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一縷の光のような怒り・綾野剛 前編

※この記事は感想がメインなため、全体的にネタバレを含んでいます。



はじめに


忘れもしない1月中旬。
家に帰るなり「綾野剛がやばかった…」としか言えない人間になってしまった。
映画「カラオケ行こ!」を観たのだ。
そのまま有り余る熱を発散するかの如く映画「怒り」を観た。号泣した。一層持て余した感情をぶつけるように、感想をスマホのメモに書き殴った。また号泣した。



そこから早二ヶ月と少し。


Xを流し見ていたら、とあるツイートが目に止まった。どうやら2016年に公開された映画「怒り」の再上映が東京でやるらしい。



4月5日から18日の約二週間、109シネマズプレミアム新宿にて上映。


深夜バスで行こうか、はたまた旅行がてら飛行機でも乗ろうかしら、情報を知ってからすぐに「怒り」を映画館で見る算段をつけていた。


そして結局三泊四日の旅程の中で、17・18日の二日間にかけて「怒り」を堪能した。
もう我が人生の中で、大きなスクリーンでは二度と拝めないだろうと思い、初日はS席二日目はA席で映画を観たのである。


17、18日の映画代だけで11,000円。


初めて映画代だけでこんな金額を見た。
二回見ただけなのだが、まあ妥当な金額だと思う。感想としては109シネマズプレミアム新宿は席も音響もリッチだった。(後日また記事にする)


無論ポップコーンも美味しかった。
非常に美味しかったが、上映中に全ては食べきれなかった。それはなぜか。
ハンカチ片手に「怒り」を見ていたからである。

物語終盤には滲む涙を拭い、ポップコーンの掠れる音すら煩わしい。
そんな最終局面でポップコーンを口に含んで咀嚼する、それ自体がこの作品に対して冒涜だと感じたのだ。(超個人的見解です)
もちろんポップコーンに罪はない。ぜひ味わっていただきたい。


まあ、それほどまでに衝撃的で悲しくて狂おしく愛おしい作品なのだ。


綾野剛が出演する作品の中でダントツに辛く、悲しい作品だと私は思う。今回は綾野剛に焦点を当てて映画「怒り」を語っていきたい。




映画「怒り」のざっくりあらすじ

李監督が指揮を取り、原作は吉田修一さん。

物語は東京編・千葉編・沖縄編の3部編からなるミステリー映画だ。愛する人が殺人犯に似ていることからの苦しみ、悩み、そして決断する。そんな作品になっている。

今回紹介する綾野剛演じる大西直人は、東京編の主要人物だ。東京編は他にもう一人主要人物がいる。妻夫木聡演じる藤田優馬だ。

東京編は主にこの二人を軸に進む。




【感想という名の多分なるネタバレ】


これは映画「カラオケ行こ!」を観てすぐ綾野剛に沼り、藁にもすがる思いで彼が出演した映画を漁った後の、新鮮ピチピチフレッシュな激動の最中に書き綴った感想である。
スマホのメモ帳に、乱雑に書き殴ってあった。


感想の前に前置きから言うと、東京編に登場する直人と優馬はゲイだ。ハッテン場で刹那的な出会いの中少しずつ心を通わせていくのが、東京編の醍醐味ではないだろうか。
以上を踏まえた上で感想を読んでもらえたら幸いだ。
当時のテンションで書いたものを、恥を忍んでほぼそのまま掲載する。



【〜〜〜〜〜以下感想(約千字)〜〜〜〜〜〜】

もう、もうね、大西直人の背負ってるものが辛い…!あのお店で初めて出会う優馬と直人の色っぽさにやられました。
何あの足でこじ開ける動き…!?あのシーン刺激的すぎませんか?そんな描写ができるのかと唖然としました。

あの一瞬で感じ取れる距離の遠さとゆっくりと上がっていく体温、頑なに体育座りで優馬を拒む姿勢を見せる直人の肌の艶!
(後から特典映像(?)を見たら上記のシーンについて、どういう風な姿勢気持ちで演じていたかを語ってくれていました。)

なんですかあれは!
床ドンされる時の仕草や視線、そのままうつ伏せになり優馬を迎える直人の顔…薄暗く怪しげなライトに照らされる二人の体が、ある一種の寂しさを感じました。その僅かにうっすらと見える直人の口元から伝う涎は、見る者をドギマギさせますね…!

そこから家に直人を招く優馬と、コンビニであれを買う直人の恥ずかしさも感じさせない表情、膝で弁当を直そうとする仕草に微笑む優馬。あのひとときはきっと、二人にとって束の間の幸せだったのかなと思いました。
ヴッ辛い…。直人の優しい声が一層涙を誘いますね。

あの部屋での「信じてくれてありがとう」でもう第一の涙は枯れ果てました。第二の涙はお墓のシーンです。


どうか幸せになってくれよ末長く!!!!


…二回目の「わかってるよ」の後の表情が、色んなことを飲み込んだような表情に思えてなりません。


最後の涙はもちろん優馬がカフェから出て、行くあてもなく歩くシーンの回想です。
あのシーンほんと幻想的すぎて涙が止まらない星人になってました。

パンフか映像特典か何かで見ましたが、あの外の景色は合成だったらしいのですが、柔らかく差し込む夕日に照らされながら話をする二人が…もう…号泣です号泣。

合成とは思えない穏やかで祝福のような日差し…。
あの瞬間、直人はきっと幸せだったと思います…。


1月14日にカラオケ行こ!みてすぐに怒りを見たんですが、それから三日は繰り返し見ながら目を泣き腫らしました。抱きしめたくなるような儚い綾野剛が好きな人にオススメしたい逸品でした。


あと綾野剛さんはカーディガンと胸元の開いた服が似合いますね!

デコルテが美しいのもありますがきっと、綾野剛さんの持つ骨格と鎖骨のライン、雪の如く透き通るような白い肌が非常に魅力的に映るからのような気がします。

ついでに言えば怒りと閉鎖病棟と楽園に共通する、あの長めの髪と少し影のある目元と下がり眉が、より綾野剛さんの隠の部分を強調している気がして大好きです。
それも溶け込むような、逃げ水のような、ふと目を離した瞬間に消えてそうな綾野剛を作り上げているのかなと感じました。


……猫背の綾野剛最高!!!


幸薄めで儚くて消え入りそうな青年を演じさせると随一だと思いました。


※以上完全なる主観です



綾野剛演じる大西直人の人生とは

「怒り」を観た後、多くの人が打ちひしがれるだろう。大西直人の人生とは、はたして幸せだったのか…と。


かく言う私も彼の最期に思いを馳せながら、さめざめと泣いた。
愛する人がいながら一人で死んでいくのは、とても寂しかったんじゃないかと。もっともっと愛する人と一緒にいたかったんじゃないのかと。

愛する人から「知りません」と言われた、身寄りのない直人のことを思うと辛くてならなかった。最期の瞬間に間に合わなくとも、あの時優馬が警察からの連絡に「知っている」と答えていたなら。
きっと彼らは少しの時間だけでも、会えていただろうから。

「一緒は無理でも、隣ならいいよな」

と言った直人の希望を、満たすことができたかもしれないから。


以上が原作未読の状態で映画を観た、初見の直人への感想である。


私の所感だがこの映画を初めて観た後の感想と、原作を見た後での感想は結構違うと思っている。
なぜなら映画では描かれなかった彼らの”その後”が描かれているからだ。

私は映画を観た後に三日三晩泣き腫らし、彼らに救いはないのかと彷徨っていた。するとどうやら原作にはその後が描かれているらしいと知り、速攻ネットでポチった。救いが欲しかった。私は弱かった。

映画「怒り」を観て悲しさに地べたを這っている同志がいるならば、声高々に言いたい。

原作を見ろ、原作にはその後が描かれていると!
損はさせない。
きっと一縷の光が貴方に差し込むことだろう。


大西直人は幸せだったのだ。



後編に続く



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