父記録 2023/6/5
父記録 6/5
晴れ。夏日。
三日間の出張から帰京。
暑さと寝不足でふらふらする。
今日の面会は母とふたり。
「私じゃ。由美子さんじゃ。今日はともちゃんと二人じゃ。」
O先生との面談。
「肺炎の状態は落ち着いているんですが、痰吸引が大体日中3回、夜間3回くらい必要です。特養に戻って夜間痰吸引出来なくなると…現状ではちょっとリスクが高すぎるのではないかと…」
痰の原因について経鼻胃管の栄養液食道に上がって来ないようにするためのREF-P1という粘度調節液導入の提案。
O先生「院長の意見は『今の状態ならば療養型病院の方が安全であろう。特養に戻るなら、なんとか病床の調整をしながらもう少し痰が減るまでこちらの病院にいた方がよいのでは。』とのことです。
病室は状況次第で大部屋に移動になる可能性もありますが…なんとかもう少しこちらに居る方向で考えられたらと」
まだお会いしたことのない院長先生の計らいにいつも胸がいっぱいになる。
O先生「特養でも療養型でも、どうしても面会制限うちよりは厳しくなってしまいますが…」
母「ここでこれだけ面会できたから、もう充分です。」
O先生「ずっと寄り添って来られたんですもんね。
ご本人とご家族にとって出来るだけ良い形になるよう、特養の方とも連携して考えてゆきますから。」
「本当に…ありがとうございます」
母と二人で頭を下げた。
この病院に入ることが出来て本当によかったと思う。
病室に戻ると父はいびきをかいて眠っていた。
「ともちゃんも50過ぎてるんだし、働き過ぎちゃダメよ。楽していけるようにやるのよ。」
母が言った。
「お父さんジュース舐める?」
父は起きない。
「ともちゃん本当に気をつけて。ぐうたらするのよ。得意のぐうたらよ。」
また母が言った。
「お父さん、ぶどうジュース。」
父の口元にジュースを染み込ませたスポンジを当てると父は力強くスポンジを吸い、もっと、と言うように口を開いた。
「お父さん、桃ジュース。」
父は目を開けてスポンジを吸い、また口を開く。何口か吸うと満足そうに目を閉じた。
父はもうあまり喋らない。手もあまり動かさない。拳をギュッと胸に当てて眠っていることが多い。
それでもジュースを舐めて満足そうだったり、気持ちよさそうに眠っている姿を見るとホッとする。
胸がゼロゼロ鳴って咳き込み、苦しそうだと胸がギュッとする。
「ここに居られるうちに会っておかないとね。」
母が言った。
金曜日には、特養でケアマネさん、O先生と三者面談。
今日は福太の七歳の誕生日で6回目の結婚記念日。
ケーキとおもちゃとおやつを買って帰る。
おめでとう。ありがとう。
みんなが健やかでありますように。