提供と享受が共存すること。(編集のレッスン【第3期】 リフレクション#2)
第3回の講師はマルティンメンド有加さん。東京の蔵前で、クリエイティブレジデンス「Almost Perfect」をパートナーのルイスさんと運営されています。
築100年の精米店を改装しており、1階がギャラリー、2、3階にスタジオと居室を持つ造りとなっています。
お二人とも別に本業をお持ちで、「楽しくなくなったり辛くなったらやめようと」約束して始められたとのことですが、お話をされている様子から健やかに運営をされているイメージを持ちました。
入居にあたっては希望者のキュレーション(選考)に力を入れており、お二人のアイデンティティにマッチした方々に入居してもらってきた結果、場のアイデンティティが確立してきたとのことでした。
1年間の予約は埋まっている状況であり、ご本人もおっしゃれる通りうまくいくフォーマットを見いだされているようです。
家内工業的にものづくりに取り組む作り手たちが身近におり、東京の中心からほどよく距離感のある下町であることが、クリエイターの創造力を刺激しているそうです。
お話中で何度も強調されていたのは、入居者選考をしっかり行っている点です。
お二人のアイデンティティが色濃く反映された場と入居希望者の価値観がうまくマッチし、現状を成立させているようでした。
特に経済的な成功を目指すわけではなく、「面白い人が勝手にやってきてくれること」がQOLを高めているといったこともおっしゃられており、「場の編集者」としての思惑を感じ取ることができました。
これらのお話から、いわゆるアーティストインレジデンス(AIR)に対する理解が少し深まったように思います。
何処かでAIRはクリエイターに対してインスピレーションを得る場を「提供」(give)するものだとしか理解していませんでした。
しかし、滞在するクリエイターたちは地域の空気を感じ、人と交流し、それぞれが地域を解釈し、再定義し、制作物としてアウトプットすることを通じて、地域に対してお返しをしてくれます。
almost perfectでは1階のギャラリーが地域に開かれているとお伺いしました。つまり、滞在者による制作物に触れた住民たちが、違った視点で地域を見つめなおし、立体的に理解する機会が開かれているということなのかと勝手に得心したところです。
for cities のお二人も活動の後に何かを残していくことを積み重ねておられることも通じてるように感じました。
さて、今回のお話をお伺いし、福井県池田町の「うみのいえ」に思い至りました。
東京で音楽コンサート公演の企画等をする会社を経営していた米村智裕さんが、池田町に移住するにあたり立ち上げられたプロジェクトです。
空き家となっていた古民家を改修しスタジオや居住空間を設ることにより、アーティストインレジデンス(AIR)の提供を事業の柱の一つとして展開しています。
クラウドファンディングを実施する際、県の事業を活用いただいたことから、事業担当としてお手伝いさせていただきました。
これまで、複数回のAIRを実現されており、主に音楽系のアーティストによるミニコンサートなどにより、地元の子供達にも本物の芸術に触れる機会を提供しています。
県事業の担当をしていた際には何度となくお伺いしたものですが、最近ご無沙汰しています。久しぶりに最近のお取り組みをお伺いしつつ、今回の学びを共有したくなりました。