【サピエンス全史要約】科学革命と資本主義の誕生
思考方法としての科学
前回のnoteでは神の権威の没落によって知識さえも信用を無くしてしまったと言いました。
ソクラテスが唱えた「無知の知」が大衆に受け入れられたようなものです。
そして世界の真理を探求するための道具、新しい思考方法として科学が発展する科学革命がおきました。
ここでいう科学とは、「仮説を基に実験し、その結果を受けて仮説を修正するというサイクルを繰り返し、一歩一歩真理に近づいていくという方法。」という解釈です。
科学と帝国の相利共生
しかし科学には実験が不可欠であり、実験に不可欠なのはお金です。
なのでお金を援助してくれる存在が必要であり、その役割を担ったのが帝国でした。
上記の2項目が科学から帝国への利益ですが、イデオロギー面での正当性と言われてもあまりピンと来ないと思います。
一つ例をあげると、ナチスが独裁していた頃のドイツがあります。
ドイツの科学者たちは優生学という名前で「我々アーリア人が世界で最も優秀な民族であり、それ故に我々が世界を統治するべきなのである。」という考えを国に提供していました。
その考え方を基にしてホロコーストも実施されました。
上記の3項目が帝国から科学の利益です。
二つを比べてみると、お互いの不足している点を補い合っているまさに相利共生と言える関係性です。
信用(クレジット)
科学によってもたらされたものがもう一つあります。
それは未来は今よりも良くなりえるという考え方です。
今を生きている私たちにとって当たり前のように感じますが、中世までの時代に生きていた人はむしろ未来はせいぜい現状維持で精いっぱいくらいに考えていました。
そして未来を楽観視するこの考え方が経済にも導入され、信用(クレジット)という制度が登場します。
信用とは「今は存在しないけど未来には存在するであろう富」の事で、例えば
Bさんから1年後に返す約束でAさんが100万円借りて事業を起こし、1年後200万円の利益をあげたとしましょう。
この場合、Aさんが稼いだ200万円が1年前Bさんから受けた信用ということになります。
そしてこの制度の良い所はAさんが利益を上げているのに対し、利子を取ればBさんも利益を得ることができるという点です。
このように付加価値をどんどん増やしていく事で全世界の富の総額が増え、経済成長がさらに促進されるという事です。
経済成長が促進されれば、未来の経済により信頼が置かれ、よりあたらしい事業が起こしやすくなるというように正の成長スパイラルが発生していった結果、現代に至っています。
ちなみに今の世界全体の財とサービスの総生産量は、1500年と比べ約240倍の60兆ドルです。
経済システムの発展
さて、1776年にアダム・スミスが国富論を発表した。
その内容を簡潔にまとめると、「金持ちは得た利益を生産に再投資をするべきであり、それを行なっている限り金儲けは他の人をも裕福にする。」と言う主張である。
そして生産に投資される財は資本と呼ばれ、富とは区別される。
この本は現代の世界宗教である資本主義の先駆けとなり、それゆえに彼は経済学の父ともよばれている。
また株式会社というシステムも同じ頃に誕生している。
きっかけは当時の主な投資対象であった船での海外探索が、超ハイリスク・超ハイリターンだったことである。
そこでヨーロッパの人は、大勢の金持ちから少しづつ資本を集めてから船に投資をする株式会社を設立した。
こうすることによってリスクを抑えつつリターンを得ることが可能になった。
文明は人間を幸福にしたのか
今回は主に科学と経済についての要約だったが、振り返ってみるとたった一つ
「未来は今より良くなりうる」というたった一つの思考から出発した。
つまり近代に入ってから人類は科学技術の進歩と経済成長さえ続けば未来には幸せになれると考えたわけだが、いま我々は幸せだろうか?
自信を持って自分が幸せであるという人は少ないだろう。
そもそも幸せとは何なのか?
幸せの感情を引き起こす生体的な原因は何なのか?
次の要約は幸福と遺伝子やAIなどの技術の進歩が人類をどこに導くのかをテーマにまとめていきたいと思います。