ことし愛でたものたち
この12月、久しぶりに本当の師走というものを味わっていました。
脚本を手がけた明治座公演『応天の門』の本番、渡辺えりさん古稀記念公演『鯨よ!私の手に乗れ』の稽古、そして来年4月上演予定のチーム徒花『月曜日の教師たち』のプレ稽古がほぼ同時に始まり、月の初めは風邪にも悩まされた今月。
今年の決算総まくりといった感じで、NOTEはおろかSNSもほぼ手つかずの日々でしたが、ようやく年越しの実感が迫っています。
今回も、毎年のようにその年関わった公演などを振り返ろうとおもいましたが、芝居に限らず今年私が愛でたものについて非常に大雑把に列挙していくことにしました。なぜなら、ここ半年くらいは描きたいこと・ネタはちまちまとあれど、それが大量にたまりすぎて逆に何も書けない・・・みたいな、脳内コストコのような状態が続いていたからです。
関わった、出逢ったことのひとつひとつに感謝を述べ始めると止まらなくなります。アカデミー賞の授賞式で感謝を述べ忘れないよう慌てる俳優たちを見たことがあるでしょう。もう時間制限のオーケストラがなり始めています。間違いなく年を越せないので、感謝は心で叫びながら、どんどんいきます。
◎2024年愛でたおしごとアワード
「頑張って仕事を続けていくと、時々、作品にも人にも恵まれる、ご褒美みたいな舞台に出逢えることがあるんだよね」
岡まゆみさんがナビレラ中にいってくれたこの言葉につきます。今年の言祝ぎ大賞。どの場面も人も恋しい。韓国の天才作曲家Miaちゃんが創ってくれたメロディもを思い出すと、いつでも胸が温かくなる。
「もしも今夜雪が降ったら……」ああ、おかげでちゃんと冬を越せます。
PLAT職員の一人、Vちゃんが来年の春に退職します。
アイドルのようにかわいい顔をしてるのに、やすやす愛想笑いしたりしないところが好き。オラつく様も一丁前で、「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」っって感じで子どもサウザーのごときVちゃんだけど、人一倍、情が深いVちゃん。
いつだったか、知名度もまだまだの私がPLATの芸術監督でいいのかしら、とこぼしたときがあった。そしたらVちゃんは「バラさん、知名度で集まってくるわけじゃなくても、訪れた人がバラさんを通してこの劇場を好きになってくれて、そんな人たちが少しずつでも増えていってる。それでいいんです」あのつぶらなクセしてやけにキリッとした目つきで言ってくれた。雲が晴れるような思いがしたものです。Vちゃんに今年のサウザー大賞を。
入江さん、ミッキーをやらせてくれてありがとう。
熱しやすくしぶとく、乙女思考でふざけがちで北島マヤ気取りの演劇少女。それはまんま自分のように思えたし、今もどこかの高校の講堂で部室で、誰が褒めてくれるわけでもないのに、ちびるほどゲラゲラ笑いながら、時にはぐずぐず泣いたりしながら、むりやり難解な戯曲を読み解けもせぬままに、情熱に突き動かされて必死に稽古しているあの子たち、日陰で熱く燃える、全ての演劇少女たちのようでありました。
その子は今も私の中にいる。
この先もずっといます。
演劇が好き。
恥ずかしげもなく気づけたことが、今年の大きな大きな僥倖でした。
だから私は心に住む演劇少女を眠らせない。
本番は一度も緊張しなかった。そんな風に舞台に立てることもあるのかと驚くほどだった。何なら、見学に高木稟さんやKAKUTAの爽子が観に来てくれたときの方が緊張していたかも知れない。入江さんの力なんだろうな。
そうそう大きく間違えることはなかったけれど、たとえ何かがブイッとずれても軌道修正していけるという安心感がありました。
『演劇部のキャリー』後に観ることの出来た、入江さんのパンクスタイル『帰郷』や『ブロークバックマウンテン~クリスマスバージョン』も素晴らしかったです。
明治座さんから、「平安時代にはお強いですか・・・?」のようなお問い合わせを頂いたとき、
無理無理無理、ぜんっぜんわからない、え、陰陽師がいる時代であってる?
レベルだった日本史超弱者の気の毒な私にとってこの作品の脚本に挑むのはなかなかにハードな挑戦でしたが、漫画原作がそもそも力強く見事な構成で綴られているので、実際執筆に入ってしまうとそこまで悩むことはなかった。
けれど摂関政治について、応天門の変について、菅原道真公の人生、伊勢物語…などなど、あまりにわかっていなさすぎたので、もう一から勉強するしかないと思い、学生時代の不勉強さを恨みつつ、最初は『まんが日本史』から学習を開始するというていたらく。
こちらのチャンネル、松本先生の講義には大変お世話になりました・・・。
わかりやすくて面白かった!
◎愛でた映画・ドラマ・アニメ/配信/ゲーム、乱雑ベスト10
今年上映されてないものも含め、今年になって、いやあ、素晴らしかった・・・と愛でたものたちを順不同で。ベストワンは最後に。
そして栄えある、今年愛でたベストワン映画は、
はあ?いまさらすぎん??今年?見たの?ハア?
本当にすみませんでした!!!
もうかれこれ15年くらい前、友人に激しく勧められたのに、「京劇?歴史大作?なんか難しいのかな?」とか思ってみてなかった自分ばーーーか!!
それからここ数年、配信で探してもなくて、もうTSUTAYAの期限切れてるしな・・・と思って見なかった私、ばああーーか!!
レスリーチャンが・・・レスリーチャンがこの世界にいたその時に・・・私ときたら・・・何してた・・・?マリオカートとかやってたんか?
とはいえ、あまりに儚く切ない美しさ、苛烈な愛、文革の悲惨さもあわせて、若い時分には受けとめきれなかったかも知れない。
高山奈央子、ありがとう(15年以上前に進めてくれたKAKUTA劇団員)。
今年もお世話になりました。
今年愛でたものたちは、すなわち、これから先も愛でていくものたち。
出逢ってしまったら、そんなに簡単に手放せないものです。
手放さなくていいです。
抱きしめて着込んで胸の中にギュウギュウに詰め込んで、
来年も向かっていきます。
来年愛でる予定のものたちは、取り急ぎこちら!
本番迫り、もうドッタバタです。
再演ですが、やっぱりこの戯曲って素晴らしいなあ・・と思ってしまう瞬間が何度もある。えりさんの、演劇人たちの、なんつう深い愛だろうと稽古しながら涙が出てくることがあります。
どうか、お時間ありましたら是非観にいらしてください。
こちらのnote、つい芝居の振り返りになってしまいがちで、今年は描くたびに長文になるので気合いを入れるクセがついてしまって、逆に書きづらくなってしまっていました。
来年からは、もっと、浮かんでは消えていくあぶくのような、ささやかなことを気楽に書き込みたいし、文章メイン、または音声コンテンツなんかも挑戦するような、そんな場所をこちらとは別に、新たに創ってもいいかなとも思っています。
その時は気が向いたら覗きに来てくださいね。
それでは皆さん、来年もどうか健やかで、今よりもう少し自分やみんなに優しく穏やかな気持ちでいられるような、愉快な、良いお年をお迎えください!