タイムトリップできるとしたらどの時代に行きますか?(26-50)
週末の金曜日、冷たい雨で始まりました。お変わりありませんか?私は月1回の定期受診に行ってきました。
10月はひどく落ち込んだ日もありましたが、主治医のアドバイスでジムでの運動回数を増やし、なんとか持ち堪えたひと月でした。
さて今日紹介するのは直木賞作家 佐々木譲氏の作品です。
私にとって著者はハードボイルドな作品を描く作家というイメージですが、この作品は見事にそれを壊されました。
1937年の東京。隅田川で拾われた男が病院に運ばれてくる。身元不明の男は記憶を失っていたが、なぜかこれからやってくる戦禍の時代を知っているかのようだった。「遭難者」。とある北の国。猛吹雪の夜、図書館に一人の少年が取り残された。暖房もない極寒の館内。そこに突然現れた謎の男は少年を救い、やがて大切なことを伝え始めた―。「図書館の子」。時とたたかい、時に翻弄される者たちを描く全六編。(「BOOK」データベースより)
「遭難者」・・・・・隅田川。照明弾のような光源。病院に運び込まれた意識不明者。東京大空襲。
「地下廃駅」・・・・戦災を免れた谷中。二人の少年の冒険。防空壕。廃駅。
「図書館の子」・・・路面電車。市立図書館。母親の迎えを待つ一人の少女。そして、吹雪。
「錬金術師の卵」・・フィレンツェの伝説。天体図。カララの石切場。錬金術師。
「追秦ホテル」・・・満州。大連。クラシック・ホテル。ユダヤ人ピアニスト。
「傷心列車」・・・・同じく満州。大連からハルピンまでの傷心列車。
本作は6つの短編が収められており、連作にはなっていません。が、「錬金術師の卵」以外は作中にタイムトラベルを経験する男性が出てきます。そして日本の戦前と戦後の時代をまたいでいるところが共通しています。
私は、タイムトラベラーという言葉を筒井康隆氏の「時をかける少女」という作品を読んで初めて知りました。映画化されているので、皆さんはご承知だと思います。
戦後75年が過ぎて日本において、戦争の悲惨さを訴えていてもどこか遠い話のような感覚が蔓延しているように私は感じています。
しかし戦中、戦後の苦しさを味わった人にとっては何故あの戦争が避けられなかったのかという気持ちが強いはずです。タイムトリップによって解決できるのではないかという想像はとても魅力的です。著者はそこに着眼したのだと私は思います。さらに作品の時代を意識しつつ、各々の主人公やタイムトリップする人たちの心情を読むととても優しいものを感じます。
ドキドキハラハラする展開はないけれど、夜更かしできる夜のお供には良い作品だと思いました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。こちらでもハロウィン仕様のデコレーションを見かけます。
節度を保ち、安全に週末を楽しんでくださいね。
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