がく紫陽花
一 しとしと雨の 降る中に
あなたは わたしを待っていた
肩にかかった ほつれ毛が
雨のしずくに 濡れていた
がく紫陽花の 咲く辻に
二 はにかみながら ほほえんで
差し出す傘に むらさきの
がく紫陽花の 花模様
あなたの側に 寄り添うて
清楚で優しく 咲いていた
三 ふたりを包む つゆさめに
いわず語らず 花言葉
変わらぬ想い 胸に秘め
白い小指に 触れながら
とわの契りに 涙した
四 ときのうつろい 花の色
さだめの風に 流されて
変わりて過ぐる 年月に
心の内に 今もなお
がく紫陽花が いとおしい
★平成二十二年七月十四日
©堀口兵策