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特異的相互作用の不思議

細胞内ではリボソームへの各アミノアシルtRNAの移動、転写因子のDNAへの結合、基質と酵素の相互作用など多数の特異的相互作用が存在する。
これらの特異的相互作用は酵素のkey-lockモデル等で説明することができても、細胞内の多数の物質が存在している中でどのように相手を効率よく見つけ出すのだろうか?
(すべての細胞に含まれるタンパク質を足し合わせると10万種類程で、細胞内はかなりぎっちりしている)

一つずつ結合相手を探していては、結合時間が短くても正しい結合相手を見つけるのに組み合わせ的に莫大な時間がかかる。
例えば、10000の分子の中から特定の2つの分子を選び出す組み合わせの場合の数は49,995,000であり、これが1ペアずつ連続的に起こっていくとすると結合時間が10 msだったとして、すべてのペアを試し終わるのに5.786日かかってしまう。

膜による局所化や複合体の形成等がこの問題の答えになりうるが、それだけでは説明できないタンパク質も多数存在する。
2020年ごろに流行した液液相分離はこれの答えになりうるだろう。

液液相分離は、2つの液体が混ざり合わず互いに排除して2相に分離する現象のことで、膜で隔てられていないコンパクトで流動性の高い領域に相互作用する物質同士が区画化されることで、素早い相互作用が実現される。
液液相分離は核小体、Pボディ、ストレス顆粒などとして様々な組織の細胞内で見られることが分かっており、普遍的に用いられる方法であると考えられる。
このような物理現象が生命科学で流行したことは興味深いし、このような他分野の知見から説明可能な重要な現象は他にも存在しているのだろう。

参考文献

2020年ごろに流行した液液相分離は、素早い相互作用が実現される。膜で隔てられていない領域に相互作用する物質同士が区画化されることで素早い相互作用。核小体、Pボディ、ストレス顆粒などとして様々な組織の細胞内で見られる。

ELYZA DIGESTを用いて要約
サムネイル画像はとりんさまAI(@trinsama)により生成