ポテトサラダ
「それは人の好み次第だよ」
食事中、おかずに何をかけるのかを聞くと、母は決まってこれを言う。
…確かにその通りだ。
でも、年齢が一桁の少年に好みの味付けなんてものが備わっているはずがない。
そして、私の家ではポテトサラダには決まってソースをかける。
それもブルドックソースに限る。
引っ越してきたときに、その地域ではブルドックソースが市民権を得ておらず別のソースだった。
最初のうちは別ので我慢していたらしいが、しまいには祖父母の家からわざわざ送ってもらったりしていた。
あのときの、母の嬉しいそうな顔は忘れらない。
そうして、みな白いポテトサラダに、黒いソースをかけて美味しそうに頬張る。
少しして、どうやらこれはうち特有の文化であって他の家庭ではソースをかけないということを知って、私は塩胡椒派に鞍替えした。
ちなみに、目玉焼きはみな醤油派だが、私はいつも塩胡椒派だ。
塩胡椒にはこだわりがあり、カンボジア旅行に帰ってきたときから、お塩も胡椒もそれぞれミルで砕いてから振りかけている。
ミルってとっておきの魔法をかけるみたいで楽しいよね。
寮で暮らし始めてから、私は出会ってしまった。
ジャガイモが丁寧に潰されたポテトサラダに!!
どうやら、これにも潰さない派と潰す派に分かれるらしい。
それからというもの、私は丹念に潰されたペースト状のポテトサラダの虜になっている。レタスも一緒に入れれば、歯応えのコントラストが絶妙である。
でも、やっぱり、ゴロゴロとしたポテトサラダにブルドックソースをかけて食べると落ち着く。
これが、”母の味”というものかもしれない。
鮑叔館 珠李