スピナー

スウェーデン(Team Edin)が、どえらいショットを成功させた事は間違いないのだが、彼等が「異次元」の「革命」を起こした、という訳では決してないと言い切れる。
 
"Spinner" の効果が発見され、知られ、応用が研究され、多くの実践が積まれた結果、技術的にかなり一般化(※トップカーラーの間での話ですが)してきた事から、当然の帰結として、大きな競技会における重要なショットでの成功が見られるようになった、と受け止めるべきだろう。
 
そして「それ」は我々のそばにもすぐに到達するに違いない。あの動画を見た世界中のカーラーの今日からの試行錯誤によって。
Edinたち、見せてくれてありがとう!やっぱすげえなあ!!
しかし、こういうのがすぐ知れる世の中だもんなぁ。情報化社会万歳!だなあ。
 
多回転ショット(spinner )は、私の知る限り、1990年代にすでに知られていた。当初は、テイクアイトショットの際に石を直進させる技術として発見されたらしい。(第1の効果)
当時はホグホグ12回転とか1秒に1回転以上が条件、などと言われた。
 
その後、後半、特に停止直前に大きくカールすることが判明し、“フックショット”に応用されるようになった。(第2の効果)
この実践に貢献したのがフィンランドのカーラー、Tomi Rantamäki 氏で、彼のアップする動画を見て真似てやってみたカーラーは結構いるんじゃないかと思う。
 
テイクアウトウェイトじゃなくてドローウェイトで投げたらどうなるんだろう?という発想がよかったんでしょうね。(ランタマキ氏自身は「様々なアイスコンディションで様々な回転数をテストする、というローラー作戦の中で見出しただけ」というようにインタビューに答えていますが)
 
そして、Spinner により、当てた石にも回転力を与え、「普通」とは違う動きが期待できるという事が判明した。(第3の効果)
実は、投げた石の側が回転量に依存した挙動をすることはそれなりに知られていた。
 
一方当てられた石の側への影響は限定的と考えられていた。が、遅いウェイトの場合、それは多くの人が予想するよりも大きかったのだ。これもランタマキ氏は実践している。
そして「引っぺがしショット」や「引っ張りショット」に応用されるようになった。(前者がEdin、後者がBryceのトライに該当)
 
ぶつけてみたら面白い動きをした、というところから発展したんでしょうね(たぶん)。
(第3の効果を「物理法則に反する」と表現する人がいますが、単にイメージしたのと違う動きをするという話であって、実際には物理法則に完全に従っています。)
 
カーリングストーンの衝突時の動きはビリヤードにしばしば例えられるが、ビリヤードの球とは違う動きをすることがある。これは、石同士の場合、接触面が大きく、ざらざらしており、衝突時に強い摩擦力が働く事が主たる要因と考えられている。カーリングの特性である。
 
革新的な技術発展はいきなりは起きない。大きな飛躍の前に周囲には(本人たちすら)気づかれにくい「エネルギーの蓄積」がある。それがある閾値を超えたときに大爆発が起きる(ように見えるんじゃないかなぁ、たぶん)。
 
カーリングの良いところは素晴らしい技術を目にしたとき、真似しても、一切問題になったり怒られたりしないところだ。遠慮なくやらせてもらうことにしよう。(再来週くらいに通年営業のホールに行って)
そして蓄積してやろうじゃないか、次の革新へのエネルギーを。
 
2023年4月6日にツイート

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