【サピエンス全史要約】農業革命の罠と宗教の誕生
農業革命とは?
サピエンスの暮らし方が狩猟から農耕へと変化した現象、それが農業革命である。
農業革命の罠
なんとなく「農業革命は人類にとっていいことだらけ」という印象を持っている人は多いと思う。
だがこの本によると、当時の農耕民は狩猟民だった頃よりも満足度の低い生活を強いられていたらしい。
それなのになぜサピエンスは農耕民としての生活を受け入れたのか?
この謎を農耕化の過程、DNAの二つの観点から解き明かしていきたい。
罠を受け入れた理由〜農耕化の過程〜
サピエンスが野営地を作り出した頃、小麦は数ある食料の中の一つに過ぎなかったので狩猟のついでに農耕をしていたのだろう。
しかし食料の貯蓄ができるにつれて、子育てに対する不安の軽減から出生率が上がる。
そしてその増えた子供たちに安定して食料を供給しなければいけなくなる。
よって供給の面でより安定している農耕に全力を注ぐことになった。
と、このような筋書きで農耕作物に対して依存していったのだろうと私は考えた。
農耕を始めた当初は狩猟生活に引き返す事はできただろう、しかし子供が増えてしまっては豊かだが先の見通しが効かない狩猟生活に戻そうという人はいなかっただろう。
子供がお腹を空かせないように何世代にもわたって頑張ったことでどんどん生活を苦しいものにしてしまうなんてとても人間らしい失敗だと私は思う。
罠を受け入れた理由〜DNA〜
進化における成功は、その種族の豊かさや文化の素晴らしさではなく、単にDNAの複製数のみによって決まる。
なのでサピエンスの生活の満足度を犠牲に種の個体数を増やした農業革命は進化論的には非常に理に適っている。
農耕へ移行する前の紀元前1万年ごろの世界人口はおよそ800万人いたが、農業革命が起こった後の1世紀になると狩猟民が約200万人だったのに対して、農耕民はなんと2億5千万人も暮らしていたというデータもそれを裏付ける証拠になる。
宗教は農業革命によってもたらされた
狩猟民はその日の食料をその日に調達していたので、過去や未来ではなく今を生きることに全力だった。
しかし農業に移行するとサピエンスは未来や過去のことを考え始めた。
なぜなら今育てている作物がこの先数ヶ月分の食料になるからだ。
そして現代でもそうだが農業は自然災害などの不確実性がある。
雨はちゃんと降るだろうか?とか害虫が発生しないだろうか?と心配することが一気に増えてしまった。
そこで農耕民たちは認知革命で得た虚構の世界に雨を司る神を作り出しその神に祈る事で未来への心配を解消しようとした。
また食料の余剰ができた事で農作業などの仕事に従事しないエリート層が出現し、このエリートたちが哲学や芸術などの文化を醸成していった。
エリート層は暇だったのだろう。
そんなエリート層は民たちが崇める神の存在をどう思っただろうか?
おそらくこれは統治するのに使えるぞと思ったに違いない。
ここに神と統治者が出会い宗教が生まれた!
さて、今回は宗教の登場まで解説したが農業革命と宗教の影響は凄まじく、数千年という長い年月をかけながら、これまで以上に巨大な社会を形成していく。
帝国の誕生である。
次回は帝国がどのようにして人間を統治していったかを見ていきたい。