濃い酒が飲みたい②
彼は日にちをあまり開けずにちまちま来店してくれるようになった。
「さて、今日は何からいきましょうか?」
と僕は声をかける。
度数の高いカスクストレングス系の中から、
何にしようか
迷っているようだ。
「ラフロイグのカスクストレングスを」
最初の一杯目からカスクストレングスを頼む方は稀である。
通常なら〆の一杯として活躍するアイテムだ。
しかし、彼にはこれくらい濃くないと身体に染みないらしい。
ということが段々理解できて来た。
アードベッグ10年よりアルコール度数の高いものをメインに
アグレッシブに初体験している。
カスクストレングスとは原酒を指すワードである。
凡そアルコール54~65度位までの物が多い。
原酒というのは樽に入ったウィスキーを瓶詰時に加水
していないそのままのウィスキーのこと。
一般的な40度のウィスキーは原酒に加水して度数を下げたもの。
濃い目の水割り状態になっているわけです。
これは意外に知らない方が多いと感じている。
カスクストレングスはオフィシャルボトルの場合、ラベルに赤文字で
CASK STRENGTH
と表記されているケースが多い。
しかし最近は原酒不足で見かけなくなりましたね。
12年の定番商品を作るのに精いっぱいでカスクストレングスを
リリースするほど原酒にゆとりがないという状況らしい。
この状態が10年近く続いています。
もう数年は続くかなと推測しています。
地道に待つしかないということです。
二杯目に入った彼はストレートでじっくりと味わいながらグラスを
傾ています。
美味しい
とか
違うかな?
とかいう感想は殆どない。
けれど一口一口を味わっている様子は伝わってくる。
最初の「美味しい」はキルホーマン マネージャーズチョイス
というシェリーバレルの4年だった。
アルコール度数59.9度。
来店毎に必ず一杯は注文をするほど美味しいらしい。
結局開けて間もないボトルを彼がほぼ一人で空にした。
「うめっ~~」
と唸りながら流し込む様子を見て
僕も、見つかってよかった。と嬉しい気持ちになった。
「濃いお酒が飲みたい」
の答えを出せたかなとちょっと肩の荷が下りた、そんな瞬間でした。