第02話ホワイトレディ
シャカシャカシャカシャカ…
シェイカーを振る音が店内に響いていた。
「若い頃はコレばかり作って練習してたよ」
シェイカーを振っているのはbarジャンゴのオーナーであり店主のマサキさん。
「ユウキくんも練習しないとね」
カウンターに座ってユウキくんに声をかけているのはbarジャンゴの広報を担当しているカミチさん。
「はい」
素直な返事をしているのはユウキくん。22歳の若きバーテンダー。ユウキくんはもう一つの顔があり、なんとバンドマン(ドラム)
barジャンゴは19時〜26時営業だが、当然お客さんがいないタイミングもある。そんな時はユウキくんがカクテルを練習する時間になる。
「今回のもインスタグラムにあげとくよ」
カミチさんは店のSNSを担当しているので、ユウキくんの練習風景をインスタグラムにあげたりしている。
「意外と評判いいんだよ。100日後に100種類のカクテルを作るバーテンダーシリーズ。近所のバーのマスターも知ってた。いいねもけっこう押してもらってる」
「マジですか」
思っていたより大事になってしまったな…と焦りの表情を見せるユウキくん。がんばれ…100種類まであと…90種くらいかな…
「マサキさん、ちょっとお手本に、ホワイトレディ作ってくださいよ」
「いいよ」
カミチさんにうながされ、ホワイトレディを作り始めるマサキさん。
シャカシャカシャカシャカシャカシャカ
バーテンダーによって振るリズムも違うから、ユウキくんの時とは聞こえてくる音が違う。
「お待たせしました。ホワイトレディです。」
「ありがとうございます。」
カミチさんがホワイトレディに口をつける。
「あー、口当たりが違うというか、酸味の感じ方がまず違うのと、まろやかというかなんというか。混ざり方が違うのかな?」
「そうね。けっこう違いが出るね。飲み比べるとわかるけど」
「ユウキくんと何が違うのかわからないですけど、違うことはわかりますね」
「ハハハ。ほら、ユウキくん、もう一回やってみて」
「ハイ」
こうしてbarジャンゴの時間は過ぎていく。
お客様、早く来てください。飲みすぎてしまいます。
シャカシャカシャカシャカシャカ…
完