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乃木坂46のファン観察記録

 先日友人に連れられ、初めてアイドルグループのコンサートに行ってきた。他のアーティストのコンサートはいくつか行ったことがあるが、アイドルのコンサートは初めて。アイドルのパフォーマンスよりも、楽しんでいるファンの生態にカルチャーショックを受けることになった。異文化に放り込まれたような体験だったので、印象的だった事をここに記録します。
何か感想等ございましたら是非ともお気軽に教えてください。


もくじ
Ⅰ 「コール」という献身
Ⅱ なぜ彼らは暴走しないのか
  理由①信仰に似た恋心
  理由②献身によるエネルギーの発散
  理由③客同士での暗黙の統率
Ⅲ おわりに


Ⅰ 「コール」という献身

 アイドルライブでは、正直ハイレベルな歌唱やダンスは見られないし、今回のライブに関しては曲の多くがおそらくCD音源であった。ファンの人々は何を楽しみにライブ会場に来ているのか。
 アイドルライブにはコールと呼ばれる、いわゆる曲中の合いの手のようなものがある。ファンはこのコールに全力を注ぐ。それは本当に爆発的なエネルギーで、恐怖を感じるくらいであった。会場のファンを観察していると、音楽にノって体を動かしたり少し跳ねたり一緒に歌ったりといった音楽ライブでよく見られる光景はあまり見られず、コール「だけ」に力を注いでいるように見えた。
 彼らがライブに来る目的は、一般のライブのそれとはそもそも異なっていると思った。彼らの目的は、ライブ中「コール」を行うことで推しメン(好きなアイドル)への「献身」をする事なのではないか。ファンはライブ会場という場で、MVやテレビ番組やラジオや写真集などで醸成された信仰≒恋心を「コール」という献身によって相手に直接全力で表現する事ができる。そしてアイドルは誘惑的な笑顔と仕草、発言によって客の恋心にこたえる。ここに非対称的な恋愛関係が成立し、そこに彼らは至福を感じているのではないか。


Ⅱ なぜ彼らは暴走しないのか

 正直アイドルファンに偏見を持っていた。熱狂的で隙さえあればアイドルに飛びつこうとして警備員に連行されるような人々、大げさかもしれないが、そういう傾向の人々なのかな~と思っていた。今回の乃木坂46のライブでは結果的に、私の見る範囲では座席を飛び出したりといった暴走する客の存在は確認できなかった。
 以前行ったセ〇オ〇ライブの際には指定された座席を放り出してボーカルに近づこうと柵まで突っ込む女性が散見された。なぜ乃木坂ファンはあれほどまでのエネルギーを保有しておりながら暴走しないのか。これには3つの理由があると考えた。

理由①信仰に似た恋心であるから。

 客は、メディアを通して作られ(意識的・無意識的関係なく)、各々の中で独自に醸成されたアイドル像=理想像に恋をする。それとの上記の形での恋愛関係が成立してさえいれば、本人は至福の感情を得られる。その理想像に対して失礼な結果になる可能性が想定される行為=暴走は本人にとって許されない。信仰に似た恋愛感情を持った相手を前にした時、客は理性的であろうとする意識が働くのではないか。(畏れにも似ているかも)

理由②合いの手=献身で身体的精神的エネルギーを発散させているから。

 アイドルに対する感情が信仰にまで至っていなかったり、とにかく近づきたいと考える人々もいるだろう。そういう人々も、ライブ中延々と続く合いの手によって身体的、精神的エネルギーが発散され、暴走して突っ込もうという気力体力が削がれるというのも理由の一つにあろう。


理由③客同士で暗黙に統率がとられているから。

 ファン同士が統率がとれていることで、個人的な暴走行為は抑制されていると考えた。そのように考えた根拠として3つほどある。まず、開演前の客同士のコール&レスポンスがあげられる。誰かが推しメンを俺の嫁だと叫び、別の客がそれに反論する。それが何度か繰り返され、しばらくすると観客から拍手が生まれる。
 一般のライブだと終演間際にアーティストが、音楽を通してファンと一つになれて楽しかった等のMCを残し退場するパターンがよくあるが、乃木坂ライブでは音楽を通さずとも開演前から既に客同士に関しては一つになっていた。
 この統率されたファン同士はおそらく相互監視的な関係でもあり、演出上、サイリウムの消灯を呼びかけられた際に、消灯が遅い人へのグチがみられるということもあった。
 コールの存在もファン同士の統率に一役買っているだろう。みんながそれぞれ自由にやるわけではなく、どうやら一定のお作法のようなものがあるらしい。この作法をみんな知っているだろうという暗黙の了解と曲中での実行により、ファンの統率を決定づける。
 これらによる統率のおかげで個人的に暴走するといった行為は抑制されているはずだ。

 以上の3つの理由からファンは暴走せず、比較的治安の保たれた公演になっていたのだと理解した。


Ⅲおわりに

 初めてのアイドルライブであったのにファンの方ばかりが気になってしまって、ライブそのものの記憶は薄くなってしまった。
 次回アイドルのライブに行く機会があったら、事前に推しメンを決めて恋愛感情を生み出して、コールも覚えてから「正しく」楽しんでみたいと思う。考えたことをただつらつら書いてしまいましたが、アイドルライブってこうやって楽しむといいよ!だったり、それはおかしい!などのご意見やなにかご感想がございましたらぜひぜひ教えていただければ幸いです。

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