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北海道登山旅行③利尻山

北海道登山旅行3座目は、なんと利尻に行くことになった。
知床・釧路方面か、もしくは百名山は諦めて中西部の二百名山にするか、いろいろと検討したのだけど、前後で移動の時間が取れそう且つ、天気も他より良さそうだったので、これは行きどきではないかと、利尻を選んだのである。

そうすることに決めた時には、お互い、「利尻…行っちゃう?」みたいなわくわくしたテンションだった。
百名山、全100座の中でも最後まで残りがちな利尻山を、他にもまだ北海道で登っていない山がある中で行くのはちょっとしたタブーのような気がしたのだ。

旭川から稚内まで、ノンストップで走っても4時間かかる道を、割とフェリーの時刻ぎりぎりでひたすら急いだ。旭川のホテルの朝食ビュッフェが豪華すぎて2.5周くらいしていたら、出発が遅くなってしまったのだ…

道中寄り道する暇なんてなく、しかも前を走る自衛隊の車がいやにゆっくりではらはらしながら進み、直線道路での追い越しがどんどん上達していった。
出航20分前という結構ぎりぎりの時刻にどうにか到着し、フェリーに乗船。

フェリーでは今後の予定を話し合った。当初の予定ではテントを持って行き登山口の野営場で幕営しようという話だったが、天気予報がどんどん変化していき、今夜の予報は雨。これじゃあテント泊はきついねと言いつつも、念のためテントは車に置いたままにせずに持ってきた。

宿に泊まる?頑張ってテントで寝る?ふたりで手分けしていろいろ調べるものの、宿はどこも空きがない。もしくは空きがありそうでも登山に対応していない(手荷物預かりや、登山口までの送迎サービスがない)。

たどり着いた答えは、「野営場のコテージに泊まる」であった。
これならば今日のうちに登山口に移動しておけるし、荷物も置いていけて、出費もそんなに大きくない。電波の届くところで早速電話をかけると、「管理人が帰ってしまうのでフェリーが到着次第タクシーですぐに来て」と少し強めに言われた。なんか気難しい感じだねと言いつつ、ひとまず今夜までの予定は決まって一安心だ。

到着が近くなると、進行方向に山そのものの形をした利尻山が堂々とお出ましになる。利尻はわたしが仕事でお世話になっている、かつて大雪山で山岳ガイドをしていた野外活動の先生が「北海道でいちばん好きな山」と言っていたので、期待値もかなり高かった。確かに海に山自体が浮かんでいるその様子は唯一無二のものである。

船が到着し、港から歩いて行ける距離の(とはいえ、そこそこ離れている)セイコーマートで食材や水分を購入。このセイコーマートは島民の生命線なんだろうねとかつて離島暮らしを経験したことがある夫は言う。

そこからタクシーを呼んで野営場まで。無事にコテージにチェックインでき、管理人さんは17時過ぎにすごいスピードで帰っていった。ホワイトな職場だ。

さっき買った食材とビールで早めの夕飯を食べ、20時頃には就寝。夜中に雨が本格的に降り出し、雨音は部屋の中にも響いていた。
予報では朝になれば雨は上がり、登山には支障がないはずだったのだが、翌朝、まだ薄暗い中で起床すると就寝時と同じ調子で雨は降り続いている。

話がちがーう!と思いつつも、雨上がりの時間が遅くなってしまっているだけだろうと、予定通り出発の準備を始める。少し待ってみたものの雨は止む気配なく、これ以上待っていると帰りの船の時間が不安だねと、6時少し前、雨の中を出発することにした。

登山口からほど近いところで、甘泉水と呼ばれる湧水を汲んで口に含む。確かに、甘くておいしい!これはいい。

その後すぐに森歩きが始まる。雨は、普段日帰り登山でこの降り具合だったら絶対登山しないぞ…と言うくらい相変わらずしっかり降っており、あまりの本降り度合いになんと傘を差しながら歩いた。そんなこと初めてであるが、差さずにはいられないくらい、本当によく降っていたのだ…。

これまでの2座と違い利尻山は大半が森であり、足場の良い道が続いたためそれが可能だった。ちらほらと他にも登山者の姿はあり、みんな同じく雨は止むはずだと信じて歩を進めていた。

そして地味に歩くこと数時間。7合目くらいまで同じ調子の登りが続いて、雨も相まってかなりの疲労具合。また、今日の登山は今までの2回よりも標高差が大きくその差は1,500mと、そもそもの行程もハードなものだった。

唯一の癒しといえば、時折姿を見せてくれるシマリスたち。最初は「あ!リス!」と見つけるたびに声を上げ立ち止まり何匹目かを数えていたのだが、通算10匹近くなったところでちょっとめずらしさが薄れてきて数えるのをやめてしまった。とにかくそれほどリスがたくさんいることに驚いた。

シマリスをさがせ!

帰路で気づいたが利尻のご当地キャラはこのリスである。
「名前を当てよう」と夫と予想し、わたしは「リシリス」と言ったのだがはずれだった。「りっぷくん」「りっぷちゃん」とのこと。二人いた。「ぷ」はどこからきたんだろう?

頑張って頑張って10時過ぎに登頂。雨は止む気配なし、もはや修行である。
山頂で行き合った人とも、「今日はダメでしたね」と苦笑いを交わし、一応写真を撮って、でもなんとなく名残惜しくて、雨風吹き荒れる中何故かしばらく山頂に居残った。

雲は一瞬も晴れることなく、こんなコンディションの登山久しぶりというかもしかすると今までで一、二を争う悪さだったかも?としょんぼりしながら下山。
下山時写真が1枚もないことが「とにかく早く下りるぞ」という気持ちを物語っている。

登山口に着くと雨は止んでおり、利尻山を振り返れば山だけがすっぽりと雲に覆われている状態だった。天気予報は決してはずれではなかったのだ。ただ、山にだけ雨が降り注いでいた。

良い天気じゃん…

わたしたちは濡れた服や靴やザックをベンチに広げて洗ったり絞ったり整理したりし、ほとぼりが覚めたところでタクシーを呼び、早めに港に向かった。

街は悔しいくらい晴れていて、なんならむしろちょっといい感じですらある。こんなこともあるんだねーと夫と話しながら、少し空いてしまった時間でどこか行く?何か食べる?と言ってみるもののどうにも気力がわかず、結局フェリーターミナルの周辺や待合所でのんびりして終わった。

待合所にピアノがあったので、2週間後にライブを控えていたわたしはちょっと練習させてもらった(けっこう練習がカツカツで、旅行前は泣きべそをかきながらピアノに向かっていた。完全に長期旅行に行くタイミングをミスった、と思った。わたしにはそういうところがある)。

帰りのフェリーが出港すると、途端、今まで利尻山を覆っていた雲が解けるように山から離れてゆき、やっと1日ぶりにその姿を見ることができた。「今更だよ~」と夫と笑う。ゆっくり寝たいし洗濯もしたいねと、港近くのホテルを予約。名物である「たこしゃぶ」を食べて労をねぎらい、疲れた体を1日ぶりのベットに沈めた。

まだまだ続く!

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