ペアリングイベント2024 / 2ndのはなし①
韓国旅行の話の次はセッションイベントの話でネタに困らない。ありがたいねえ。
和菓子とドリンクの全体はリンクを参照してください。
では一杯目。兎にも角にもまずレシピ。
羊羹にも同じトムジンが練り込まれている。
今回、改めて思ったけど洋酒と合わせるには和菓子は線が細い。頼りないほどに。
キレのいい、軽やかな甘さを殺さぬようにさせるのはけっこう気を遣う。
そのためには特性・特徴を活かすよう、先ずはできるだけドリンクと皿の距離を縮めたい、という理由から同銘柄のトムジンで組み立てることにした…と言うより、実はこのジンを使って欲しいとこちらからお願いした。
最初の試作では国内未流通のジンを使われていて、しかも残念ながら香りが弱かったのだ。
せっかく使われているのに香らないのでは仕方ない。どうすれば香るだろうかと考えていたところ、ハイプルーフの方が成分吸着率も高いのでは?という仮説から(最初のは確か40%)、度数高めで個性ある手持ちのジンということでグリーンフック ジンスミスのオールドトムジン(50%)をチョイス。
ちなみにこの仮説が正しいかどうかの検証はしていないしエビデンスもないが、結果から見れば間違ってはいないように思える。
このボトルはカルダモンが強く香るので、そこを取っ掛かりに構築を始める。同時に甘味をどう扱うかもポイント。
そもそもこれ(オールドトムジン)自体に甘味は少しあるので1/2ティースプーンもシュガーシロップ加えればなんとかなるだろうと思ったが、それでも潰してしまうのでけっきょく甘味は羊羹に全振り、エクストラドライ仕様で羊羹としっかり繋ぐことに注力することとした。
メインで使うアルコールと方向性が決まったら構成要素の細かなデザインである。
ミキサー(割材)は変に捻らず-と言うかさんざん試して-煎茶が最適解とした。
が、これではトムジンの主張が強い。茶自体も喰われてしまっている。
最も有効な手立ては「アルコールを下げてミキサーを上げる」だけど、それだと芸がないし今度はアルコールもせっかくの香りも埋もれるので、同じ茶葉で茶ウォッカを作ってバランスを調整。
-お茶については知識も経験もないので近隣で探した(こういう時、「近隣」と呼べる範囲に銀座、日本橋があるのは本当にありがたいと思う)。
何店舗か見て回って、アイテムを試飲させてもらい候補を買って帰り試作。
全くもって失礼の極みだが、繊細な部分は求めておらず”大枠で「茶」のニュアンスがしっかり出ていて自分が納得できるもの”というのを選択基準とした。
水出しかお湯だしかで迷ったが香りの残り方、茶の渋味の出方で濃いめのお湯出し急冷をチョイス。
これで作ってみると今度はわずかに渋味が強かったので加水して少し和らげて、これで完成!
…だとドリンクとして寂しいし、何より羊羹の補正以上のものにはなっていない。
このままだと正直、5秒も考えれば誰でも作れる。
少し、ほんの少しだけアクセントを持たせて全体を潰さない、喰わないアレンジを加えたいと考えた結果がバジルの葉を添えて仄かに香らせること。
カルダモンの上品でありつつ主張の強い香りに爽やかで負けず劣らず主張が強く華やかな青さを加える。
叩いてまず香りを立たせ、その後は液体に浸漬させて存在感を出す。
グラスは香りをキャッチしやすく、それでいてブーストさせ過ぎないシャンパングラスをチョイス。
しっかりマッチして良い着地点だった。
ところでこの組み合わせはカルダモンからカレーの事を考えていたら繋がった。
まさか着想をそこから得られるとは自分でも思っておらず、やはりヒントやきっかけはそこかしこに落ちていることを再確認。些細なことにも目を配るのは大事ですね。
使用したお茶はレシピにも記載した通り、築地に本店を構える「うおがし銘茶」の煎茶”うぬぼれ”を使用。
余談だけど、パッケージのイラストが宇野亜喜良ぽくてそこに惹かれたところもある…と思って調べたら案の定で御大が描かれたものだった。
さらに余談も余談だけど、サンプルとして購入したのち2回目行ったらなぜか顔を覚えられていた。
何に使うのか話して選んだからそのせいだろうけど、カクテルのミキサーに茶を探しに来るバーテンダーというのはまだ珍しいのかもしれない。
閑話休題。
このカクテルの最大のポイントは温度。
しっかりと冷えた状態では香りが上がるまでに時間がかかるので、軽く冷えている程度の温度帯でサーブする。こうすることで半開状態からスタートでき、初めから楽しめる。
実にシンプルな作りだけど羊羹を補正しつつペアリングの意義を出せたと思う。
ちなみにお茶ウォッカは使い勝手が良いのでレギュラー入りしました。
次回はモクテル1杯目。