今見て欲しいウルトラはこれだ!社会をえぐるウルトラシリーズ作品3選
最近、円谷プロのyoutubeチャンネルにて10作品が新たに配信されるがどうにも腑に落ちない。少しパンチが足りない気がしてならない。そこでコロナ時代にぜひ見たい3本をピックアップし紹介したい。
ウルトラシリーズは基本的には子供向け だがその奥に怪獣などが時代性や当時の社会問題にクローズしたあまりに強烈な回が存在する。
ウルトラQあけてくれ
夜の街に繰り出した万城目とゆりは路上に倒れる男性を発見。ひき逃げと思い運んでいる最中電車の音で目を覚ます男はあけてくれと仕切りに連呼する
夢遊病のように叫び出すものたちが頻出していることを知り男性から事情を聞くと移動中 気がつくと突如見知らぬ空飛ぶ列車の中に
中には数人の男女 その中に天本英夫演じるSF作家友野(ともの)が一種水先案内人を務めていた。彼がいうには現実世界のようなしがらみのない夢のような世界が存在するという。沢村は旅など逃避を求めていたもの現実の世界を捨てきれずに電車から降りたのだが
本作はウルトラマンQの本編で最終回として放映予定であったが怪獣が出ない上に難解なストーリーだからと実際には放映されず再放送で世に出ました。
沢村は現実世界に未練を残し帰還するのですが彼に待ち受けていたのは妻の罵詈雑言と職場での目の上のたんこぶ扱いで最後には「乗せて行ってくれ」と空を仰ぎ叫び続けるのでした
誰もが考えたことのある自由な世界 異世界転生などここではないどこかへの渇望は時代問わず誰でも抱くことなのでしょう。とりわけ沢村は作中で描かれるように大戦に出兵しています。敗戦後に日本は戦後の豊かさとの同時に多くの変化を受け入れざるを得なかった。天皇は人間になり家父長制もなくなり資本主義が世界を覆い社会は大きく変革していきます。ただ沢村のようにそんな急激な変化に耐えきれなかった人々はいたはず、街には傷痍軍人が大勢いたなんて話もあります。そして当時、実際に人間の蒸発が社会問題となりました。
そして今、人間の三大義務だからという理由で労働を強いられ謎の評価システムにより上にいける者といけないものが区別される。
そして大概そのマニュアル知識は他社では通用せずというまさに人生は無理ゲーの連続だと学生時代は思っていたし今も思っている。何なら、今すぐにでも自分だけあちらの世界に行きたいと思っている。ただこの物語いわゆる楽して生活したいという話だろうか。
コロナによって私たちの現実は大きく様変わりし始めています。
すでにテレワークから電車出勤に戻る人達が嘆きのツイートをしている。
しかしながら、会社に行かなくても良いという開放的な働き方はまた「あけてくれ」のように全てが自由に生きられる状態となったとしても、電車の中に閉じ込められるのと同様に家の中に閉じ込められるのである。
いじめや過労などで自殺する人間はかつてある種のイレギュラー 他の人間はちゃんと順応しているで片付けられた。仕事を失う人も働いている人間からすればイレギュラーと言っても良い。
ただそんなイレギュラーが時代性により大量に発生したときあなたにも異次元列車は見えるかもしれない。
ウルトラマンガイア43話
銀色の眼のイザク
リアルタイムで見ていたのがガイア名作も多く「大地の牙」「悲しみの沼」など名作が多い本作。
そのなかでお気に入りなのが銀色の眼のイザク
とある研究施設が襲われる。その後怪獣が出現する。主人公高山我夢は怪獣を調べると地球上の生物であることが発覚。襲われた研究施設では、人間が絶滅させた生き物をクローン技術で復活させるプロジェクトが行われ1号として選ばれたのがアルテスタイガーの最後の生き残りイザク。ハンターにより狩られ重油の混じった水を飲みながらも誇り高く戦ったイザクは破滅招来体という未知の侵略者の手により怪獣兵器に変えられていた。
怪獣を倒すことをためらえば絶滅動物で怪獣を再び作られてしまう。だが最初にイザクと戦ったもうひとりのウルトラマンであるウルトラマンアグルこと藤宮はイザクの声を聞いてしまった。「生きたい」 人間に復讐したいと行った感情ならまだ倒しやすかったろうに彼は怪獣の姿に変わってもアルテスタイガーとして地上で生きるという生存本能に突き動かされ 最初から自身を排除しようとする敵に攻撃をしていたイザク。
それを知りながら地球のためイザクをウルトラマンとして抹殺しなければならない主人公の高山我夢。苦悩の果てウルトラマンガイアに変身する我夢は果たして
環境問題にフィーチャーした本作。虎の名前こそ変わっているもの設定は
実際に同じ理由で絶滅した虎をベースとしており骨が薬になるという狩られた理由も全く同じである。金城哲夫の「ノンマルトの使者」が本島と沖縄の関係から来ているものだとすれば人間と野生動物に置き換えたのが本作と言えるだろう
子供の頃には分からなかったが特撮作品は子供心に傷を植えつけてくる。アルテスタイガーは架空のトラだが当初本物の絶滅したカスピアンタイガーを使う予定で資料映像として出すという案があったようだ。特撮でしか描けない本気の表現を作ろうとした痕跡でありそれは私にはトゲのように刺さっていた。
これは正確な引用ではないが評論家の宇野常寛氏の言葉だ。傷を負った少年はテクノロジーによって空母が空中に浮いている(空中母艦エリアルベース)のを夢見ながら小学校中学年ごろになると環境破壊に関心を持ち、人間は地球を汚し続けるなら人間なんか地球にとっていない方がいいんじゃないか。 幼心にそんなことを考えていたことを思い出した。宇野常寛らにとっての怪獣使いと少年は我々世代にとっての銀色の眼のイザクだったのかもしれない
理不尽な理由で絶滅させられた生き物たちにとってみれば我々人間こそ侵略宇宙人と言えるかもしれない。
そしてコロナの原因はすみかを失った生物が人間に接触したことが原因という説がある。また温暖化で永久凍土の氷がとけ未知のウィルスの蔓延が指摘されるなど今まさに地球の眠れる怪獣とも取れるような力が人間に牙を剥き始めている
ガイアのテーマである人間は変われる これを今証明しなくては作中で指摘されていた通り人間は地球にとってのがん細胞となってしまうかもしれない。
最後は
「ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE」
テレビシリーズの5年後。主人公ムサシは宇宙開発センターの大型宇宙輸送宇宙ロケット・コスモ・ノアのパイロットとして地球の怪獣達と共に宇宙に行くことになった。
コスモ・ノアの見送りに新生TEAM EYESの隊長となったフブキがきた。楽しく雑談しながらコスモ・ノアに向かう途中ムサシはジュリに出会う。そしてジュリはなぜお前とコスモスは同化したと問う。その時、TEAM EYES基地から謎のメッセージが届くと同時に空から謎の飛行物体そしてその中からグローカーボーンが出てきた。
駆け付けたコスモスと共に戦うムサシ、だがそのコスモスの前にあのジャスティスが敵として襲い掛かってきた。困惑するコスモスは、ジャスティスに反撃できず圧倒され、グローカーボーンの攻撃からコスモ・ノアを庇って消滅してしまう。一方、デラシオンが地球全ての生き物をリセットすると決定した。果たして勝つのは、ジャスティスの宇宙正義か、それとも、コスモスの地球愛か。
常にウルトラシリーズではウルトラマンが超越した存在であるが故に人間の不完全さに苦悩し守るに値する存在か否かという物語が描かれてきた。
その代表格が、帰ってきたウルトラマン怪獣使いと少年であろう。
帰る手立てを失い弱った宇宙人にシンパシーを覚え共に暮らす少年。しかし、宇宙人に恐怖心しか抱かず、恐れから彼らをリンチし、遂にはメイツ星人は殺害されてしまう。無力感に苛まれたウルトラマンは、メイツ星人が封じ込めていた怪獣ムルチの暴走をしばらく傍観し人間に絶望してしまう。
以降も、今作含め環境問題やヘイトなどを絡めた作品
ウルトラマンマックス最終話 ウルトラマンメビウスなどで語られる。
そのテーマを1本で体現するのがこの作品である。テレビシリーズでは愛の力によって怪獣との共生を目指す主人公ムサシの成長が描かれる。だが宇宙に進出するタイミングでもう1人のウルトラマンであるジャスティスが立ちはだかる。
ジャスティスがやってきた理由はたった1つ。
地球人が2000年後に宇宙にとって有害な存在となるとデラシオンが予測しその先兵として送られたのだ。デラシオンは、宇宙の平和維持を目的とする超越的存在であり、グローカーというロボット兵器を所有し宇宙の調和を乱す存在を粛清を行う。
人間が有害とは考えにくいが、ウルトラマンの視点に立つと分かりやすい。デラシオンもまた、ウルトラマン的な存在であり少々過激なやり方であるが、秩序を守るため戦っている。
そんなウルトラシリーズにかつて登場した数多くの宇宙人の歴史においえ侵略や略奪宇宙の秩序を乱し抹殺された者たちは数知れないが、それが人間の末路だと断定されるのだ。
人間の蛮行を考えればそれは否定しきることも難しいだろう。特にウルトラシリーズは戦争や冷戦構造が作品に影響を与え、前作ガイアでは環境を汚し続ける人間に存在価値があるのか?という問いが繰り返された。
そして、今作においてウルトラマンコスモスとウルトラマンジャスティスはきっちり初代マンとセブンの構造に見た目含め別れている。
ムサシという人間がウルトラマンと融合し、ムサシの正義で戦い人間社会そのものに疑問を抱かないコスモス
超越した存在が人間の姿を借り人間の美しさと同時に醜さを目の当たりにするジャスティス。
正義や価値観の違いによる対立をウルトラシリーズにおいて究極の物語を描く分かれ道である初代マン型とセブン型を両者の視点から描き出す。
ノンマルトの使者で人間側に肩入れしてしまう不完全性のない完全な宇宙の調停者を体現するジャスティスだったが無垢たる存在によってその視点は大きく変化していく事となる。
無垢な存在により地球が救われるという物語が反復される。ウルトラマンマックスの「第3惑星の奇跡」
ウルトラマンメビウス「怪獣使いの遺産」などの作品が代表格だがウルトラマンコスモスの前日譚にあたる
「ウルトラマンコスモスTHE FIRST CONTACT」もムサシ少年の夢を信じる心と姿形が異なる他者を受け入れる勇気で、物語が駆動していく。
そして劇場版2作目THE BLUE PLANET ではウルトラマンの再来を信じる子供に「きっと来てくれる」と優しく微笑みかける。
それはかつての自分自身を投影し、次の世代の希望を守る行動であった。
そして完結篇である本作の楽曲「High HOPE」がこの本質を表す。
「君が伝えた優しさの意味心の中にあるんだ」
「愛されたように愛してあげよう」
「戸惑いながら明日をゆこうだけどいつでも僕がいること忘れないで」
終始大人の視点に立って歌われているこの曲はかつてウルトラマンを見ていた世代が次の世代に教えられる事はなんだという歌と受け取れる。それは制作側でありウルトラマンに優しさを学んだ全ての人々に送る歌である。
大人は完全ではなく、初めて体験するもの常に戸惑いはあるものだ。時に間違えてしまうこともある。
しかし、自分自身が苦しい思いをするときがあっても子供時代に自分達が受けた愛情を次の世代に注いであげようものである。
筆者は最近ウルトラマンコスモスのYouTubeの無料公開のコメント欄にコスモスに優しさを教わり看護師になったというコメントに感動している
子供はいつだって無垢である。しかし現実は目を覆いたくなるほど差別や不自由、暗いニュースが駆け巡る。
大人たちの目から心から優しさや余裕が消え去り今日もどこかで自分達の敵を探して石を投げることを安定剤としている人がいる。
そんな世界で子供達は大人になっていく。
そんな時こそ、ウルトラマンに教わった優しさ、勇気、希望を胸に自分もどんなに苦しくても次の世代に愛を向けて行きたい。
それがウルトラマンのおかげで今を生きることができる全てこ大人達の使命なのだ。
それが教えられるなら誰だって真の勇者にだってなれる。私はそう信じたい。
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