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40年にわたるテクノロジーの盛衰が教えてくれたことAfter 40 Years, I’m Signing Off. But First, One More Thingブームに惑わされず、冷静に評価する姿勢が重要

次の偉大なテクノロジー」の多くが期待外れ

筆者は1984年にダウ・ジョーンズに入社し、報道部門での4年間の勤務を経てバロンズに配属された。以降、2度にわたり転職とバロンズへの復職を繰り返したが、このほど新たなキャリアを目指して再びバロンズを去ることになった。以下、筆者がこの40年間の経験から得たことについて語りたい。

まず指摘しておきたいのが、「次の偉大なテクノロジー」と呼ばれた技術や製品はどれもが魅力的なキャッチコピーを生み出したものの、大半が期待外れに終わったということだ。そうした例には、3Dテレビ、メタバース、仮想現実(VR)と拡張現実(AR)、3Dプリンティング、パーソナルドローン、暗号資産(仮想通貨)、ブロックチェーン、 NFT( 非代替性トークン)、Web3(ウェブスリー)、代替肉、合法的な大麻、セグウェイ、動画配信サービスのQuibi(クイビィ)、ファイル共有サービスのNapster(ナップスター)などがある。かつて話題となったGoogle+(グーグル・プラス、グーグルのソーシャルネットワーキングサービス=SNS=)、グーグル・グラス(グーグルのメガネ型情報端末)、Qwikster(クイックスター、動画配信大手ネットフリックス<NFLX>のDVD宅配サービス)、アップル<AAPL>の自動運転車、マイクロソフト・ズーン(マイクロソフト<MSFT>の携帯型音楽プレーヤー)は今では姿を消している。結局のところ、世界を変えるのは容易ではない。


JAAP ARRIENS/NURPHOTO VIA GETTY IMAGES

自分の判断能力を信じる

テクノロジーには実験が必要であることは確かだ。しかし大半のスタートアップ(新興企業)は失敗に終わり、成功を収める製品はごくわずかだ。新しいテクノロジーに懐疑的な見方をすることは必要だが、冷笑的になってはならない。新しいアイデアを受け入れつつ、無意味なものに夢中になってはならないし、周囲と異なる意見を持つことを恐れるべきでない。

前述したテクノロジーのすべてが明らかな敗者だったわけではないが、一部のテクノロジーに対しては最初から「失敗」と指摘する声が上がった。例えば3Dテレビ。10年ちょっと前、ラスベガスで開催された家電見本市CESの会場は、3Dテレビをブラウン管テレビの衰退以降の家電業界における最大の技術革新と売り込むテレビメーカーのブースで埋め尽くされた。筆者には、人々が滑稽なほど不格好なヘッドセットを装着したままフットボールの試合やバラエティー番組、地域ニュースを観ると考えるのは全くの妄想に思えた。マーケティング目的の大げさな宣伝文句は無視し、自分の判断能力を信じるべきだ。

偉大なテクノロジーとまあまあのテクノロジー

明確にしておきたいのは、「次の偉大なテクノロジー」と呼ばれた技術と製品が本当に偉大だった例もあるということだ。そうした例には、PC、無線LAN、クラウドコンピューティング、iPhone(アイフォーン)、ソーシャルメディア、インターネット、ストリーミングテレビ、グーグル検索、SNSのフェイスブック、動画共有サービスのYouTube(ユーチューブ)などがある。いずれも、当初は否定的な見方をする向きがあった。

偉大なテクノロジーのリストに人工知能(AI)を入れるつもりだったが、最終的に「大げさに宣伝されたリスト」に入る可能性がないわけではない。結論はまだ出ていない。AIをどのように収益化するのかはまだ定かでないが、チャットボットが可能にした幾つかのことは注目に値する。AIを体験しないのは大きな間違いだ。

多くのテクノロジーが当初目指した目標を達成できず、投資家が夢見たリターンを提供しない「まあまあ有用な」アイデアで終わるのは事実だ。例えば電動二輪車のセグウェイは都市交通に革命をもたらしたわけではないが、観光地では人気がある。共用オフィスを展開するウィーワークはソフトバンクに数十億ドルの損害をもたらしたが、最近になって経営破綻から立ち直った。合法的大麻や代替肉ハンバーガーの市場は確かに存在するが、そのインパクトは強気派が期待したほど大きなものとなっていない。

偉大なテクノロジーを育てる企業とは?

多くの素晴らしいアイデアは2人の男によってガレージから生まれる。だが、技術革新を活用する可能性が最も高い企業は、最も潤沢な資金を持ち、最も鋭いマーケティング洞察力を備え、最も多くの顧客を抱える企業だ。AIの主要企業としてマイクロソフト、アルファベット<GOOGL>、メタ<META>(旧フェイスブック)、アマゾン・ドット・コム<AMZN>、エヌビディア<NVDA>が名前を連ねているのには理由がある。

企業が新しくて機敏であることは優位性につながるが、古くて機敏であることがより良い結果を生むこともある。合わせて約415年の歴史を持つ特殊ガラスメーカーのコーニング<GLW>、IBM<IBM>、米法人向けソフトウエア大手のオラクル<ORCL>、米IT大手のヒューレット・パッカード・エンタープライズ<HPE>は今や最も興味深いAI関連銘柄である。一方、短期間で成功したエヌビディアが設立されたのは31年前だ。

物理学者リチャード・ファインマン氏の「テクノロジーを成功に導くうえでは、広報活動よりも現実が優先されなければならない」という言葉を思い起こしていただきたい。

原文 By Eric J. Savitz
(Source: Dow Jones)
翻訳 エグゼトラスト株式会社

この記事は「バロンズ・ダイジェスト」で公開されている無料記事を転載したものです。