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迫力の歴史超大作「スリヨータイ」

2001年にタイでヒットした歴史映画「スリヨータイ/The Legend of Suriyothai」を見ました。
配信がないのでAmazonで外国版DVDをゲットして鑑賞。
リージョン2の円盤を選べば日本のPCで再生可能です(TVでは再生不可)
以下がっつりネタバレ鑑賞レポですので、これから鑑賞予定の方はご注意を!

本作は日本未公開ですがWikipediaに項目が立っていますね。

時は16世紀。ビルマに攻め込まれ、アユタヤー王朝が亡国の危機に瀕した際、ゾウに乗って出陣し自らの命を犠牲にして王を救った伝説の王妃スリヨータイの物語。
Wikipediaの説明によれば、主役を務めたのは王族につらなる家系の方だそうで。軽々しく配信されていないのはそれが理由なのかもしれません(個人的推察です)
ヒロインはさすがの風格と凛々しさを備えています。

目力がすばらしい

若き日のスリヨータイは遠縁のピレーンと初恋をはぐくんでいましたが、王子ティアンに見初められ結婚することに。王族のおぼしめしを拒むことはできなかったんですね。
ちなみに少女スリヨータイは大人スリヨータイとは別の女優さんが演じており、のちに同じ人がスリヨータイの娘も演じる面白い構成です。

若き日のスリヨータイとピレーン

ティアン王子は高潔な人物ですが、母親の身分が低く王座争いからは一歩引いた立場です。

やがてクーデターによりチャイラーチャーという人物が王座につくと、映画中盤はほぼ、彼の後妻である悪女シースダーチャンをめぐるドロドロ権力争いの物語になります。
ヒロインのスリヨータイはしばらくスクリーンに現れないほど!
シースダーチャンは、宮殿の仏堂守りブンシーと不義密通関係になったあげく、夫チャイラーチャー王を毒殺し、その後を継いだ先妻の息子も毒殺し、愛人ブンシーを王位に就けます。

シースダーチャンとブンシー

実は先日One Dプレカンで予告されたFilm氏とDavikaさん主演の歴史ドラマThe Empress of Ayodhayaはこの部分を扱う予定なんですね。Davikaさんがシースダーチャン、Film氏が密通相手ブンシーことウォーラウォンサーティラートを演じるそうで。楽しみです。

さて、悪女シースダーチャンによって我らがスリヨータイの夫ティアン王子は王毒殺の濡れ衣を着せられそうになりますが、出家して難を免れます。その手があったか!タイで僧は絶対不可侵の存在なのですね。

政治的カードとなりうる出家

やがて悪政に憤る人々に乞われ、不義密通カップル王権に反旗を翻すティアン王子。
その時、味方になってくれるのがスリヨータイ初恋の人ピレーン。感動の再会です。彼は若き日のスリヨータイに“困った時は助けに行きます”と約束していたんですね。

反乱は成功。高潔なティアン王子が王となりめでたしめでたし…とはならないのが、波乱万丈の歴史物語の宿命。
今度は外敵の脅威が迫ります。隣国ビルマが攻めてきたのです。

このあたりは、当時の地理・勢力図が分かっていたら、もっと楽しめたかもしれません。
どうやら国境地帯は戦国時代の日本のように小さな国に分かれて覇権を争っていたようですね。チェンマイ王国の女王と和平を結んだり戦ったり…というエピソードも出てきました。

ビルマ王は白粉を塗り紅を差した姿で描かれています。桶狭間の戦いで今川義元が化粧していた感覚でしょうか。スクリーンタイムは短いですが印象的な王様でした。

ビルマ王

いよいよ本作のクライマックス、タイ軍とビルマ軍の死闘。
ともかく人海戦術がすごい。さすが軍隊が協力しているだけあってエキストラの人数が半端ないです。ゾウもいっぱい。既に大砲がある時代に突入していますから砲弾もガンガンぶっぱなしてます。最近の日本大河ドラマの人数がしょぼい(失礼!)戦を見慣れた目にはオドロキの大迫力シーンです。

見よ この絵面

戦象での戦いは、戦士と御者が分業しつつ乗るシステムなのですね。
前方に乗った戦士が槍で戦い、後方の少し高くなった御者台に座った御者がゾウの操縦を担当していました。よく見ると御者台の後ろにも補助の御者がいる3人乗り体制のようです。ともかくこの巨体を操って戦えること自体が信じられない…

王の首を狙う敵の前に割って入り、獅子奮迅の戦いをするスリヨータイ。
しかし敵の刃に倒れてしまいます。それを目にした兵士たちは王妃の仇を取れとばかりに奮起。タイ軍は勝利を収めます。

戦うスリヨータイ

まさに身を挺して国を救った王妃スリヨータイ。
王が見守る中、なきがらは野辺で荼毘に付されます。
初恋の人ピレーンは、彼女との思い出の花をそっと火葬の炎に捧げるのでした。

興味深い点は、スリヨータイは元々女戦士だったわけではなく、平家物語の巴御前みたいに普段から戦に出ていたわけではないんですね。
鎧兜を着けたのもビルマ戦が初めてだったはず。
でも彼女は“王族が最前線に出ること”がもたらす自軍への心理的効果をよくよく承知していた。王が出れば効果最強だけど、万一王が死ねば治世が混乱する。だから自分が一番危ない所へ出て、王を守る。
終始、スリヨータイが先が読める冷静な賢い女性として描かれていたのが印象的でした。ヒロインだけど、わーっと激情にかられる場面はないのです。
なるほど、真に高貴な人は、ばたばた取り乱さないのだなと思いながら見ていました。

あと何といっても見どころはゴージャスな美術。
実在の歴史的建造物や遺跡を使って撮っているのが画面から見てとれます。そして目に楽しい当時の風俗・衣装。女性が乗る輿は女性がかついでいますが一体何人でかついでいるのでしょう!

ゴージャスな女輿

そしてこれは勝手な想像なのですが:監督さん、「ベルサイユのばら」を読んでいます?
作中アティタヤという王がポルトガル人が持ち込んだ天然痘にかかって亡くなるのですが、その様子がまるでベルばらのルイ15世そのもの。
そして悪女シースダーチャンが旧王家ウートーン家の末裔という設定は、ベルばらの悪女ジャンヌがヴァロア王朝の末裔を名乗っていたのを思わせました。ちょっと深読みしすぎですかね?

とりとめのないレポになりましたが、私的には大満足だった本作。
スケールの大きな歴史ものが好きな方には、ぜひお薦めしたい作品です。
いつか見やすい配信の形で皆さんのお手元に届くことを願っています。

画像© 2001 PROMMITR.


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