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えすろくろくまる

それにしても、サリーのコーヒー好きは、すごいものがあった。
新宿に出て、喫茶店巡りをするのは私達の日常だった。
バブル期のコーヒー代の平均がどれくらいか記憶は曖昧だが、一杯500円から1200円くらいのコーヒーを飲んでいた気がする。
サリーはモカが好きで、どの店でもモカを頼んだ。美味しい時は、美味しいといい、微妙な時は何も言わなかった。
なぜか2人で喫茶店でコーヒーを飲んでいるのに、それぞれ違う文庫本を読んでいることが多かった。
当時私は太宰治を全部読破しようとしていた。
感化されて、自死も考えることが多かったけど、サリーのおかげで未遂もしなかった。

サリーを好きだった。ただなんで好きだったのかハッキリと分かっていなかった。ただ、互いに沈黙しても楽しく過ごせた。
コーヒー好きの、好奇心旺盛なサリー。
サリーは青春の9割だった。

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