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松 川 慕 情
一 水草ゆれる 松川の
桜の花が 満ちるころ
愛したつもりは ないはずの
何故かあのひと 懐かしく
小さく名前を 呼びました
二 川面に花びら 流れゆく
葉桜ゆれて 散るころに
恋した訳でもないはずの
何故かあのひと 想われて
そっと瞼を 閉じました
三 おぼろの月と 夜桜が
水面に影を 映すころ
何故かあのひと 忘られぬ
優しい笑顔が 今もなお
心の内に ありました
★ 平成二十二年一月二十五日
©堀口兵策