四十二年ぶんの指輪〜その1
2012年に私がブログに書いた記事を紹介させてください。
父・村田高詩の師匠・ゴローさんに対する想いを少し、知って頂けたらと思います。
*ゴローさん:高橋吾郎さん。東京・原宿のシルバージュエリーブランドgoro’s 創始者であり、日本に於けるインディアンジュエリーブランドの先駆者でありカリスマ的存在。
【四十二年ぶんの指輪】
2012.1.19
唐突ですけど、父が母に結婚指輪をプレゼントするのだそうだ。
四十二年前の日付けを入れて。
結婚当時お金のなかった父は、母が指輪に全くこだわりがなかったこともあり、形ばかりの指輪を送ったそうな。
さっき聞いたら七百円だったとか。
当然思い入れも大してないのでその指輪はお互いどこかに無くし、子どもが生まれたり、父がgoro’sに入ったりしたのち二人で店を出したり、店を移転したり、子どもがやがて大道芸人になったり、この不況続きにやめるとかやめないとか言いながらも踏ん張り続けたりなんだりして店の方ももう三十四年。
当初は革製品の店だったのが今は銀製品メインで父は主に彫金担当なのでもちろん自分でも指輪は作れるのだけれど、彼はその指輪を師匠のゴローさんに注文したそうで。
ゴローさんは父が未だに恐れ、深く深く尊敬し続けている大師匠。
六十をとうに過ぎても、未だに「怖い」と思える師匠が健在だというのはすごいことだな、と常々思う。
そんな父はごくたまの節目に、母にゴローさんの作品を贈る。
四十二年の歳月を経て、父と母の指に届くその指輪は四十二年分の数えきれない色々を含んで深くあたたかく複雑な光りをもって瞬くだろう。きっと。
ゴローさんの作品は一年待ちもザラだそうなので、届くのはまだまだ先になりそうだけど、私も今からとても待ち遠しいです。
という訳で指輪の写真はまだないのでうちの店の写真でも。
私も時々手伝ってます。お近くにお越しの際はよかったら遊びにいらしてください。かわいい店番犬もいます。
2019.2.12追記
この時はまさか三年後に自分がT&Yを継ぐ決心をするとは思いませんでした。
この翌年秋、STUDIO T&Yは閉店しました。
この翌年末、ゴローさんは天に昇りました。
そしてこの結婚指輪がどうなったのか、のお話はまた後日。
to be continued...