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2020年 3月の春キャンプ in 秦野・滝沢園キャンプ場(3/20〜21)
近場を探せ
「ちゃちゃっと行ってさっさと帰ってこれるキャンプ場ない?」
かみさんはいつも突然に言う。
「近場だと丹沢かな」
「じゃあそれで」
要するに探して段取りを付けろと。
しかし要求は厳しい。近く、ロケーション良く、安く、楽しく、美味しく、と盛りだくさんが全て「それで」の中に含まれている。
「なにで行く?」
「バイクで」
これでアクセスの良さにプラスして、道の良さも含まれた。ちょっとでも足元が悪いと立ちゴケるからだ。傾斜とか勾配とかの単語はNGである。わずか数秒、目を話した隙に倒れている。購入後すぐにレバーは交換した。ステップも変えた。サイレンサーには傷が入った。そして本人の脚は痣だらけだ。
猪鍋を食うぞ
キャンプは予約不可だが、猪鍋は予約できると言うので、秦野の滝沢園キャンプ場に決め、猪鍋の予約だけ入れた。
今回も荷物のほとんどを私が運び、かみさんにはシュラフだけにした。
頼むから下ってくれ
バイクで30分少々の距離。出発もゆっくり。鼻歌をふんがふんが言ってるうちには到着する。舗装された道を山に向かって走り、看板を左に曲がるとそこは下りの急勾配。かみさんはそこで立ち往生。
「怖い〜」
「大丈夫!」
「無理〜」
「無理じゃない!」
「帰る〜」
「帰らない!」
なだめ励ましてなんとか坂を降りる。途中の直角左折で同じやり取りをし、ようやく管理棟前の駐車場へ。
山小屋風の管理棟は良い感じにくたびれている。オーナーさんが駐車位置を指示してくれた。優しい感じのおじさんである。
「ずいぶん頑張って積んできたね。奥さんは大事にされてるなぁ」
そうだそうだ。もっと言ってくれい。
管理棟で優しそうな女性に手続きをし、猪鍋の予約の確認をして、キャンプサイトの案内を受ける。
テン場難民になりそう
管理棟の裏側を周り、バンガローの広場を抜けて鉄の階段を降りると川原に降りる。太い丸太を縦に切った橋を渡った先がキャンプサイトだ。
区画はないフリーサイトだが、川の上流らしく大きな岩がゴロゴロしていて、テントを張れる場所は限られる。めぼしい場所はすでに埋まっていた。
とりあえず今宵の宿地と決めたのは、笹竹を伐採して日の浅そうな砂地。笹の切り株が飛び出してるところもあり、テントを破かないように注意して設営した。しかしペグが効かない。プラペグが何本かあったので、アルミペグと組み合わせて踏ん張りを効かせて対応。
(コットが無いと眠れそうに無い)
砂地なので焚き火も安心そうだ。ただ、転ばないように気を付けないと手を怪我しそう。僅かだが鹿の糞もあり、季節によってはダニや蛭も心配。設営するなら石の間の少しでも平坦な場所を確保した方が無難だと思う。しかも水場やトイレはバンガロー広場にあるので便が良いとは言い難い。行き帰りにゴロゴロの岩場や手摺のない橋を渡らなければならない。
いよいよ猪鍋だ!
スイカほどの石をいくつか集めてかまどを作る。かみさんは、こういう「ある物を使う」と言う経験をあまりさせてこなかったので、興味深そうに見ている。
「きっちり囲うより、少し隙間があった方が空気が入ってよく燃えるんだ」
そう言いながら藪の中に入り、笹の枯葉と杉の葉を拾ってきた。かまどの中に杉の葉、笹の葉、細く裂いた薪の焚き付け、細い薪、そして太い薪の順に重ねて準備完了。チェアを展開してビールを開けたら、猪鍋が届いた。昔懐かしいアルマイトの鍋。使い込まれて年季を感じる。
それをかまどの上に乗せて火を点けた。杉の葉が激しく燃え上がり、枯れ笹と焚き付けに火が移る。
「もう着いたよ! すごいねお父さん!」
すごくない。昔なら当たり前の知識だ。私が子供の頃、横浜でも薪で沸かす風呂の家が僅かだがあった。仲良くしていた友達の家がそれで、遊びに行くたびに薪割りをしたり、今で言うところのフェザースティックを作ったりした。かまどの組み方、鉈の使い方、薪の割り方、火の付け方はその家の爺ちゃんに教わったのだ。
猪鍋は味噌仕立て。見た目は今ひとつだけど素晴らしく美味しい。これを食べにまた来たい。
せせらげ、せせらげば、せせらぎ過ぎ!
滝が寝そべったような勢いで流れる川のせせらぎ、木立の隙間から見えた満月、焚き火の煙の匂い、風の冷たさ、そう言ったものが気持ちを新鮮にしてくれる。かみさんは川音が耳について眠れなかったようだ。
小さい子供連れにはおすすめしない。川に落ちたらと考えたらリスクが大きいキャンプ場だと思う。
でも野外感は高めなので、オートキャンプに慣れた人には良い経験になると思う。
データ: 一泊料金
フリーサイト:¥1,100-(大人1人)
オートキャンプ:¥5,500-(車1台4人まで)
薪:針葉樹 一束¥650-