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アップル、新たなAI戦略発表Apple Debuts a Clear AI Strategy. It Hopes to Spur iPhone Sales.アイフォーン販売てこ入れ

プライバシー保護を強化


オープンAIがチャットGPTを発表し、生成人工知能(AI)革命の火ぶたを切ってから約560日後、アップル<AAPL>は明確なAI戦略を打ち出した。

アップルはiPhone(アイフォーン)15プロとプロマックスに、生成AIシステム「アップルインテリジェンス」を搭載すると発表した。この2機種はアイフォーンの約5%に相当する。これは搭載されるAI機能のためのシリコン要件を反映したものだ。重要なのは、顧客が高価な新機種を購入するかどうかだ。

同社は10日に開いた年次開発者会議で、これまでのメディア報道とウォール街の期待に応える多方面のアプローチを打ち出した。

アップルはAI対応の遅れを指摘されていた。アップルインテリジェンスが投資家の不安を解消できるかどうかはまだ分からないが、投資家の注目を次の正念場、つまり今秋発売予定のアイフォーン16に移すには十分だったようだ。

同社はアップルインテリジェンスに複数の戦略を詰め込んだ。それにはマイクロソフト<MSFT>、アルファベット<GOOGL>のグーグル、オープンAI、アドビ<ADBE>などが提供するツールに似た機能が含まれている。

メール、メッセンジャー、ノートなどのアップルのアプリで、テキストを要約したり、電子メールの返信案を書いたり、通話を書き起こしたりすることができる。

アップルは画像生成ツールも提供し、アドビ、メタ、グーグルなどの類似ツールがひしめく市場に参入した。アップルの特徴は独自アプリとの統合だ。

アップルは自社のデバイスでAI体験を提供するため、プライバシーが守られると強調した。同社はクラウドベースのサービス「プライベート・クラウド・コンピュート」も提供しているが、アップルのシリコンを搭載したサーバー上で実行されるため、プライバシーが保護されると説明した。


INDRANIL ADITYA/BLOOMBERG

オープンAIと提携

その一環として、新しいAI強化型の音声アシスタント「Siri(シリ)」を発表した。これはアイフォーン、iPad(アイパッド)、Mac(マック)に搭載され、シリの価値を大きく向上させると期待されている。

アップルは予想通りオープンAIとの提携を発表し、チャットGPTにログインしなくてもアップルのデバイスで利用できるようにした。すでにチャットGPTの有料版を使っている人は、引き続き高位機能も使用できる。

アップルの基本ソフト(OS)のアップデートも発表された。

iOS 18では写真の整理ツールを改善し、セキュリティーを高めるために個々のアプリをロックし、ホーム画面のレイアウトをより自由に設定できるようになった。また、メッセージを事前にスケジュールする機能や、ワイファイ接続できない場合に衛星経由でメッセージを送信する機能など、新しいツールも追加された。

電子メールを整理するツールや新たなパスワードアプリも加わり、サファリとマップもアップデートされた。ウォレットは、2台のアイフォーンを同時にタップするだけで現金のやり取りができるようになった。

エアポッズは、頭を上下に振るだけで電話に出たり出なかったりできる。

新しいアイパッドのOSでは、メモアプリがリフレッシュされたほか、フリーハンドで使えるパワフルな電卓機能が追加された。マックのOSでは、アイフォーン・ミラーリングと呼ばれる機能により、アイフォーンとマックの間で簡単にアイテムをドラッグ&ドロップできる。アップルはMacの新しいOSを「セコイア(常緑高木)」と命名した。

株価は1.91%下落

アップルに強気なアナリストは、すぐにポジティブなコメントを発表した。

エバーコアISIのアナリスト、アミット・ダイヤナニ氏は「アップルインテリジェンスの搭載機種を過去1年以内に販売されたアイフォーンに限定したことで、アイフォーンのスーパーサイクルの幕開けを後押しするだろう。われわれはアップルのAI戦略と、数百億ドルの画像処理半導体(GPU)への設備投資なしに生成AIをユーザーに提供する能力を高く評価している」と述べた。

ウェドブッシュのアナリストでアップルに極めて強気なことで知られるダン・アイブス氏は「アップルにとって歴史的な日であり、クック最高経営責任者(CEO)のチームは期待を裏切らなかった。アップルがその強さを示した瞬間だった」と語った。

アップル株は10日、1.91%安の193.12ドルで引けた。

オープンAIの最大の出資者であるマイクロソフトは0.95%高の427.87ドル。オープンAIのライバルであるアルファベットは0.43%高の175.01ドル。1株を10株に分割して最初の取引となったエヌビディア<NVDA>は0.75%高の121.79ドル。同社の時価総額はアップルをわずかに上回ったが、マイクロソフトには2000億ドルほど及ばない。

アップルの発表で恩恵を受けたのは、アップルのVR(仮想現実)端末「ビジョンプロ」向けにアプリを提供しているビメオ<VMEO>で、5.22%高の4.03ドルで引けた。

原文 By Eric J. Savitz
(Source: Dow Jones)
翻訳 時事通信社

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