四十二年ぶんの指輪〜その2
2019.2.14のブログより
父がゴローさんに結婚指輪をお願いしてから一年ほど経ったある日。
突然ゴローさんから父に電話があった。
父は相手がゴローさんだとわかった瞬間にビッ!と背を伸ばし、「…はい!…はい、一人です!」
と答えた。
「こども、何人?」と訊かれたそうだ。
「じゃあイーグルを三羽飛ばそう」とゴローさんは言って、電話は切れた。
父は緊張しっ放しだった。
そして「ああびっくりした。急に電話かけて来るんだもんなあ…でも、あともう少しで出来るみたいだなあ」と嬉しそうに言った。
それが父とゴローさんの最後の会話になった。
それから数ヶ月後、父は一人で店に居る時に動けなくなり、救急搬送された。
その後しばらく入院し、退院後母と話し合って、店を閉じることを決心した。
最後の力を振り絞って、最後に家族で三日間だけ営業した。
急なことであまり広くはお知らせ出来なかったけれど、その三日間、店内は別れを惜しむ人々でいっぱいになった。
それから三カ月あまり、長野で療養中の父の元にゴローさんの訃報が届いた。
父は動かぬ体を引きずり、母と二人、告別式に参列した。
それから四年。
紆余曲折を経て幡ヶ谷のアパートの一室で私がT&Yを再開し、やっと少し落ち着いて来た頃。
「あの指輪、どうなったのかなあ」と父が言った。
「どんなに作りかけでもいいから、もし見つかったら欲しいなあ…」
私は散々逡巡した挙句に、勇気を振り絞ってゴローズに電話をかけた。
予想外に長くなったので続く…
次で終わります。
to be continued...
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