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よせあう肩でごあいさつ

みなさまこんにちは。
旅立ちが近づいて参りましたが、今日まではせめてこの名を名乗らせてと、刹那を生きる底根八起子でございます。

イラスト:みのすけさんの奥様(ハキコかわいすぎる!)

底根八起子(ソコネハキコ)profile
出身:福島県会津 生息地:東京葛飾区 
年齢:永久に妙齢 勤務地:商工会議所 
構成員:御手洗と中山道 
分類:猛禽類ワシ科に近い霊長類ヒト科 
視力:2.5 
趣味:モンゴルの喉歌ホーミー、ラッキー占い
特技:歌(葛飾のど自慢婦人の部第八位)
習い事:英会話、社交ダンス、合唱(柴又合唱部所属)
得意料理:シシケバブ
好きな食べ物:月餅、おはぎ 嫌いな食べ物:イナゴ
好きな男性のタイプ:力士(横綱大鵬)
特殊技能:カラスの召喚、サルとの対話
通り名:「(誕生時)起き上がりこぼしのハキコ」「(フーテン時)葛飾の分福茶釜」「イーグル・アイ」「裁ち切りばさみの八起子」「恐怖!出刃包丁人間」「ザ・キャタピラー」

出典:葛飾商工会

いつの間にか自分も記憶しきれないほどにレジュメが増えつづけたハキコですが(こんな情報要らんか)、それ以上に語り尽くせぬ「閃光ばなし」。

うずたかくそびえ立つセット、バイク走行、クレーンまで出動し、誰もが肉体を酷使するなか、大きな怪我なく乗り越えることができたのは本当に幸福なことですし、皆の「底(根)力」あってこそ。

ワタクシの愛するどんづまりたち……たとえばクズ屋・ロン茶がバイクで転んだ日は非常にハラハラしましたけれどもね、持ち前の、発情期のウサギのごとき筋力ですぐさま持ち直していて感心いたしましたし、薄桃の乳首が綺麗なテキ屋みのるくんが怪我をしたときも、喉を使いすぎてるペンキ屋・古木も、みんななんぼしきつかろうに、袖で謎のダンスを踊ってくれたり、「見ておきますか」となぜか乳首を確認させてくれたりと、周りに心配をかけないようにしてくれておりまして、ハキコはこの人たちの前で疲れたなんて言えないなと、常々思っておりました。(いや言っちゃうけど)

そして、危なっかしい我々を支えて下すってたのがスタッフの皆様。
安全に滞りなく舞台が進むよう、厳しく優しく愛情深く、何より緻密に様々な整備をし、あらゆる場所に目を届かせてくださいました。
あれだけ危険な仕掛けだらけの芝居にもかかわらず、大きなトラブルもなく上演できたのです。心から感謝に堪えません。

本日の扉絵はアンリ・ルソー「独立百年祭」
必死だった日々も思い起こせばこんな気分。
「祭りを支えるのは運営(スタッフ)だ!」

そんな中、ほんとにちょっとしたことですが、ある日の本番で思い出深いハプニングがあったといえば。ワタクシと由乃お嬢様(聖ちゃん)が登場するシーンの終了後、商工会のセット上で置き去りになるという出来事です。

商工会のセットはですね、いわゆる「台車」になっておりまして、シーンが始まるたびに「ガラガラ・・・」と、ワタクシや由乃様、あるいは菊田先生などを乗せてスタッフさんに運んで頂くのですね。で、シーンが終わるとまたガラガラと我々を乗せて帰ってゆく。
いつも凄く安定して、美しくスピーディーな手さばきで運んでくださるわけです。
が、その日はたまたま、台車の車輪に何かが噛んで(はさまって?)しまったのか、舞台袖にはける直前、台車がちょうどあと半分で客席から見えなくなる……というところでストップ!してしまったのです。

既に舞台上では野田中会長が芝居をしています。
私と聖ちゃんは動揺しつつも、すまし顔でストップモーションです。
自分たちで勝手に降りるのもこういうときは危ないので動けません。
台車に私たちを乗せたまま、スタッフさんは噛んでる車輪を動かそうとセットの裏から押したり引いたり傾けたり、いったん舞台に戻したり。
体感はまるで、昔懐かし遊園地の「びっくりハウス」でしょうか。

もちろん怪我など一切なかったですし、こんなこと後にも先にも一度きりです。袖に戻るとワタクシとお嬢様はしばらく笑いが止まりませんでしたよ。

ボクシングで鍛えられすぎて
筋肉隆々になってしまったお嬢様。
(二頭筋にご注目ください)
体力的に相当ハードなので、あのシーンが近づくとお嬢様はナーバスとメランコリーが混じり合ったご様子で楽屋の口数がめっきり少なくなるのですが、その物憂げな横顔がきれいで……ワタクシは好きなのです。
かと思うとお嬢様はおもむろに立ち上がり、唐突にモハメド・アリの足さばきを始めるのです。

ええそう、台車はやがて挟まった部分を越え、無事に動いたのです。
その時私の目に、スタッフさんのいないセット前方側(※スタッフさんは裏にいるので)から、誰かがグイグイと台車を引きいれる姿が見えました。
客席に見切れそうな勢いで這いつくばり、車輪が踏まないようにと袖幕を払いのけ、両手で必死に台車を動かしている……柄シャツの男……。

座長でした。

ワッッタ・ヘル・ハプン・イン・ヒア?!

嗚呼ごめんなさい、ハキコ思わずスラングでちゃいました。
なんということでしょう。
スタッフさんとともに私たちの台車を引き入れてくれたのは、座長だったのです。

普段座長は、このシーンの前に舞台袖に待機し、毎回ワタクシたちのお芝居を見守ってくれてました。それでシーンが終わると相談したことをチェックしてくれたり、ワタクシのしょうもないネタに「バーズ・アイ・ビューってええな」だのと感想をくれたりしていたのですが(なんでそのネタ)、この日は台車がストップした途端、まさかの座長が台車レスキュー。
いやマジで、お客さんに見えちゃってたかもだし!
何よりあなたが怪我するかもだし!!
なのに、一切迷いのない表情で、四つん這いで台車を……。

ワタクシ袖にはけるなり座長に詰め寄りました。
「あなた今なにした?助けてくれたの?!信じられないんですけど!」
座長は、きょとりと戸惑ったようにいいました。
「や、(当然)やるやろ……?」
ハキコの気持ちはもう、この一言に尽きます。
「Oh,my Hero…」

あのね。聞いてください。
ワタクシこの話、書いていいものか迷いました。だってこれを書くことで、ふだん素晴らしい仕事ぶりのスタッフさんたちを1ミリたりとも誤解されたくないし、読んでくださる方によしんばワタクシが座長ネタで閲覧数稼いでると思われた日にゃあマジでゾンビ化するほどいやなので、心の英雄伝としてそっと胸に収めようかなとも思ったんです。でもこれだけはちょっと世界に知らせたかった。

だって誰にでもできることじゃ、なかったから。

舞台活動をそれなりに長く経験してきて、この判断がそう簡単じゃないとわかります。「やるやろ?」じゃないです。やらないです普通。
だって我々は俳優です。餅は餅屋、わからないトラブルに飛び出したら怪我するかも知れません。それも主演ですよ?客席に見切れるだけでもどうかというところ、もしも台車にひかれでもしたら……。
別の場所で「台車にひかれるどんづまりたち」というシーンもありましたが、スタッフさんが稽古中どれだけ慎重に行っていたか。
仮に手伝えるとしても、それを一瞬にして判断するのは難しいです。ストップしたのは本当に短い時間。「手を貸して」といわれたら行ける人もいるでしょうが、まずスタッフさんは絶対キャストに危険なことをさせませんし、自らの瞬発的な判断では動けません。
それでも行って、動かした。
つまり座長は、考える前に動いていたということです。

ヒーローって、言い換えればバカなのでしょうか?
ですが違いました。改めて後日聞いたところ、座長は稽古の時から台車の車輪がどう動くか、軌道修正はどう操作すれば良いか、ずっと見て把握していたそうです。だから理解した上で、動けたと。
「向こう見ずだぜ馬鹿野郎」って話でもなかったのです。
ますます、かっこよすぎるべってなりますよね。
こんなヒトおらんなと感動したハキコ、差し出がましいと思いつつも座長のパーソナリティを知らしめるスーパージョブとして、石に刻んでおこうと思った次第でございます。

感動のあまり蝋人形になったハキコ(嘘)

またまた長文になりました。
ワタクシの日替わり自己紹介をいつも舞台袖で聞き「あばれはっちゃくはなづまりじゃない、鼻つまみだよ」などと突っ込んでくれる加古(コバケン)さんや、楽屋に戻るたび感想を言ってくれた制作陣の優しい面々。
自分の出番が終わっても「みんなのうた」までは楽屋に戻らず、モニターの前に張り付いてじっと毎日是政の歌を見届けていた野田中会長(B作様)。
本編最後に売春婦の田原ちゃんが「……違った」とつぶやく素敵な台詞を、全く同じタイミングで言えるか?という不思議な試みのために、毎回舞台裏に集まる坊主たち(加瀬澤・稲葉)&坂本写真館&白バイ刑事(通称三億円事件)+ハキコの謎の一団など、など……。
絞りかすまでしがんでいたい、思い出ばなしの数々ですが、そろそろワタクシもどんづまりを旅立たなくてはなりませんね。

京都思い出写真
ホテルの前で修学旅行生のようにはしゃぐ大人たち

あの人の話、この人の話、書き切れないすべてが、線香花火のようにハキコの胸の中できらめいております。

東京公演初日、ギリギリまでラストの歌稽古をしていました。
演出家は、まだいける、もっといけると座長やみんなに要求をぶつけ、曲を創ったトッシュさんと歌唱指導のトッポさん、振付のやっしーさんに見守られながら、キャストが輪になって、是政を囲んで歌う。
全員の必死な声、真剣な顔。
このかげがえのない「閃光ばなし」の座組を象徴するようなあの光景は、ずっと心に残っていくことと思います。

「さて」
さみしさこらえて未知なる世界へ旅立つハキコです

福ちゃんの芝居はいつも、なまやさしくありません。
足の裏で踏まれ、地べたにぐりぐりと頭を押しつけられながら「悔しかったら必死に生きろよ馬鹿野郎」といわれてるような芝居。
けれど踏みつけるその足は、「生きるよこん畜生」と立ち上がる私たちを信じていると、いつも思います。
だから「閃光ばなし」の我々も、そして読んでくださっているあなたも。
忘れてもらえなかった千穐楽の分まで、その悔しさやるせなさの分まで、こん畜生と立ち上がっていこうじゃありませんか。

約束はなにひとつ為されていない
確証はなにひとつ得られていない
やるしかねえ いつだってやるしかねえんだ
いくしかねえ いつだっていくしかねえんだ
いつか心に灯した小さな炎で
迷い道を照らしながら歩くんだ

引用:eastern youth「地図のない旅」

是政と政子が月の夜にバイクで飛び出したように、コロナも、この世知辛い世の中も、ぶちやぶってやりましょう。

勝ってやろうじゃありませんか!
生きる必死さで。

ご清聴ありがとうございました。
感謝と愛とホーミーを添えて(オア~~~) ハキコより

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