額首位となる。そうした動きが起きれば、投資家はそれを成長のおかげだと見なす可能性がある。
テスラが2020年に時価総額でトヨタを上回ったとき、ウォール街はテスラの2021年の販売台数が約70万台になると見込んでいた。テスラが結局、同年に93万6000台を販売したことは、投資家に好感され、同社の株価は上昇した。2020年当時は、現在の主力車種である「モデルY」も投入されたばかりだった。
テスラは2024年に入り、これとは異なる状況に置かれており、新たな大ヒット車種は近いうちに出そうもない。より低価格の車種の投入は最も早くて2025年終盤の予定で、テスラはピックアップトラック「サイバートラック」の生産に苦戦している。サイバートラックは価格が10万ドルとなる可能性があり、現段階ではどちらかと言うとニッチという感じになっている。
2024年については、ファクトセットの調査によると、ウォール街アナリストの予想販売台数が約180万台と、1年前の240万台から下方修正された。アナリストらはテスラの1~3月期の販売実績が期待外れの内容だったことを受け、予想を修正した。同期の販売台数は約38万7000台で、ウォール街の最も低い予想より約2万台少なかった。
一方のトヨタは、テスラのような販売の伸び率は見込んでいないが、若干の改善を示している。トヨタの2022年の営業利益率は約8%で、ウォール街は2024年には12%を予想している。
外国為替レートがトヨタの利益率押し上げに寄与している。2022年初めには1ドル=115円程度だった。現在は155円近くになっている。円安が進んだことで、多くの車をドル建てで販売し、従業員の多くに円建てで給与を支払っているトヨタは恩恵を受けている。
23日のマスク氏発言に注目
テスラ株が時価総額首位の座を失うほどまで下落するかどうかは、誰にも分からない。先週末に発表した新たな値下げが実施されても、投資家心理の助けにはならないだろう。値下げは最終的に、利益率の低下と業績見通しの引き下げにつながるからだ。
テスラは23日の取引終了後に1~3月期決算を発表する予定。投資家はイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)から、成長が加速するとの安心感を与える言葉を聞きたがっている。そうした言葉が聞けない場合、時価総額2位への転落は投資家が予想するよりも速く近づいてくる可能性がある。
22日の取引開始までの時点で、テスラ株は年初来で約41%安となっており、S&P500指数に約45ポイント後れを取っている。
原文:By Al Root
(Source: Dow Jones)
翻訳:時事通信社
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