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ピンク電話の思い出
ゴールデン街のバーに通っていた時のエピソードです。
そこは紹介制のバーでした。
常連で固まっているバーです。
ある方に連れて行ってもらい、以後出入りが出来るようになり
ちまちまと一人飲みの時に行っていました。
僕が入店するころにはカウンターの左側の席しか空いていません。
カウンターは8席程度ですが半円のような形をしています。
右側の席が人気なのは理由があります。
カウンターの内側は狭く右側に近いところに店主が座って居るからです。
店主とは、オーナーのマスターとたまにいるアルバイトの女性のこと。
僕の席はいつも左側の3席のうちのどこか。
その3席は人気の無いせいか、カウンターに店用の固定電話が
置いてありました。
所謂ピンク電話ってやつです。
店用と言っても10円を入れれば誰でも使うことができます。
私設公衆電話みたいな位置づけです。
平成の初めくらいまでは普通に見かけていました。
携帯電話の普及で現在では殆ど見かけなくなりました。
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初めて見る方も居るかと思い大きい画像にしました
ある日、
その左側不人気エリア席でボトルキープしてあるブラックニッカを
飲んでいたいたら突然ベルが鳴ったのです。
店主の位置からは右手が届かなので、僕が受話器を取って渡しました。
電話を切った後、
「電話は直ぐに受けないで」
と店主に言われました。
「直ぐにつながると、店が暇なんだと思われるからね」
そういう気遣いが店にはあるんだ。
という事を学びました。
店には店のルールがあるのです。
良かれと思って行動する前に新参者は黙って気配を感じ空気を
読む努力が必要なんだ。
とそのバーでの教訓です。
僕が飲んでいる時間帯では多分周りはみんな年上の先輩方達です。
少し席の離れたその先輩常連の方達の会話に耳を傾け静かに
飲んでたような記憶しかありません。
今のように空気清浄機など無い時代、狭い店内はタバコの煙で
真っ白、目が痛くなり長居は苦痛だったなと思い出します。
酒の席では会社などでは教わらない社会のルールが沢山あります。
バーという狭い空間でも日常では接点のない人たちが集まり
一つの社会を作っています。
そこから学ぶそれぞれの社会学。
そういう事を吸収するのもバーの楽しみの一つだと感じています。
現在はみんなスマホを持っています。
カウンターに座ってもスマホと向き合い自分の世界に
入り込んでしまえば違う社会を見る機会を失ってしまいます。
新しい時代の酒の飲み方でしょうか?
ちょっぴり寂しさを感じます。