メタ閃光ばなし。
もう、いいよね・・・?(チラリ)
皆さんこんばんは、底根八起……いや、桑原裕子でございます。
いよいよ冬の気配が近づいてきた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
ハキコは、いや違う、八ラは、いやおかしい、バラ、ハラ、ちがうハキこ、バラ子やめてハキコ底根はきこ底値はキキキききき起立れいいいいいいいいいいいいいいいい青和いうアウw羽wq1
……すみません。エラーが起きました。
役とちゃんとお別れをしないとこういうことが起こるのです根(怖いよ!)
皆さんと逢えなくなってから、二週間が経とうとしています。
毎日あんなにもみくちゃになっていたどんづまりのみんな。
お別れの挨拶もないままにある日突然逢えなくなり、誰もいない荒野にぽつねんと放り出されたハキコ。
イーグルアイ(鷹の目)で見渡してもひとり……。
獰猛なキツネザルを肩に乗せ、カラス飛び交う茫々と広がる昭和葛飾の荒れ果てた大地を彷徨っておりました。
そろそろ思い出語りのひとつやふたつ、してもいいのじゃないかしら。
何より観に来てくださった皆さんにお礼のひとつも言えていません。
千穐楽の日、既に向かっている道中でお報せを聞いた方にも、出かける支度中にびっくり&がっかりされた方にも、劇場前まで来てくださったにもかかわらず、お目にかかれなかったあなたにも。
そしてご心配頂いた皆様、既にお越しくださった皆様。
本当にありがとうございました。
ハキコは涙を流しております。蓄膿症ではありません。心の涙ですよ。
ダイオウイカのように透き通るクリスタルの涙ですよ……。
というわけで、本日はわたくし桑原裕子 a.k.a.「分福茶釜」の異名を持つ葛飾随一の女番長、商工会代表・底根八起子の目線にて、少しばかり「閃光ばなし」を振り返る時間をお許しくださいませ。
本当に閃光のように散ってしまった大千穐楽、いやむしろ、火花閃く間もなく「忘れてもらえないの千穐楽」となってしまった舞台のご挨拶に代えて。
ハキコのお題「ある日の公演ルーティン」
一ヶ月以上も公演を行って参りますと、我々俳優陣もスタッフも、ある一定のタイムスケジュールに沿って動くルーティンができあがって参ります。
今回はその流れに沿って様々な思い出をお話しして参ります。
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朝。劇場隣のベローチェにてカフェラテと”ピーナッツ・バラー・サンドウィッチ”を購入して劇場へ。
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キャストは皆ヨガマットを持参してのウォーミングアップから始まります。
皆で集まれる時間はこのくらいしかないので、昨日の公演の話や今日のことなど、体をほぐしながら(もちろんマスク装着で!)あれこれ語らいます。
(黒木)ハルさんが、朝は声が出ない~だのといいながら猫のように寝そべってウナウナしています。彼女の迫力ある声が出なかったことないんですが。発声しながら最後の方はトトロの鳴き真似とかしています。ハキコも負けじとメイちゃんのおばあちゃんの真似をします「こらカンタ~!」
ラジオ体操は毎日第一と第二を。
ハキコは第一に飽きてしまったのでたいてい第二から入りますが、是政座長は第二をお気に召されて覚えたいとのこと。ワタクシ以前、別の舞台で「ラジオ体操の女神」というよくわからない役を演じたことがございますので、ちょっと知ったかぶりで第二のムーブを教えて差し上げましたところ、やがて先生と呼んで頂くようになりました。
しかしワタクシが間違えると座長も間違えるので、神経を研ぎすまさねばなりません。
第二体操の中でワタクシが個人的に「田吾作」と呼んでいるムーブがございまして。
皆さんはご存じですか?第二。あの中盤で「ちゃ~んちゃら~んちゃ・ちゃらららら~ん♪」という軽快なメロディの中、片足跳びをする動きがあるのをご存じでしょうか。あれがなんといいますか、農家の田吾作さんが「オラの畑が豊作だ!豊作だ!」と鍬を片手に跳ね回っているような牧歌的な動きに見えまして勝手にそう命名したんですが、座長は「田吾作」がお気に入りのようで、あのタイムになりますと誰よりも楽しげにキャッキャと跳ね回っており、メイちゃんのおばあちゃんのように目を細めるハキコでした。
決まった時間が来ると劇場をスタッフさんに開けるため楽屋に戻っていくキャストたちですが、そのあと一分で終了時間という段になってやってくるのがみのすけさんでございます。
「もう終わりだよ!」「店じまいだよ!」と、方々から突っ込まれながら、「ええ?まだ大丈夫でしょう」と、ニコニコとヨガマットに寝転がるみのすけさんは、さながら閉店間際に居酒屋ののれんをくぐる客のよう。
「あの人だとなんでだか、許しちゃうのよねえ」と、看板をしまいかけた手を止めるスナックママ気分のハキコでございます。
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メイク時間。
メイクのスピードというのは各々違うものです。
慌てるのがいやなの、と、誰より早くメイクを終えている電柱守のえみさんは、皆がメイクをする頃には既に警察官のウィッグの装着も終えて皆を眺めては、鏡越しに目が合うといつも美川憲一の真似をしてくれます。
あれは、どんなに疲れていても一生笑えますが、おかげさまで普段からのろくさいメイクが更に遅れるハキコ。
結局一ヶ月かけても、ハキコはメイクが最後まで定まりませんでした。
毎日濃くなったり薄くなったり、いやほとんどは薄くならず、日に日に目鼻立ちがはっきりしていきました。
出番が遅いのもあっていつも最後まで迷い迷いしつこく塗り足すハキコに、安藤聖様がまるでお母様が泥遊びをやめない子どもをたしなめるような口調で「バラさんもう良いよ!充分だよ!」とSTOPをかけてくれていたのですが、そのうち聖様も麻痺してきたのか、私が控えめに化粧を終えると「ちょっとチークが足りないんじゃないっすか?」と煽ってこられるのでした。
ハキコよ、あなたの完成形がわからない。
***
さて本番です。
舞台袖で御手洗(葉丸)、中山道(みあ)と合流いたします。
暗がりの中、御手洗はこのタイミングで「さっきキャベツのスープをたらふく飲んでおならが出そうです」といったおかしな雑談をひそひそとしてくるのでこまったものです。
私たちが最初に登場する場所からは、いつも坂本写真館(貫太郎)が演技している姿が見えるので、ワタクシたちは毎日写真館の肉体をチェックしておりました。なぜなら劇中に行う縄跳びのおかげか、日に日にカンタの体が引き締まっていくからです。公演中盤ではついにズボンがゆるゆるになり、お直しが必要なほどに。
有酸素はダイエットに効くということが証明されました。
が、丸々としたお腹がかわいいのにと心配する商工会一同でございます。
満を持して、舞台上に躍り出る商工会です。
とはいえ、演技中のことは無我夢中なので割愛させて頂きます。
とにかくみんな、必死だったのですよ。
舞台上から裏まで、さながら運動会のごとく走り回っていたキャストたち。おいかけっこをするシーンでは、政子やどん詰まりたちに舞台袖で御手洗がエールを送っていたり、うめき声を上げながらボートを引き上げるシーンでは、どん詰まりたちと一緒にハキコもうめいていました。(その翌日、裏のうめき声が大きすぎると演出家に指摘されて大人しくなるハキコ)
口から生まれた焼肉屋・仁さんはどこそこで喋っていて、袖の声が大きすぎると注意されておりました。まあ仁さんは舞台上でもずっとなにがしか台詞以外のことも喋っておりましたけれど。ワタクシたち笑いをこらえるのが大変でございました。
マチネが終わる頃には、否、一幕が終わる頃にはみんな既にヘトヘト。
毎回絞り出すように体力を出し切っているのです。
だから楽屋に戻ったペンキ屋・後東ようこの、目の光彩が「点」のように小さくなった状態でフリーズしている姿を何度目にしたことか、洗濯屋・夏野ちゃんのため息が地獄の滝のように溢れ落ちる瞬間を幾度目にしたことか、擦り傷や打ち身が日々勲章のように刻まれながらも、互いに励まし、助け合ってやり抜いてきた我々でございました。
そんな中で、助けられたといえば……、
と、さすがに長くなってしまったのでまた明日にでも。
あなたのおきあがりこぼし、ハキコでした。
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