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1月4日

ああ、もう、書けない書けない。
同じページを行ったりきたり。たった数行で行き詰まり、心がくじけ、自信を喪失する。休憩しておやつでもつまみながら映画の一本でも見ようか、なんて数日前まではやっていたけれど、もはやそんな余裕もない。
というか、机から離れる、と言う行為だけで焦ってしまう。「今いて良い場所」候補リストから、リビングがついに外されてしまった。
テレビを避けると言うより、こたつという危険なゾーンがあるからだ。あそこにハマると普段でもなかなか出られない。
「一眠りしてすっきりしよう」と日に何度も通った寝室もそろそろ危ない。寝ることに罪の意識を感じている。それでも開き直って眠ると、たいてい寝過ぎてしまい、二度寝の折に悪夢を見る。
風呂場はOK。お風呂の中ではスマホで何を見てもいいので、やたらとお風呂に入ろうとする。だってゆだっちゃう前に出なくてはいけないから。どれほど根気強く半身浴しても、居続けるには限界がある。
しかしお風呂の後は、髪を乾かしたりスキンケアをしたりと付加的に時間がかかるから、やっぱりそのうち焦ってくる。
台所もOK。ただし、ここはあまり心が安らがない。料理をして気分を紛らわすなんて芸当が出来ないし、いざ料理をすると人一倍時間がかかるからだ。よって猫の配膳のためか、飲み物やスナックを取りに行くときだけ。

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しかしだ。そうして居場所が限定され、覚悟を決めて書斎にこもればこもったで、猫たちがずかずかと入ってくる。うちには三匹猫がいるが、そのうちのひとりが、ドアの開け方を知っているのだ。なので、閉めても閉めても「まいど!」と声でも挙げそうな勢いで無遠慮にガチャッと開け、ぞろぞろと三匹揃って揃って入ってくる。
どういうわけかみんな、部屋は他にもあるのに同じところに集まりたがる。そんなに私のことが好きなのか?少しだけうぬぼれる気持ちもあるが、正直こればかりは迷惑だ。気が散って仕方ない。煙草を吸うから同じ部屋にいないで欲しいと思っているのに、お構いなしで、パソコンの前をうろついたり、いかにも煙が行きそうなシェルフの上で寝たり、膝の上に乗ろうとしたりする。末っ子猫はジッとしていられないので、他の子らにイタズラを仕掛けてケンカを始める。追い出してもガチャ。彼らが飽きて別の部屋に行く頃には、私もこの部屋に限界になっている。

ああホテルにこもりたい。
執筆のためにホテルを借りるときは小さなビジホで、ベッドとデスクの距離が一メートルも離れてないから、書くか、寝るか、スマホで何か見るか、それしか出来ない。やれることの少なさが良い。あと、今この一分一秒にはお金がかかっていますよ!チャリンチャリン!!という圧力が、嫌が負うにも執筆に向かわせる。
だ、け、ど。今この時期、ホテルにいそいそとこもる自分を考えると、また背中が薄ら寒くなる。もし、それでも書けなかったら?ホテルで何もせず帰ってきたことが何度もある。そのときはまだ時間も財布もやや余裕があったが、今はどちらも猶予がない。こんな時期に、追い詰めても書けなかったとしたら。それを想像するだけで震えが来て、ホテルの予約も取れないでいる。

ああ、描きたい描きたい。描かせて描かせてください。
書ける書ける。きっと書ける。
書ける書ける書ける書ける描かせて描かせて描かせて描かせて描かせて。

ブラインドタッチの自主練みたいに繰り返しこんなことを書くのは、自分が今、止まっているのが思考だけで、手の運動と反射神経で書くこのような文章ならいくらでも書けるのだと言うことを自己確認している。
だから、思考を動かさねばいけないのだ。思考を……。
思考を動かせ思考を動かせ良いこと思いつけ良いこと思いつけ、

良いこと、思いつけ

ちょっと気分が「シャイニング」みたいになってきたからこの辺でやめる。
REDRAM!

(追記)結局ホテルにこもることとなり、しかしそれでも終わらず、資料と荷ほどきもままならぬ荷物で溢れた部屋に今日も猫が入ってくる。

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