子供の頃の話
あれは小学校の修学旅行。そばアレルギーの私のために、学校は枕投げ禁止を学年のみんなに指導した。こいつそばアレルギーだから!とかそんな説明ではなく、枕投げ禁止、怪我をしたり、人によっては体調を崩すこともあるためという説明で。
しかし修学旅行の宿でそれは当たり前のように始まった。
はしゃぐクラスメイト、飛び交う枕(蕎麦殻入り)私はものの1分ほどで喉の中に蕁麻疹ができ、胸の中に起こる強烈な痒みと、わずかな隙間となった気管支を笛のようにヒューヒュー鳴らし、布団の中に隠れて胸をかきむしりながら、必死で息をしていた。
どれくらい続いただろう、先生が見回りに来て、隣かそのまた隣?のクラスの説教が始まったことで静かになった部屋に私のゼーゼーという喉の悲鳴こだまする。隣に寝ていたクラスメイトが私の布団をひっぺがしこう言った。
「お前病気やったら先生の部屋行けよ。うつるやんけ。せっかくの修学旅行やのに台無しになったらどうしてくれんねん。」
そいつのその時の顔はいまだに忘れられない。
自分には何の影響もない、ただ埃で少しくしゃみが出る程度の枕投げという思い出づくりの楽しい娯楽。しなくても別に何も問題ない不要不急の遊びであるが、修学旅行の思い出といえば楽しい枕投げなのである。今、やらないと後悔するとまで思い込んでいる恒例行事だ。
先生は順番に回ってきて、私達の部屋にも顔を出す。
「お前ら、静かに寝てるか?」
まるで、さっきまでの枕投げなどなかったかのように、
「はーい!」
「先生!こいつが病気です!連れていってください!隣で寝ててうつったら嫌なので!」
私の状態を見たあの時の先生の形相は忘れられない。
「枕投げで人が死ぬこともあるんや!だから禁止と言ったやろ!」
何でそんなに本気で怒られたかわからないクラスメート。
先生は私を抱き上げて、先生の部屋に連れていき、一晩つきっきりで体調を心配しながら、看病してくれた。
子供だから、重大さが理解できなかった。それを恨むつもりはないし、健康体の人にとって、枕投げは楽しさ以外に何もないのだ。自分に何かが起こることはないのだから、想像しろというほうがむりなのである。過去に何人か現れた、私に好奇心でそばを食べさせようとする人も同罪だ。
ヘタをすると殺人になることを理解できない想像できないのは経験値と、知識不足の問題なのかもしれない。むしろ楽しみにしてる側からすれば、お前がいるから、思い出が一つ減ると言うかもしれない。
「そんな大袈裟な。蕎麦ぐらいで」
「ちょっとずつ食べてたらそのうち治るよ。」
よく言われた言葉。
そうやって人は、無意識に過ちを犯していくのかもしれません。私は顔で笑いながら、心の中で「黙れ人殺し!」と罵っております。苦笑
さて、この文章には続きがありますが、有料にするのではなく、みんなに考えてもらいたいと思ったので、続編を数日後に書きます。
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