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第三回企画感想!

こんにちは。創作物BAR【アトリエ】の一文字零です。皆様、大変お待たせしました。第三回企画の感想です。

企画にご参加くださった方、本当にありがとうございました。前回前々回に勝るとも劣らない力作揃いで、無事夏の暑さをぶっ飛ばすことができました。

それでは、以下に皆様から頂いた作品に対しての感想を並べさせていただきます!(順番は参加順でも何でもなく、特に決まりはございません)
前回、前々回と同じく、各作品につきわこりか零のどちらかが代表して感想を書いております。
それではどうぞ🥂
(※参加作品の中に総文字数一万字越えの作品がございました。該当作品に関しましては、一万字時点での感想になります。ご容赦ください)


雲丹屋様【不純な聖女ですが精一杯祈らせていただきます】

終始皮肉った言い回しが多く、楽しく読む事ができました。外面に出ない心情描写に皮肉っぽい言い回しを多く入れる事で、主人公の肝が据わった性格を表しています。本作のような一人称視点の物語で、主人公のキャラを立たせる事は難しいです。何故なら、他の登場人物とは異なり、唯一客観的視点で書けないからです。ところが本作はむしろ主人公のキャラが一番濃いようにさえ感じました。おかげで全体を通し、読んでいて全然飽きません。尚且つ物語の展開が遅くなりすぎる事もない……。作者の方は相当お話を書き慣れている方なんだな、と勝手に想像してしまいました。さて、本作はタイトルからも分かる通りラノベモチーフになっています。にもかかわらず一種の小噺のような構成で、面白いと感じました。

わこり


アホ屋のアホマン様【伯父と足音】

「足」がキーワードになっている本作。主人公の抱えた障がいや度々登場する比喩が特徴的です。
闇のある主人公の環境が、幸か不幸か、主人公の命を繋いでいった過去からは、主人公の葛藤を想像させます。
文体に関しては、文学的な語りとどんよりとした空気が、物語全体の緊張感を増幅させているように感じました。
また、読者に解釈の余地を残す書き方は、いかにも掌編らしい書き方です。
ジャンル区分としてこの小説を言語化するなら、ホラーとミステリーの混合といったところでしょうか。「一体どういうことなんだろう?」と疑問を読者に植え付ける一方で、終始不気味な世界観が続いています。
雨と灰色による重苦しい雰囲気と、掌編ながら濃厚なミステリーの味を感じさせてくれる作品でした。

一文字零


タケミヤタツミ様【ティーカップな少女の棺】

最初に、文章がお上手だなと感じました。こういう作品は個人的に大好きです。情景描写や心情描写を始めとした地の文が多く占めているというのに、すんなり読む事ができます。言葉選びが秀逸で、必要な情報だけ選び抜いて書かれているからですね。例えば冒頭の紅茶に関する描写。私も紅茶店に勤務経験があるのでよく分かるのですが、確かにローズティーの香りは他のフレーバーティーに比べ香りの主張が強いです。だからこそミルクティー……。本来フレーバーティーはストレートで味わう事が推奨されているケースが多く、またローズティーは高価に扱われているブランドが多いからこそ、「背伸びして味わった」という説明がしっくり来ます。導入がしっかりと効果を発揮している訳ですね。改行の仕方や、後半に向けて地の文と会話文の比率を徐々に変えている点など、作者の文章力や構成力が前面に押し出された作品だと感じました。

わこり


雲丹屋様【白い結婚、黒い悪妻 〜贅沢は素敵だ】

(10000文字まで読了)
異世界ファンタジー。物語は、主人公が若い頃夢中になっていた長編ファンタジー小説の中に転生してしまうという奇抜な展開から始まります。主人公は物語の知識を生かしながら、順調に人生を歩んでいきます。
長編ファンタジー小説の中の世界ということで、本来の主人公と、語り口としての主人公の二名の視点が交互に描かれる構成が印象的でした。
また、作品内の軍事的な闘争や政治にしっかりと向き合っていることを全体から感じ、それらの作り込まれた設定は、主人公が転生してきた世界が長編小説の中の世界であるというリアリティにも繋がっていると思いました。
この物語の中で印象的に描かれる政治的な要素は、非常に広大で密度が高く、キャラクター達の血の通った生々しさが伝わってきました。
多角的に描かれた人物の関係、緻密な設定と斬新なアイディアが魅力のファンタジー作品。転生ものやファンタジーが好きな方は是非。

一文字零


zaku-zaku1972様【時を超えた白百合は、美しく儚く咲き誇る】

(10000文字まで読了)
珍しく冒頭から「です・ます調」で始まる作品。語り手によって語られる「物語」感が強く出ています。読者に世界観をいち早く理解させるテクニックとして考えられていると思いました。昨今流行りの「理不尽な目に遭う→タイムリープしてやり直し」という系統の話だとすぐに分かる冒頭で、かなり読みやすい作品です。本作は主人公が処刑されるシーンから始まります。何故処刑されるのか……という説明が地の文で淡々と語られるのですが、挿絵を適度に挟み、読者が退屈しないよう工夫がされています。残念ながら規定通り一万字時点での感想となりましたが、冒頭だけでも節々に作者の技術が伺える素晴らしい作品でした。

わこり


朔花様【薬草使いの魔女と箒乗りの魔女】

現代もの。大人と子供の間、高校生の主人公茉莉子は、幼い頃からの友人である晴美とマンションの屋上で会話を交わす。
初めは同じだった二人の生活の環境が、成長するにつれ少しずつ変わっていき、お互いどこか遠くに行ってしまったような気持ちになっているのを、練られた構成と表現で描かれています。
終始「魔女」をキーワードとして描いていることによって、主軸の分かりやすさと物語全体の感動が増している様に思いました。
青春時代を描いた現代ものは個人的に大好きなので、共感しながら読み進めていくことができました。
二人の魔女は何を感じながら生き、お互いをどう感じていたのか。複雑な心理描写が魅力の作品です。

一文字零


金星タヌキ様【夏休みの冒険~Train,Dance,&Real kiss~】

「、」ではなく半角のスペースを使用している点が面白いと思いました。文章から絶妙に大人っぽさが抜けている気がします。おかげで地の文まで小学六年生らしさが出ていました。本作は夏休み、お姉ちゃんと過ごした日の事が絵日記モチーフで綴られていきます。この絵日記というのが実に面白い。小学生らしい言葉足らずな感じが秀逸に再現されており、物語の輪郭を上手い具合にぼかしています。だからこそ四話目の最後、不穏な雰囲気に驚かされ、もう一度読み直してしまう……。全体を通して構成がとてもよく考えられていると感じました。短編の特性を上手く活用しています。

わこり


雪月風花様【蒼天のグリモワール 〜最強のプリンセス・エリン〜】

(10000文字まで読了)
異世界ファンタジー。とにかく才色兼備なプリンセスが、立ちはだかる壁を次々と突破していきながら、自らの復讐のために旅を続けるストーリー。
主人公であるプリンセス、エリン=イーシュファルトの強さに爽快感を覚えつつ、彼女に降りかかった不幸と宿命を、持ち前のメンタルで突き破ろうとする姿勢は、応援したくなるようなヒーロー性と明るい作風に繋がっていると感じました。
「強いプリンセス」どうやら世の中では流行ってる様ですが、この小説からは流行と言うよりむしろ、どこか流行り廃りを超越した人間としての強さを描いているような印象。
実は背後に重苦しいストーリーが秘められているので、今後の展開も気になります。
最強のプリンセスの活躍が見たい方は是非。

一文字零


アホ屋のアホマン様【化粧】

百四十字小説が寄せられる事は珍しいので、実は嬉しかったりします。さて、本作のタイトルは「化粧」です。主人公が母にした「化粧」……これこそが作品の肝でしょう。看護師が患者の痣を隠すためにする化粧。当然、通常の化粧とは訳が違います。では、この「化粧」とは、一体何を指すのか……? 残念ながら、私ではこれといった答えに辿り着く事ができませんでした。十中八九、私の知識不足に寄るところだと思います。これかな? あれかな? と候補は色々浮かんだのですが、どれも確信には至りませんでした。百四十字小説におけるもっとも重要な部分はオチです。そのオチが理解できないというのは致命的です。本当は作者に話の説明を聞きたいところですが、それをしてしまうと百四十字小説の醍醐味が失われてしまいます。正直、めちゃくちゃ悔しい……。このような感想になってしまった事、作者の方に深くお詫び申し上げます。

わこり


小野ショウ様【楽しい夏休み】

現代もの。全編通してほのぼのとした雰囲気が伝わってきました。底抜けに明るい性格の主人公は、特に大きなイベントも起きず、可愛らしく日常生活を送ります。
ポップな文体と適度な改行も、読みやすさと雰囲気づくり両方に貢献していると感じました。
主人公の人生はこれからも続いていくでしょうが、変に続きが気になりすぎて「あれ? これで終わり?」と言う様な感覚にはならず、読み切りとしての完成度の高さを実感します。
小説は作品によって色のイメージが自然と付いたりするものですが、今作はずばりビビットな青、といった印象で、まさに澄んだ夏の空の色を想起させる作品でした。
主人公の前途多難な日常と可愛い笑顔が溢れる作品でした。

一文字零


雲丹屋様【転生上等!悪役令嬢だろうが勇者だろうが私が助ける!】

ラノベらしさが前面に出ている作品でした。開幕の「解せぬ。」のくだりや「ろくな説明もなく転生だ。」など、妙に達観している感じなどがまさにそれです。主人公は年相応の痛々しい性格なんだな、とラノベでよく用いられる主人公像がすんなりと入ってきました。同じく物書きなので分かるのですが、こういった文章を書くのは難しいです。所謂なろう系など、王道のラノベを読み込まないとこのような文章を書く事はできません。作者の方はしっかり業界研究をされているんだな、と感心いたしました。さらに面白いのが、作風はラノベなのに短編という点。新鮮味を感じると共に、作者の技量の高さが伺えます。普段長編を書いている方はよく「短編は難しい」とおっしゃいます。しかし本作は中盤までのごちゃごちゃ感とは裏腹に、きちんと最後はまとまり良く物語を締めています。個人的にこういったラノベ調の短編作品というのは初めて目にしたので、大変面白かったです。

わこり


ご来店ありがとうございました!

第三回企画の感想は以上になります。
今回は歴代最多の参加作品数で、スタッフも大変喜んでおります。
次回企画は来月から募集開始を予定しております。
今後とも何卒、創作物BAR【アトリエ】をよろしくお願いいたします!
スタッフ一同、皆様のまたのご来店を心待ちにしております🥂




9月ギリギリの更新になってしまいました。申し訳ありません。そして次回の企画、実はまだ全然考えてないんですよね……
スタッフ一同、新企画を常に模索中ですが、企画内容もどんどん募っていますので、「これやってほしい!」「こんなアイディアはどう?」などありましたら是非気軽に、創作物BAR【アトリエ】のXのリプやDMにお願いします!
(第二回の時のわこりさんとほぼ同じこと言ってる)

(一文字零より)

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