
イクサラン環境の変遷と所感+青黒デーモンメック研究日誌
挨拶
こんにちは。みやむーです。
関東で大体青黒のデッキを回しています。現在はほぼパイオニアを専門にプレイしており、TLSQで上位入賞など、晴れる屋には定期的にリストを載せたりしています。ブログを書いたりDiscordサーバーを作ったりといった活動もしています。
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今回は調整録というよりイクサラン発売後以降のパイオニアの環境について思った事を書いた日記です。ただ記事が書きたかっただけです。速報性は無いので、単なる読み物としてお楽しみください。後半は俺のデッキ構築の記録です。有料設定していますが全文無料です。
イクサラン環境の変遷
イクサラン:失われし洞窟発売
パイオニアの青黒フェアリーはエルドレインの森のカードを中心に構築したデッキですが、前回の青黒フェアリーの記事を書いた後もずっと微調整して回していました。そんな中、イクサラン:失われし洞窟が発売。
新しく登場した発見ギミックにより成立した発見コンボはそれまで硬直気味だったパイオニアの環境を一気に動かしました。地質鑑定士型(以下鑑定士型)とクイントリウス・カンド型(以下象型)の二つがありますが、どちらも妨害無しなら1枚コンボでゲームに勝てるという近年のパイオニアに存在しなかったタイプのコンボデッキでした。安定した1枚コンボで素早くゲームに勝てる為、緑単信心やロータスコンボ等の妨害手段を持たない、発見コンボよりキルターンの遅いデッキが環境から追い出される事態に。ラクドスミッドレンジやイゼットフェニックスやボロス召集と言った既存デッキは発見コンボに対するゲームプランをそれぞれ探していました。


しかし、個人的にはこの変化はむしろ歓迎すべきものでした。青黒フェアリーは元々2ターン目からカウンターをしっかり構え、思考囲いによるハンデスまで備えている妨害の多いデッキ。青白コントロール等と違い序盤からクロックも掛けられます。発見コンボ自体が特に特殊な対策をしなくても戦えるマッチアップである上、発見コンボに不利でフェアリーにとって苦手なデッキが環境から駆逐されていく。フェアリーにとって好ましいメタゲームになると考えました。この時点で殆どデッキは変えていなかったと記憶しています。
チャンピオンズカップファイナル
パイオニアの劇的な変化に皆があの手この手で対応しようと試行錯誤しているさなか、まもなくチャンピオンズカップファイナルが開催されました。知っての通り、環境は発見コンボの海に。他にも新しく成立したデッキとしてはアマリアコンボやマーフォーク等が存在し、明確に環境の変化を実感した瞬間でした。
蓋を開けてみたらメタゲーム自体は発見コンボが大多数を占めていましたが、結果的には発見コンボからはトップ8に1人が出たのみで、人数から考えると多いとは言えません。また、鑑定士型と象型の二つとも勝率ベースでは決して高い数値とは言えない結果でした。フィーチャーテーブルでも、しっかり発見コンボを対策したデッキがベスト8に残った鑑定士型発見コンボを打ち倒していく様が見られました。
ファイナルの権利を持っていなかったのでそんな状況を横目で見ていましたが、ここまででイクサラン発売から2週間も経っていない時間軸での出来事であり、個人的には発見環境をそこまで十分にプレイする事はありませんでした。
禁止改定
ファイナルの後にはパイオニアの禁止改定がありました。事前に禁止改定を実施するとの予告があり、発見に何かしらのメスが入るだろうとは思われていました。実際に改定があったのは以下のカードです。
地質鑑定士禁止
大いなる創造者、カーン禁止
密輸人の回転翼機禁止解除
3~4ターンキルを容易に実現する鑑定士型発見コンボは許されず、対して1マナ重い象型発見コンボは規制無しという結果に。
地質鑑定士型コンボは最速なら後手の対戦相手が2マナクリーチャーを出しただけで返しのターンに終わってしまうスピードなので、やはりと言うべきか許されなかったようです。早いターンに除去やカウンターを構える事を推奨する環境になってしまうからです。以前に軍団のまとめ役、ウィノータを同じような理由で禁止しているのでパイオニアのバランス的にはやむを得ません。(補足:しかしその理論で行くなら「パルヘリオンシュートもあまり良くないのでは?」という疑問も出てくると少し思っています。)
象型発見コンボは鑑定士型より1ターン遅いためこのスピードなら適正と判断されたようです。個人的な感想としてはこういうデッキも少しはいた方がメタゲームが健全になって好ましいのではないかなと感じています。4マナ以下のカードを限られたカードしか入れられない制約から現状はそこまで強力なデッキではないだろうという要素も加味していると思います。
カーン禁止は緑単信心への規制ですが、「緑単信心がTier1でないのになぜ?」という疑問も有りえるとは思います。個人的には緑単信心に勝てない為に息を潜めていたデッキはたくさんあったと考えているのでそこまで違和感はありません。ラクドスミッドレンジが絶滅の契機という専用サイドに近いカードをサイドボードに用意していたことから見て取れるように、環境の多様性を歪める存在ではあると思っていたのです。
そして最後に、環境への影響が大きいものとして密輸人の回転翼機の解除があります。

俺はこのカードが発売された当時MTGをプレイしておらず、またパイオニアで使えた時期もパイオニアをプレイしていなかったので全くこのカードの強さを理解していませんでした。ただ発売当時のスタンダードを席捲したカードであり、初期のパイオニアで実績もあることから歴史資料から考えれば今のパイオニアでもメタゲームに大きな影響を与えるだろうと考えました。
密輸人の回転翼機
禁止改定実施後、パイオニアは解除されたばかりの密輸人の回転翼機を使いこなすデッキは何か?という問いを投げかける環境に突入したと記憶しています。
まず出てきたのはラクドスミッドレンジやグルール機体や各種アグロデッキ等の、元々搭乗員となるクリーチャーが沢山入っているデッキに投入されるケースでした。機体のシナジーがあるパルヘリオンシュートなどで使うのもあります。環境初期は様々なデッキで密輸人の回転翼機が試される環境が続きました。
環境が暫くして徐々に見えてきた事があります。密輸人の回転翼機は搭乗員が必要な性質上、採用されるのはクリーチャーデッキに限られるという特徴があります。
しかしそうしたデッキは結局ラクドスミッドレンジやグルール機体等に弱くなりやすく、密輸人の回転翼機を一番上手く使えるアグロ系のデッキはそうしたデッキに抑え込まれてあまり出てきていません。
またアマリアコンボやイゼットフェニックス等、クリーチャー主軸のデッキに強いデッキも上位デッキに存在したままなので、密輸人の回転翼機自体は強いものの、アグロデッキでこのカードを用いるという戦略自体はそこまで立ち位置が良くないように感じています。
私見では現状このカードを使うなら素直にラクドスミッドレンジやグルール機体を使うのが正着なのかなと考えています。
ディミーアフェニックス
エルドレインの森で手練や錠前破りのいたずら屋といった優秀なパーツを獲得した結果イゼットフェニックスは環境に戻ってきました。元々クリーチャー系デッキに相性が良く、発見コンボとも戦えるとして立ち位置の良かったデッキです。
イゼットフェニックスの系譜に、イクサラン環境になって環境に登場したデッキであるディミーアフェニックスがあります。
イクサランより前から各所で青黒でフェニックスを用いるデッキは細々と試されていたようですが、実際に環境に出てきたのはファストランドが収録されるなどして青黒のマナベースが近年しっかりしてきたのと、イクサランで苦々しい勝利が登場した事が大きいです。
イゼットフェニックスの稲妻の斧というカードはフェニックスを墓地に落としつつ宝船の巡航で得たカードアドバンテージをテンポに変えるキーカードですが、黒で系統の似た効果である苦々しい勝利はそれに近い役割を持ちます。

更に思考囲いや真っ白や黙示録、シェオルドレッドのようなイゼットには無い性質を持つカードが取れる為、イゼットフェニックスが苦手としていたデッキ(ex.ロータスコンボなど)とも戦えるといった魅力があります。
しかし個人的にはディミーアフェニックスは①ライフを失うカードが多くアグロ戦略に比較的脆い②紛争が容易に達成できない為、致命的な一押しをそこまで強く使う事が出来ない③青黒という色の性質上サイドボード後の墓地対策を乗り越える難易度が高いなど、デッキとしての限界や弱点も少しずつ見えてきているのかなと考えています。
アマリアコンボ
チャンピオンズカップファイナルでは発見コンボの陰に隠れていましたが、アマリア・ベナヴィデス・アギーレ(以下アマリア)の登場によって成立したアマリアコンボも環境に残りました。

ゲーム序盤に素早く半無限ライフと全体除去をかましてくるデッキとあってアグロデッキに有利なのがこのデッキの特徴であり強みです。またクリーチャーコンボである事から一見妨害に弱そうな見た目をしているものの、集合した中隊や召喚の調べをインスタントタイミングに撃ってコンボを揃えられ、また構成によってはクリーチャーのビートダウンで勝つプランも取れ、戦列への復帰のような除去に強いカードを採用できるなど、見た目以上に妨害に強いデッキです。
特にアグロデッキへの強さが突出しているデッキで、先ほどの項の話ともリンクしますがこのデッキが上位にいる限り密輸人の回転翼機を用いた純粋なアグロが上位に出てくる事は無さそうと感じています。
青黒デーモンメック研究日誌
俺はよくスタンダードで使われているカードを研究してパイオニアに持ち込む事をやるのですが、今回のイクサランでもスタンダードで気になるデッキが出ていました。「青黒デーモンメック」と呼ばれていたので本稿では元のリストに敬意を払ってそう呼びます。元のリスト(スタンダード)は下のリンクのスイスラウンド9位のものです。


アクロゾズの放血者を精神連繋メカに乗せると、メカが放血者のコピーになってなんと打点が4倍になり、パワー4なので16点も相手のライフを突然奪うというコンボデッキです。スタンダードのデッキですが、2枚コンボで16点という青黒らしからぬ破壊力のあるコンボに魅了されて早速俺もパイオニアで使うことにしました。
スタンダードのこのデッキでも使われている硬骨漢の船員はデッキを海賊とアーティファクトに寄せる必要はあるものの、パイオニアでも十分通用するポテンシャルがあると思います。また、こういうカードを入れないとコンボパーツを集める手段に困る事から、このカードを使いつつパイオニアに適合させていくことにしました。

パイオニア要素として思考囲いや致命的な一押しを採用しつつ、勢団の銀行破りを使っています。このコンボを回していくと、メインはコンボが決まったりして勝てますがサイド後は相手が除去を構えてきてコンボが通らなくなる試合が散見されました。それに対応するために俺は勢団の銀行破りを構えてターンを終え、リソースを稼ぐという動きでずらしていく事ができるようにしました。

そんな感じで暫くこのデッキを調整しており、晴れる屋にリストが載ったりしていますが、結局俺個人としては以下の問題を解決できませんでした。
①やっぱり除去を構えられると厳しい
→銀行破りは悪くない選択ですが、引けてないとあまり解決しないですし、これだけでサブプランというにはちょっと弱いなと感じています。
②硬骨漢の船員が外れるとやばい
船員のヒットするものは海賊とアーティファクトだけなので、まともにデッキを組むならデッキを寄せ切ってもヒット率には限界があります。このカードを出して何もヒットしないと大分負けが近づくのが気になります。
③硬骨漢の船員を採用している為拡張性が低い
海賊とアーティファクトのカウントを確保しなければならない都合上、デッキの拡張性に限界があります。またサイドボーディングも海賊とアーティファクトを減らしすぎてはいけないので、このカードの為に難しくなっています。しかし全くもってコンボパーツを探すカードがないのもそれはそれで厳しいです。よって今後青黒デーモンメックをパイオニアでやるならこのカードに頼らないコンボパーツ集めが可能な構築が求められます。
このデッキはコンボパーツ以外の内容は自由なので、まだまだ研究の余地は残っていると思います。この記事では深く言及しませんが海賊型以外にも黒単アグロにコンボ要素をタッチした型、吸血鬼で固めてみる型等色々試しました。後学の為にこのデッキが成立する為に必要な要素を書いておくと、
①除去を構えている相手への対応
しっかりと戦えるデッキにする為には、コンボだけでなく除去に強い別軸の攻め筋が何かしら必要だと思っています。また、除去に強いカードと言っても顕在的防御やタミヨウの保管やとんずらのような局所的に除去に対処するカードじゃダメです。エシカの戦車や婚礼の発表みたいな、1枚で除去にとても強いカードが求められています。そんなカード青黒にあるのか?何か思いついた方いたら連絡ください。ついでに俺のディスコ入ってください。
②コンボパーツを集める
青黒の色の合うデッキに闇雲に入れてもたまにコンボが揃うだけです。たまにコンボが揃うだけでいいならいいのかもしれませんが、現実的に運用するには、ある程度デッキを掘ってコンボパーツを集める手段は必要だと思います。今回の俺はスタンダード的な海賊ギミックを用いましたが、もっとパイオニアっぽくするなら考慮+帳簿裂き+時を越えた探索(宝船の巡航)のような集め方もありかもしれません。いずれにせよコンボパーツにアクセスする手段の乏しいデッキにデーモンメックのコンボを入れてもあまり決まらないのでがっかりすると思います。
③相手のライフを16にする
当然ですが初期ライフの20から相手のライフが動いてないと16点叩き込んでも勝てません。パイオニアはショックランドのショックインはあるにせよモダンみたいに相手がフェッチランドでライフを消費してくれる訳ではないので、差し引き4点分は適当に小突いてダメージを与える必要があります。この為、素直に考えればコンボ以外にクリーチャーが少しは入っている事が望ましいです。どうせコンボ前に除去を相手に使わせないといけないので、その点でもクリーチャーが必要です。
あとは備考として、密輸人の回転翼機や地底のスクーナー船といった機体を投入する手もありますが、個人的にはしっくり来ていません。機体を入れすぎると盤面に機体だけ残って攻め続けられなくなるリスクがあります。
このデッキについて俺が書ける事はこのくらいです。デッキとしてしっくり来たらまたnoteで解説記事書きたいなと思っていましたが、個人的には挫折しました。最後に使っていたリストを載せます。

シェオルが入っているのは相手に除去を吐かせる為ですが、相手が除去構えている所にマスト除去カードを飛び込ませると言うプランは有り得るけど良くはないと思っています。この辺のアップデートが出来ればより良いデッキになるでしょう。
現在の青黒フェアリー
青黒フェアリーについては詳細を前回の記事で書いたので差分のみです。現在のリストはこちらになります。

メインボードは前回記事にした時点からあまり変わっていません。密輸人の回転翼機を意識して致命的な一押しを増やし、最近有効なマッチアップが減ったと感じる厚かましい借り手を減らしてスカラベの神を増やしたりと、微調整をしています。呪文どもり以外の追加のカウンターを色々と試していますがどれもしっくり来ずとりあえず否認にしています。また変わり谷が強いとあまり感じないマッチが多かったので構えながら運用できるミレックスを試しています。
サイドボードは大きく変えています。ゲトの裏切り者、カリタスを久々に使っています。ゲトの裏切り者、カリタスはアグロ環境において強力なのと、アマリアコンボにも強いという情報を得たので使っています。漸増爆弾と金線の酒杯は自分のクリーチャーを巻き込みにくい全体除去としてお試し採用しています。

前のリストのように、食肉鉤虐殺事件と言った全体除去を大量に入れて軽量クリーチャーをサイドアウトするプランはそこまでダメでも無いですが欠点も多かったです。眠り呪いのフェアリーはアグロに対しても残したいマッチアップが結構いて残すかどうかでぶつかりがちでした。またラクドスミッドレンジ相手に食肉をサイドインしてたのもそこまでいいプランじゃないと感じます。
サイド後の全体除去が1枚もないとボロス召集等の横並べしてくる相手にかなり厳しくなるのですが、青黒コントロールと違い軽量クリーチャーが巻き込まれるリスクが常にあります。その中でどういう全体除去を採用するかは常に悩みの種です。例えば激しい恐怖を使えばフェアリーを巻き込まずに済みますが、カードパワーは劣るのでタフネス4のクリーチャーを倒せず負けたりします。衰滅だとカードパワーは優っていますがクリーチャーを常にサイドアウトしなければならなくなる。危難の道は早く撃てますがグルール機体などサイドインしても全体除去として不十分な相手も多い。食肉鉤虐殺事件は多少融通は効くものの、やはりクリーチャーをサイドアウトは必要になるといった具合です。
そんな感じで現在は金線の酒杯と漸増爆弾を試しています。あまり試行回数を重ねていないのでこの選択が良いかどうかは分かりません。


終わりに
お読みいただきありがとうございました。来年もゆるゆるとマジックをやっていきたいと思います。宜しくお願いします。良きマジックライフを!
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